ドイツとフランスの文化を比べる番組 Karambolage(カランボラージュ)から、シャンパンにまつわる動画を紹介します。
タイトルは、Le champagne(シャンパン)。
シャンパンといえばフランスを代表する飲みものですが、実はその誕生に多くのドイツ人が関わっていた、という意外な話です。
3分52秒。
ドイツ人とシャンパン:動画の内容
なぜシャンパンはこんなに高いのか、という素朴な疑問から動画は始まります。
理由は、手摘みの収穫や、二度目の発酵をびんの中で行う独特の製法にあります。
さらに、シャンパーニュ地方だけが名乗れる原産地の呼称で守られていることも、値段の高さにつながっています。
ここまでは値段が高い理由の話でしたが、後半で話は思わぬ方向に進みます。
18世紀の終わりごろから、野心を持った若いドイツ人たちがシャンパーニュ地方に移り住み、シャンパンづくりに深く関わっていったというのです。
彼らは商売の才覚と語学力を武器に、ロシアの皇帝など各国の富裕層へシャンパンを売り込みました。そしてフランス風に名前を変え、フランスに帰化していったのです。
くわしい人名やシャンパンの銘柄は動画の中にたくさん出てきます。
興味のある方はぜひ動画で確かめてみてください。
重要フレーズ
動画の中から、学習のポイントになりそうなフレーズを5つ取り上げます。
1. シャンパンが高い理由(0:21〜)
Le raisin est cueilli à la main, les pieds de vignes sont plantés à une distance précise, et puis il y a la fameuse méthode champenoise.
ぶどうは手で摘まれ、ぶどうの株は正確な間隔で植えられます。そして、あの有名なシャンパーニュ製法があります。
est cueilli、sont plantés はどちらも受動態(être + 過去分詞)です。
誰がするかよりも、ぶどうや木がどう扱われるかに目が向いた言い方です。
過去分詞は主語の性・数に合わせて変化します。
ここでは les pieds de vignes(男性複数)に合わせて plantés になっています。
2. シャンパーニュ製法とは(0:36〜)
Si, pour la deuxième fermentation, on met le vin non plus dans une cuve mais dans des bouteilles, on pratique la méthode champenoise.
もし二度目の発酵で、ワインをもうタンク(桶)ではなく、びんに入れるなら、それがシャンパーニュ製法です。
non plus … mais … は「もう〜ではなく〜」という意味。
この non plus は ne … plus(もう〜ない)の plus で、一度目の発酵がタンクだったのに対し、二度目はもうタンクではなくびんに、ということ。
3. フランス人は抜かりない(1:17〜)
Et oui, ils pensent à tout, les Français.
ええ、フランス人は何でも考えていますよ。
penser à tout で「あらゆることに気を配る、抜かりがない」という意味。
文の最後の les Français は、主語の ils を後から言い直したものです。話し言葉ふうの、くだけた言い方です。
プチ文法で深掘りします。
4. フランス人に欠けていたもの(1:53〜)
… car ces atouts, indispensables pour vendre la boisson de luxe aux tsars et autres privilégiés du monde, faisaient terriblement défaut aux Français.
というのも、そうした強みは、高級な飲みものをロシアの皇帝や各国の特権階級に売るのに欠かせないものでしたが、フランス人にはひどく不足していたのです。
faire défaut à 〜 は「〜に欠けている、〜に不足している」。
ここでの atouts(強み)は、語学力や商才を指しています。
terriblement(ひどく)が付いて、不足の度合いが強調されています。
5. ドイツ人だらけのメゾン(2:17〜)
Il n’y a effectivement plus une seule maison de vin en Champagne qui ne soit plus ou moins contrôlée par un Allemand.
シャンパーニュ地方には、多かれ少なかれドイツ人に経営を握られていないワインのメゾンは、実際もう一軒も残っていない。
少しややこしい二重否定の文です。
前半の Il n’y a plus une seule maison … で「もう一軒もメゾンがない」と言い、続く関係詞 qui ne soit … contrôlée が「ドイツ人に経営を握られていない(メゾン)」という否定を重ねています。
二つの否定が重なって、結局どのメゾンも多かれ少なかれドイツ人が関わっている、という意味になります。
途中の plus ou moins は「多かれ少なかれ」という熟語で、前半の ne … plus とは別の働きです。
関係詞のあとが接続法(soit)になっているのは、否定表現に続くから。
この一文はランス駐在のアメリカ領事が1867年に書いた言葉として紹介されているので、当時の状況を伝えるものとして読むとよいと思います。
単語メモ
cueilli cueillir(摘む)の過去分詞
cuve (醸造用の)桶、タンク
fût 樽
Appellation d’origine contrôlée 原産地統制呼称(AOC)
mousseux 発泡性の(vin mousseux で発泡ワイン)
tomber à pic ちょうどよいときに来る、渡りに船
négoce 商取引、卸売業(maison de négoce で商社)
si bien que その結果〜、それゆえ
néanmoins それにもかかわらず、とはいえ
banqueroute 破産、倒産
franciser フランス風にする、フランス語化する
raffinement 洗練、優雅さ
teutonne ゲルマンの、ドイツの(やや古風でおどけた言い方)
プチ文法:文末で言い直す転位
重要フレーズ3に出てきた Et oui, ils pensent à tout, les Français. のように、いったん代名詞(ils)で言っておいて、文の最後にその中身(les Français)を付け足す言い方があります。
この形は右方転位(dislocation à droite)と呼ばれ、話し言葉でとてもよく使われます。
すでに話に出ている相手をもう一度確認したり、話題をやわらかく補足したりする働きがあり、くだけた親しみのある響きになります。
自作の例文です。
Il est gentil, ton frère.
やさしいね、きみのお兄さん。
Elle est belle, cette robe.
きれいだね、このワンピース。
Ils sont chers, ces gâteaux.
高いなあ、このお菓子。
反対に、名詞を先に出して、あとから代名詞で受けることもあります(こちらは左方転位と呼ばれます)。
Les Français, ils pensent à tout.
フランス人ってね、抜かりがないんですよ。
どちらも会話でよく耳にします。教科書の文とは少し語順が違うので、慣れておくと聞き取りが楽になるでしょう。
シャンパンの歴史・関連動画
シャンパンそのものの歴史をたどった、別の短い動画も紹介します。
L’histoire du champagne : Quelles sont ses origines ?(シャンパンの歴史、その由来は?)
1分23秒。
この動画では、シャンパンの起源をこんなふうに説明しています。
・シャンパーニュ地方にぶどうが植えられたのは、ローマ人が来た3世紀ごろ。長いあいだ、修道士たちが畑を管理し、ワインづくりを担っていました。
・17世紀の半ばには、この地方の白ワインが王侯貴族に好まれるようになります。
・当時のワインは今のシャンパンとは違い、寒さで発酵が途中で止まり、春になって樽が破裂することもありました。泡はむしろ厄介なものだったのです。フランス人は泡を嫌いましたが、イギリス人はその泡を好みました。
・19世紀の半ばになって、ようやく泡をきれいに仕上げる技術が確立し、大量生産への道が開けました。
泡が最初は歓迎されていなかったというのが、意外でおもしろいです。
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シャンパンの誕生にドイツ人がこんなに関わっていたとは、今回の動画を見て初めて知りました。
隣り合った国どうしですから、人も技術も行き来していたのでしょう。
シャンパーニュ地方はフランスでもかなり北にあって、気候は冷涼です。
夏も涼しく、ぶどうが完熟しにくいので、酸味が強く糖度の低いワインになりがちだそうです。
ふつうのワインなら物足りないところですが、泡もののワインにはむしろ理想的な条件だといいます。
土地の制約を逆手にとった人間の知恵の結晶がシャンパンと言うと、大げさでしょうか。
私はお酒を飲まないので、シャンパンもほとんど口にしたことがありません。
一度だけ、友人の結婚式でいただいたことがあって、そのときは、おいしいなと思いました。
それでは、次回の記事もお楽しみに。





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