フランスの税関で働く潜水士に密着した、3分20秒のニュース動画を紹介します。
タイトルは、Plongée avec les douaniers sous les coques des bateaux suspects(怪しい船の船底に、税関職員とともに潜る)です。
フランスでは、海上ルートを使ったコカインの密輸が大きな課題になっています。
2024年、フランスで押収されたコカインは53.5トンで、その78%にあたる41.8トンは海上ルートに関係するものでした。
そこで活躍するのが、税関の潜水士たちです。
3分20秒
税関潜水士の仕事:動画の内容
怪しい船が見つかると、税関の潜水士が船底にもぐり、隠された麻薬をさがします。
空と海から怪しい船を見つける
税関のヘリコプターが北海沿岸と大西洋側の海を飛び、怪しい船がいないか見張ります。
海の上では、税関の船と絶えず連絡を取り合っています。標的が見つかれば、潜水士たちの出番です。
船底にもぐって隅々まで調べる
今回の舞台は、シェルブール港に停泊する青い船です。船体の下には、麻薬を隠せる場所がたくさんあります。
潜水士たちは、まず船の安全を確保し、乗組員に検査することを知らせます。
そして命綱で互いをつなぎ、海にもぐって船底を調べます。
どんな場所をどう調べるのか、どんな緊張があるのかは、このあとの重要フレーズで取り上げます。
船底全体を調べ終えるのに、15分ほどかかりました。
今回は異常なし、フランス語でいうR.A.S.(Rien à signaler)でした。
ロリアンでの大きな摘発
2023年2月、ロリアン沖で大きな摘発がありました。
全長約200メートルの貨物船の船底から、180キロを超えるコカインが見つかりました。末端価格は、1500万ユーロ以上に相当すると見積もられました。
このときの潜水は夜で、水温は10度を下回る冷たい海でした。
麻薬は、海水を取り入れる設備である sea chest の格子の奥に隠されていました。
毎年8人を養成
税関の潜水士の出番は、年々増えています。
麻薬を運ぶ手口や隠し方が、どんどん多様になっているからです。
動画では、毎年8人を養成し、フランスの沿岸に合わせて計120人が配置されていると説明しています。
これは動画が作られた時点の数字です。
重要フレーズ
動画の中から、私が学びどころだと思ったフレーズを4つ取り上げます。
1. 命綱でつながって(0:54〜)
Reliés les uns aux autres avec une ligne de vie, les plongeurs vont inspecter les moindres recoins.
命綱でお互いにつながった状態で、潜水士たちは隅々まで調べていきます。
文頭の Reliés は relier(つなぐ)の過去分詞です。
後ろに続く主語 les plongeurs の状態を説明していて、〜された状態で、というニュアンスを添えています。
文頭の過去分詞は、プチ文法でもう少しくわしくチェックします。
les uns aux autres は「お互いに」という意味。
les moindres recoins のmoindre は、わずかな、小さな、という意味。les moindres recoins で、ほんの小さな隅まで、つまり隅々まで、という意味になります。
2. 何ひとつ見逃さない(1:02〜)
Hélices, grilles de ventilation, rien ne leur échappe, malgré une visibilité restreinte de moins d’un mètre.
スクリュー、換気の格子、何ひとつ彼らの目を逃れません。視界が1メートルに満たなくても。
rien ne … échappe は「何ものも逃れない」という言い回し。
もとは échapper à 〜(〜の目をすり抜ける)という形です。
この à + 人(彼らに)の部分が、まとめて代名詞 leur に置きかわり、動詞の前に出ています。
主語は rien(何も)なので、rien ne leur échappe で「彼らの目をすり抜けるものは何もない」、つまり何ひとつ見逃さない、という意味になります。
malgré は「〜にもかかわらず」。後ろには名詞が続きます。
3. 頭上にのしかかる船(1:13〜)
Le bruit, le bâtiment de plusieurs milliers de tonnes au-dessus de leur tête, rendent la mission encore plus angoissante.
騒音、そして頭上にある数千トンの船。それが任務を、いっそう不安なものにします。
bâtiment は、通常は建物ですが、海の世界では大きな船を指します。ここでは、頭の上にある数千トンの船のことです。
rendre + 名詞 + 形容詞(〜を…の状態にする)。rendre la mission angoissante で、任務を不安なものにする、という意味になります。encore plus(さらにいっそう)が形容詞の前についています。
4. だからこそ欠かせない(3:04〜)
C’est la raison pour laquelle nos spécialistes plongeurs sont une vraie ressource opérationnelle de lutte contre la fraude dont on ne peut pas se passer aujourd’hui.
だからこそ、潜水のスペシャリストは、いまや欠かすことのできない、不正と闘うための本当の戦力なのです。
C’est la raison pour laquelle … は「それが〜という理由だ」、つまり「だからこそ〜だ」という意味。
laquelle は先行詞 raison を指す関係代名詞で、raison が女性名詞なので女性形になっています(男性名詞なら lequel)。
pour は「その理由で(pour cette raison)」の pour です。
単語メモ
dispositif 仕組み、態勢、(特別な)部隊
quai 岸壁、波止場
coque (船の)船体、船底
trafiquant 密売人、密輸業者
loger 泊める、(ものを)収める
stupéfiant 麻薬
douanier 税関職員、税関の
consigne 指示、命令
équipage 乗組員
recoin 奥まった隅
hélice スクリュー、プロペラ
grille 格子、グリル
angoissant(e) 不安にさせる
intégralité 全体、全部
planquer 隠す(口語)
en date (その時点で)最新の
dissimulé(e) 隠された
tribord (船の)右舷
aspiration 吸い込み、吸引
refoulement 押し出し、排出
aboutissement 成果、結実
cellule de ciblage 標的をしぼる分析班
maillon de la chaîne 鎖の輪、組織の一員
effectif 人員、要員
sollicité(e) 必要とされる
former 養成する、訓練する
endiguer 食い止める、抑え込む
プチ文法:文頭の過去分詞
動画には、文頭に過去分詞を置く形が何度か出てきます。
後ろに続く主語の状態を説明し、〜された状態で、〜してから、といった意味を添える使い方です。分詞構文と呼ばれるもののひとつです。
動画から表現を拾ってみます。
Reliés les uns aux autres avec une ligne de vie, les plongeurs vont inspecter les moindres recoins.
命綱でお互いにつながった状態で、潜水士たちは隅々まで調べていきます。
Arrivés sous coque, on est tombés sur les “sea chests”.
船底にたどり着いて、私たちは sea chests に行き当たりました。
どちらも、文頭の過去分詞が後ろの主語(les plongeurs、on)の状態を説明しています。〜してから、〜された状態で、と訳せます。
自作の例文です。
Fatigués par le voyage, les enfants se sont endormis tout de suite.
旅で疲れて、子どもたちはすぐに眠ってしまいました。
Invités à la fête, nous avons apporté du vin.
パーティーに招かれて、私たちはワインを持っていきました。
この形は、ニュースや小説でよく見かけます。日常会話では、もっと短い言い方にすることが多いです。
税関沿岸警備隊・関連動画
潜水士たちが所属する組織についての動画を紹介します。
タイトルは、Connaissez-vous la Direction Nationale Garde-Côtes des Douanes ?(フランス税関沿岸警備隊を知っていますか?)。
2分44秒。
この動画では、フランス税関沿岸警備隊(DNGCD)という組織が説明されています。
彼らは海の上で荷物を調べたり、国境を見張ったりするのが仕事です。
900人ほどが働いていて、ヘリコプターや飛行機のほか、大小あわせて31隻の船をもっています。
船乗りや整備士、パイロットなど、いろいろな専門の人が力を合わせて任務にあたっています。
海の上の犯罪は手口がどんどん変わるので、新しい技術や設備も取り入れています。
麻薬の取り締まりが中心ですが、海洋汚染への対応や自然保護の活動など、幅広く仕事をしています。
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潜水士の仕事、かなり大変そうです。
暗い海の中で、巨大な船体の下にもぐり、視界も悪い。何か危険なものが隠されている可能性もあるので、ふつうのダイビングとは別ものですね。
ただ、潜水が好きで、特殊な訓練やチームで動く仕事にやりがいを感じる人には、向いているのかもしれません。
動画の中の潜水士も、麻薬を見つけたときはとても誇らしいと話していました。
それでは、次回の記事もお楽しみに。











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