2018年の秋から続く、フランス政府に対する抗議運動(黄色いベスト運動 mouvement des gilets jaunes)を終結させるため、マクロン大統領が、国民討論会(Le Grand Débat)を開始しました。
これはいったいどんな討論会なのでしょうか。
この討論会がテーマの、1jour1question(動画)を紹介します。
国民討論会とは?
スクリプト
C’est quoi le grand débat ?
Depuis le mois d’octobre, le « mouvement des gilets jaunes » est au cœur de l’actualité française.
Chaque jour, le samedi surtout, des hommes et des femmes en gilet fluo se retrouvent pour manifester.
Ils protestent contre les inégalités de richesses. Ils veulent aussi que le pays soit gouverné autrement.
Le président de la République a pris des mesures, mais les manifestations continuent. Et les violences restent nombreuses.
Emmanuel Macron a donc décidé d’organiser un débat national où chaque citoyen peut dire ce qu’il souhaite voir changer dans le pays.
Quatre sujets ont la priorité : les impôts, l’organisation de l’État, l’écologie, la citoyenneté… et des questions sont posées.
Par exemple : Comment favoriser les énergies non polluantes ? Ou encore : Faut-il rendre le vote obligatoire ?
Tous les Français peuvent prendre part à ce débat jusqu’au 15 mars.
Comment ? En participant à une réunion organisée dans sa région, ou directement sur Internet. L’important est que chacun décrive ses mécontentements et propose des solutions.
Le résultat de ces consultations sera analysé, et le gouvernement s’en inspirera pour lancer des réformes.
Ce débat sera-t-il utile ? Les propositions des Français seront-elles entendues ?
Beaucoup en doutent.
Pourtant le défi est immense, car il est urgent que la colère s’apaise et que l’État retrouve la confiance de tous ses citoyens.
和訳
国民討論会とは?
10月以来、フランスのニュースは、「黄色いベスト運動」のことで持ち切りです。
毎日、特に、土曜日に、蛍光色のベストを着た男女が集まってデモをしています。
彼らは、富の不平等に抗議しています。国の政治が変わってほしいとも願っています。
フランス共和国の大統領は、ある程度、措置をとりましたが、抗議デモは続き、暴力沙汰になることも何度かありました。
そこで、エマニュエル・マクロンは、国民討論会を開くことにしました。この討論会では、国民それぞれが、国がどんなふに変わってほしいのか希望を述べることができます。
優先事項は4つあります。税金、行政、エコロジー、市民権で、それぞれについて質問がなされました。
たとえば、「どうやって、クリーンエネルギーを推進するか?」「投票を義務にするべきか?」
フランス国民は全員、3月15日までこの討論会に参加できます。
どうやって? 自分の住んでいる地域で行われる会合に参加するか、インターネットで直接意見を述べます。
重要なのは、みなが不満に思うことを説明し、解決策を提案することです。
この話し合いの結果は分析され、政府が改革を推し進める参考となります。
この討論会は効果があるでしょうか? フランス国民の提案は聞き入れられるのでしょうか?
多くの人は疑問に思っています。
課題はたくさんあります。国民の怒りを早急におさめ、政府は国民の信頼を回復しなければなりません。
単語メモ
fluo = fluorescent 蛍光の、蛍光を放つ (話)
mesures 措置、対策 (しばしば複数で)
citoyenneté 市民(公民)の資格、市民権、国籍
prendre part à ~に参加する
décrive décrire の接続法現在形、1,3人称の活用
国民討論会の背景
この国民討論会は、国中で行われている黄色いベスト運動に対する、政府の回答です。
去年の秋ごろ、フランスの農村など、わりと田舎のほうに住んでいる人たちが、ガソリンの値上げ(すなわち燃料税があがること、la hausse du prix des carburants)に対して、抗議しました。
彼らは、ガソリンスタンドに通じる道路をふさいだりしました。
マクロン大統領は、環境問題に配慮して、もっと燃料税を取りたいと思ったのです。
抗議デモをした人は、黄色いベストを着ていたので(厳密に言うと蛍光色)、gilets jaunes と呼ばれるようになりました。
デモはだんだん大きくなり、燃料税にかかわらず、マクロンの政策に不満のある人は、誰でも参加するようになりました。
このデモの特徴は、なんとなくマクロンが嫌い、マクロンのやることが気に食わないという人が集まってやっていることです。
不満を持っている人は、おもに、下流~中流のあまりお金に余裕のない層です。大統領が、高額所得者層を優遇する税制を取り入れたことに対しても怒っています。
誰か、強力な首謀者がいるとか、ベースになる団体(政党)があるわけではありません。
土曜になると、あちらこちらから、いろいろな人が集まってデモをするのです。
デモの招集は、ソーシャルメディアを使って行われています。
ベースになる団体がないから、政府としても、デモをする人たちに交渉をしにくいのです。
そのうち、デモ中に、物を壊したり、警官とけんかする人が出てきて、だんだん暴力的になってきました。
12月にとくに激しいデモがあったので、大統領は燃料税をあげるのは据え置きにし、代わりに、最低賃金をあげるなど、いくつかの改革案を提示しました。
しかし、黄色いベストの人たちは、あまり満足せず、デモは続きました。
そこで、12月の半ばに、マクロンは、国民討論会をする、とみなに言い渡し、それが、1月の15日に始まったわけです。
1jour1question の動画にあるように、フランス国民が直接、大統領と政府に、意見を述べることができます。
こちらは燃料税をあがることが、どうして環境を守ることになるのか説明している1jour1questionの動画です。
Pourquoi le prix du carburant augmente ?
こちらは国民討論会の開始を伝えるニュースクリップです。
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もともと、フランス人はまめにデモをする人たちですが、黄色いベスト運動は、長期的なデモになりました。
デモしたり、全員参加して話し合いしたり、いかにも民主主義という感じです。日本では、こうはいかないですね。
マクロン大統領自身も、べつに強力な基盤があるわけではないです。対立候補が極右のマリーヌ・ル・ペンだったから、極右化するよりは、マクロンのほうがましだろう、若いし、やる気ありそうだし、という感じで投票した人が多かったのではないでしょうか。
1jour1questionの動画は子供向けですが、いろいろ勉強になりますね。単語が聞き取れなくても、文字が画面に出たりしますし。これからも、とりあげていこうと思います。
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