ケシの花

時事ニュース

11月11日はリメンブランスデイ(戦没者追悼記念日)。赤いケシの花の日です(前編)

リメンブランスデイ(Remembrance day)について書かれたEuronewsの記事を紹介します。

リメンブランスデイは日本ではあまり知られていないと思います。第1次世界対戦の戦没者を悼む日です。「戦没者追悼記念日」と訳されます。

記事に行く前に、この記念日の背景について簡単にお伝えします。



第一次世界大戦とは?

第一次世界大戦は、1914年6月のサラエボ事件をきっかけにして開戦しました。三国同盟(ドイツ、オーストリア、イタリア)と、三国協商(イギリス、フランス、ロシア)の戦いです。三国協商を結んだ国は連合国と呼ばれます。

根本的な原因は列強による領土や植民地の奪い合いです。

戦争がすすむうちに、他の国も参戦し、史上初の世界規模の戦争になりました。

それぞれ、同盟を結んだ国があるので、同盟国が戦っているから、自分たちも参戦したわけです。ヨーロッパが戦場で、激戦が続きましたが、1918年11月、ドイツが降伏して終わりました。

翌年の1919年にパリ講和会議でベルサイユ条約が締結され、戦後処理も一応終わりました。

日本は日英同盟を結んでいたので、ドイツに宣戦しました。日本は、この戦争で特需が発生し、経済的に潤い、あまりダメージは受けませんでした。

そのため第一次世界大戦の話をする人は、日本では少ないです。

日本人にとって戦争といえば、なんといっても第二次世界大戦、そして日露戦争、朝鮮戦争あたりです。

ヨーロッパの人にとっては、第一次世界大戦は今でも心に深い傷を残している戦争です。犠牲者は1900万人と言われています。

犠牲者のほとんどが、若い兵士です。きのうまでふつうに暮していた人が、戦争に駆り出され、いとも簡単に死んでしまいました。

戦争に行くときは、希望に燃えて、国のためにがんばろうと思っていたかもしれませんが、戦場に行ったらそんな気持ちはふきとんだと思います。

自分たちも素人なら、指揮をとる上司も素人。初めて見るような兵器や毒ガスを持って見よう見まねで戦争していたのではないでしょうか?

特に打撃を受けたのはイギリスなので、イギリスとイギリス連邦の国では毎年11月11日に戦没者に追悼をささげます。

リメンブランスデイになると出てくるのが赤いケシの花です。最も激戦地であった西部戦線は、フランス、ベルギー、ドイツの国境。夏になるとこのあたりは赤いケシの花が咲き乱れます。

記事はちょっと長いので2回に分けます。きょうは最初の3パラグラフを訳します。

Le 11 novembre, c’est Poppy Day ! 11月11日はケシの日です

A l’instant du bleuet en France, le coquelicot est la fleur du souvenir au Royaume-Uni mais aussi dans plusieurs pays du Commonwealth comme le Canada, l’Australie ou la Nouvelle-Zélande.

フランスにヤグルマギクの季節が訪れると、イギリス、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドといったイギリス連邦の国々で、ケシの花が昔のことを思い出させます。

Le souvenir et l’hommage de ceux d’aujourd’hui, vivant et libres à ceux tombés au champ d’honneur pour défendre la liberté, tous ces soldats, bien trop nombreux tués lors de la Première Guerre mondiale.

今日、元気で自由に生きている人たちが、第一次世界大戦で、自由を守るために、栄誉ある戦場で亡くなった大勢の兵士を思い起こし、敬意を払うのです。

Coquelicot du “Champ d’Honneur” 「栄誉ある戦場」のケシの花

ケシの花は、時が経つにつれて、記憶を思い起こす日の象徴となりました。その赤い色は、亡くなった人々が流した血を思わせるだけでなく、有名な In Flanders Field(フランダースの野にて)という詩も思い起こさせます。

戦場で、ジョン・マクレー中佐が書いた詩です。

カナダ軍の医師だったマクレーはイーペルでの、とてもひどい、第2戦線の目撃者でした。塹壕戦は悲惨をきわめ、兵士たちの血は、フランダースとソンムの戦場に咲き乱れる無数のケシの花の前に流れて行ったのです。

元記事 → Le 11 novembre, c’est Poppy Day ! | euronews, monde

単語と表現メモ

au fil du temps  時がたつにつれて

ce devoir de mémoire  この記憶を思いおこす義務⇒思い起こさせるもの

se déverser  ~に注ぐ、流れ出る、あふれ出る

peupler  ~を占める

Ypres  イーペル ベルギー西部の都市

Somme  ソンム県。北フランス。ピカルディー地方にあります。

A l’instant du bleuet en France フランスではヤグルマギクの季節
これは、11月1日の『諸聖人の祝日』に、菊の花を墓にたむけることを言っています。

『諸聖人の祝日』について⇒諸聖人の祝日(ラ・トゥーサン)の起源とは?



In Flanders Field フランダースの野にて

カナダ軍の従軍医師として、ベルギーに赴いていたジョン・マクレーの書いた詩で、カナダの詩としては、世界でもっとも知られています。

彼は医師でしたが、詩人でもありました。

In Flanders Field

by John McCrae, May 1915

In Flanders fields the poppies blow
Between the crosses, row on row,
That mark our place; and in the sky
The larks, still bravely singing, fly
Scarce heard amid the guns below.

We are the Dead. Short days ago
We lived, felt dawn, saw sunset glow,
Loved and were loved, and now we lie
In Flanders fields.

Take up our quarrel with the foe:
To you from failing hands we throw
The torch; be yours to hold it high.
If ye break faith with us who die
We shall not sleep, though poppies grow
In Flanders fields.

フランダースの野にて
1915年5月 ジョン・マクレー

フランダースの野には、ケシの花が風に舞っている
十字架の間で、何列も何列も
これが私たちの場所。空には
ひばりが、健気にも歌いながら飛んでいる
銃撃の音の中で、ほとんど聞こえないけれど

私たちは死者だ。ほんの数日前は
私たちは生きていた、夜明けを見て、赤い夕日が沈むのを見た
愛し愛されていた。だが、今は横たわっている
フランダースの野で

私たちに続いて敵と戦ってくれ
投げ出され、崩れおちるこの手からあなた達へ
たいまつを自分のものとして高くかかげてほしい
もしあなたたちが、私たち死んだ者の信頼を裏切ったら
私たちは眠ることはできない。ケシの花が咲いている
フランダースの野で

1915年の詩なので、もっと文語で訳すべきでしょうが、古い言葉は知らないですし、わかりやすさ重視で訳しました。

マクレーは、敵(foe)との戦いを続けてほしい、と書いていますが、これは戦争で戦っている相手ではないと思います。

自分たちを犬死させてしまったものへの戦いを続けてほしい、あるいは、死んで行った者たちが守ろうとしたものを守ってほしい、故人の意志を無駄にしないでほしい、ということでしょう。

彼は戦場に赴くやいなや、来る日も来る日も兵士の傷の手当に追われ、大勢の人が亡くなって行くのを見てきました。

1915年に親しい兵士が亡くなったとき、戦禍の合間をぬって、この詩を作りました。彼の目の前には、たくさんの十字架と、そばに咲き乱れるケシの花があったのです。

こちらは詩を歌にしたものです。

マクレー自身も1918年の1月、従軍中に肺炎で亡くなっています。45歳でした。

この続きはこちら⇒なぜ赤いケシの花(ポピー)を身につけるのか?11月11日はリメンブランスデイ(戦没者追悼記念日)(後編)

リメンブランスデイはカナダでも祝日で、当日やその前後でさまざまな場所で追悼の催しが行われます。






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