さくらんぼの実る頃(Le Temps des cerises):イブ・モンタン(歌と訳詞)

フレンチポップスの訳詞

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フランスの古い歌、Le Temps des cerises(ル・タン・デ・スリーズ)を訳してみました。

日本では「さくらんぼの実る頃」という題で知られています。

作詞はジャン=バティスト・クレマン(Jean-Baptiste Clément)、作曲はアントワーヌ・ルナール(Antoine Renard)。

歌詞は1866年に書かれ、1868年に曲がつけられました。

さくらんぼの季節と恋を重ねた歌です。

恋は短く、あとには心の傷が残るけれど、それでもあの季節を愛し続ける、という内容です。

映画『紅の豚』で、ジーナが歌っていた曲といえば、思い出す人も多いのではないでしょうか。

たくさんの歌手が歌っていますが、今回はイブ・モンタンの歌を選びました。

4分44秒です。

さくらんぼの実る頃・歌詞

Quand nous chanterons le temps des cerises
Et gai rossignol et merle moqueur
Seront tous en fête
Les belles auront la folie en tête
Et les amoureux du soleil au cœur
Quand nous chanterons le temps des cerises
Sifflera bien mieux le merle moqueur

Mais il est bien court le temps des cerises
Où l’on s’en va deux cueillir en rêvant
Des pendants d’oreilles
Cerises d’amour aux robes pareilles
Tombant sous la feuille en gouttes de sang
Mais il est bien court le temps des cerises
Pendants de corail qu’on cueille en rêvant

Quand vous en serez au temps des cerises
Si vous avez peur des chagrins d’amour
Évitez les belles
Moi qui ne crains pas les peines cruelles
Je ne vivrai point sans souffrir un jour
Quand vous en serez au temps des cerises
Vous aurez aussi des peines d’amour

J’aimerai toujours le temps des cerises
C’est de ce temps-là que je garde au cœur
Une plaie ouverte
Et dame Fortune, en m’étant offerte
Ne pourra jamais fermer ma douleur
J’aimerai toujours le temps des cerises
Et le souvenir que je garde au cœur

さくらんぼの実る頃・訳詞

私たちがさくらんぼの季節を歌うとき
陽気なナイチンゲールも、からかい好きのクロウタドリも
みんなお祭り気分になるだろう
美しい娘たちは頭の中が浮かれ気分でいっぱいになり
恋人たちは心に太陽を抱くだろう
私たちがさくらんぼの季節を歌うとき
からかい好きのクロウタドリは、もっと上手にさえずるだろう

でも、さくらんぼの季節はとても短い
二人で出かけて、夢を見ながら摘む
耳飾り
おそろいのドレスを着た恋のさくらんぼ
葉の下に、血のしずくとなって垂れている
でも、さくらんぼの季節はとても短い
夢を見ながら摘む、珊瑚の耳飾り

あなたたちが、さくらんぼの季節を迎えたら
もし恋の悲しみが怖いなら
美しい娘たちを避けなさい
つらい苦しみを恐れない私は
一日たりとも苦しまずに生きることはないだろう
あなたたちが、さくらんぼの季節を迎えたら
あなたたちもまた、恋の苦しみを味わうだろう

私はいつまでも、さくらんぼの季節を愛するだろう
私が心に抱えている
開いたままの傷は、あの季節からのものだ
そして運命の女神が私のもとにやってきても
私の痛みをふさぐことは決してできないだろう
私はいつまでも、さくらんぼの季節を愛するだろう
そして心に抱き続けている思い出を

単語・文法メモ

1番:恋人たちと鳥が浮かれる季節

rossignol : ナイチンゲール、サヨナキドリ。夜にきれいな声で鳴く鳥です。

merle moqueur : merle はクロウタドリ(ツグミの仲間の黒い鳥)、moqueur は「からかう、ばかにする」という形容詞です。

マネシツグミ(mockingbird)という鳥もいますが、こちらはアメリカの鳥で、フランス語では moqueur polyglotte と言います。

ここは、クロウタドリがからかうような声で鳴く、という意味だと思います。

être en fête : お祭り気分である、浮かれている。

avoir la folie en tête : 直訳は「頭の中に狂気を持つ」。恋に夢中になって、浮かれている状態です。

Et les amoureux du soleil au cœur : ここには動詞がありません。前の行の auront が省略されていて、Les amoureux (auront) du soleil au cœur(恋人たちは心に太陽を持つだろう)という意味にとりました。

du は部分冠詞です。

Sifflera bien mieux le merle moqueur : 主語と動詞が入れ替わった倒置の文です。

ふつうの語順なら、Le merle moqueur sifflera bien mieux.
siffler は「口笛を吹く」「(鳥が)さえずる」、bien mieux は「ずっと上手に」。

2番:さくらんぼを耳飾りに見立てる

Mais il est bien court le temps des cerises : ふつうは Mais le temps des cerises est bien court. と言います。

先に il est bien court(それはとても短い)と言って、あとから何が短いのかを言う形です。

話し言葉でもよく使います。

s’en aller + 不定詞 : 〜しに出かける。

deux : 「2人で」の意味です。

ふつうは à deux と言いますが、歌詞なので短くしているのだと思います。

pendants d’oreilles : イヤリング、耳飾り。

さくらんぼは、茎のところで2つつながっていることが多いですよね。

それを耳にかけて耳飾りにして遊ぶことから、さくらんぼを耳飾りに見立てています。

aux robes pareilles : 同じドレスを着た。

robe は「ドレス」ですが、果物の皮や、馬の毛並みの色のことも robe と言います。

つながっている2つの実が同じ色をしている様子を、恋人同士がおそろいの服を着ている姿に見立てていると思います。

tomber : 「落ちる」ですが、ここでは「垂れ下がる」の意味です。

en gouttes de sang(血のしずくとなって)は、赤いさくらんぼのたとえです。

pendants de corail : 珊瑚の耳飾り。赤いさくらんぼを珊瑚にたとえています。

pendant は「ぶら下がっているもの」で、ペンダントの意味もありますが、上に pendants d’oreilles が出てくるので、ここも耳飾りと訳しました。

en rêvant : en + 現在分詞でジェロンディフ。「夢を見ながら」。
2つのことを同時にするときに使います。

3番:恋につきものの苦しみ

en être à 〜 : 〜の段階にいたる、〜のところまで来ている。

Quand vous en serez au temps des cerises は、直訳すると「あなたたちがさくらんぼの季節のところまで来たら」。

あなたも恋をする年頃になったら、ということだと思います。

chagrin d’amour : 恋の悲しみ、失恋。
peine d’amour もほぼ同じ意味です。

peines cruelles : ひどい苦しみ、つらい苦しみ。

Je ne vivrai point sans souffrir un jour : ここは否定表現が難しいです。

ne … point は ne … pas の古い言い方で、否定の意味を強めます。

ne … point と sans(〜なしに)で否定が2つ重なっているので、「苦しまずに一日を生きることはないだろう」。

ここでは、一日たりとも苦しまずには生きられない、という意味に取りました。

恋の苦しみなんて怖くない、苦しんでもかまわないから恋をする、という私(語り手)の気持ちです。

un jour は「いつか」という意味もあるので、「いつか苦しまずに生きることはないだろう」とも読めますが、それだと意味が通りにくいので、「一日たりとも」と訳しました。

間違っていたらごめんなさい。

4番:心に残る傷と思い出

J’aimerai toujours : 私はいつも〜を愛するだろう。

aimerai は aimer の単純未来です。

条件法の aimerais(〜したいのですが、〜を愛するだろうに)と形が似ていますが、s がありません。

C’est de ce temps-là que je garde au cœur une plaie

ouverte : C’est 〜 que の強調構文です。

ふつうの語順なら、Je garde au cœur une plaie ouverte de ce temps-là.(あの季節からの開いた傷を心に持ち続けている)

de ce temps-là を強調しています。

garder : 持ち続ける、とっておく。「守る」と訳したくなりますが、ここでは傷や思い出を心に持ったままでいる、という意味です。

plaie ouverte : 開いた傷、ふさがっていない傷。

dame Fortune : 運命の女神。ローマ神話のフォルトゥナ(Fortuna)のことで、幸運をもたらす女神です。

dame は、擬人化したものにつける敬称です。

「お金持ちの奥さん」かと思ってしまいそうですが、女神のことです。

en m’étant offerte : être offert(e) à qn(〜に与えられる)という受け身の形を、ジェロンディフにしたもの。

m’ は à moi(私に)、offerte の e は、dame Fortune が女性だからです。

ジェロンディフは「〜しながら」だけでなく、文脈によって「〜しても」という譲歩の意味にもなります。ここでは譲歩の意味で読みました。

直訳は「運命の女神が私に与えられても」。

幸運がやってきても、という意味だと思うので、「私のもとにやってきても」と訳しました。

fermer ma douleur : 痛みを閉じる。傷口をふさぐ、というイメージです。

プチ文法:quand のあとも未来形になる

この歌には、単純未来がたくさん出てきます。

chanterons(chanter)、seront(être)、auront(avoir)、sifflera(siffler)、serez(être)、aurez(avoir)、vivrai(vivre)、aimerai(aimer)、pourra(pouvoir)

Quand nous chanterons(私たちが歌うとき)、Quand vous en serez(あなたたちが〜になったら)のように、quand のあとも未来形になっています。

日本語だと「歌うだろうとき」とは言わないので、訳すときは「歌うとき」でOKです。

英語では when のあとは現在形ですが、フランス語は未来のことなら quand のあとも未来形にします。

例:
Quand tu viendras à Paris, on ira au musée ensemble. あなたがパリに来たら、一緒に美術館に行こう。

Quand il fera beau, nous irons à la plage. 天気がよくなったら、海に行こう。

さくらんぼの実る頃・関連動画

この歌の生まれた背景を紹介する動画を見つけたので、紹介します。

Le Temps des cerises, chanson d’amour et de révolte(さくらんぼの実る頃、愛と反抗の歌)- Culture prime
3分43秒。フランス語の字幕あり。

内容のまとめ:

・「さくらんぼの実る頃」は、パリ・コミューン(1871年)の歌として知られていますが、もとは恋の歌です。

書かれたのはパリ・コミューンの5年前の1866年で、恋と春の訪れを歌っています。

・作詞のクレマンは1836年生まれの社会主義の活動家で、歌の中でナポレオン3世を怒らせて、ベルギーに逃れていました。この歌はベルギーで書かれたものです。

・作曲のルナールは元オペラのテノール歌手で、1848年の革命でバリケードに立った人です。

・クレマンはパリ・コミューンに加わり、「血の1週間」(1871年5月21〜28日)の弾圧を目の当たりにしました。

1874年に死刑を宣告され、ロンドンに亡命。フランスに戻れたのは1880年の恩赦のあとです。

・人々がこの歌を自分たちの歌として歌うようになったのは、そのころからです。

ラ・マルセイエーズほど勇ましくはなく、フランスらしい明るさとロマンチックさのある歌です。

・クレマンはこの歌を、ルイーズという22歳の女性にささげています。コミューンの戦いでけがをした人の手当てをしていた人で、血の1週間を生き延びたかどうか、クレマンにはわからないままでした。

・今では、愛と過ぎゆく時間と反抗の心を歌った、フランスを代表する歌のひとつになっています。

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*****

「さくらんぼの実る頃」を訳してみました。

古い歌なので、単語も言い回しも今のフランス語とは少し違いますね。

もとは恋の歌なのに、パリ・コミューンのあとは別の意味を持って歌い継がれてきたというのも、興味深いです。

開いたままの傷、という歌詞も、そう思って読むと、違って聞こえてきます。

今聞くと、とてもテンポがゆっくりです。

忙しい日の終わりに、あえてゆっくり過ごしたいときに聞きたい歌ですね。

みなさんはどの人のバージョンが好きでしょうか。

それでは、次の歌の記事をお楽しみに。

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