フランスの子ども新聞、1jour1actuから第89回アカデミー賞授賞式の様子を伝える記事を紹介します。授賞式は2017年2月27日日曜日、アメリカのハリウッドで行われました。
今年は、映画の祭典というより、トランプ大統領を批判する場になりました。さらに、作品賞を間違って発表してしまうというハプニングもありました。
いつもとは違ったアカデミー賞授賞式
Oscars : une 89e cérémonie pas comme les autres ! オスカー:第89回の授賞式は他の式とは違いました。
というのも、1929年以来、ハリウッドで、映画関係者に賞を送る、かの有名な、アカデミー賞授賞式では、今年、いろいろな記録を残したからです。ちょっとした災難もありました。
第89回アカデミー賞の授賞式が、日曜日にアメリカ合衆国のロスアンゼルスで行われました。例年どおり、映画界のもっとも優秀な人たち、監督、俳優、女優、音楽の作曲家、舞台美術家などに、像が授与されました。
ですが、2017年の受賞式は異例のできごとで彩られました。1jour1actuが、このちょっと特別だった夜についてお伝えします。
映画の式であると同時に、ドナルド・トランプ大統領への批判大会
式の間、トランプ大統領は何度も批判されました。式が始まるとすぐ、司会のコメディアンが「この放送は、世界中の220カ国以上で見られています。みんなアメリカを憎んでいます」と言いました。
冗談抜きで、何人かの映画人が団結を呼びかけるメッセージを放ち、トランプ大統領の政策に反対の姿勢を見せました。
たとえば、俳優のガエル・ガルシア・ベルナルは、オスカーを渡すとき、アメリカ大統領の、合衆国とメキシコの間に壁を作る計画を非難しました。「私はメキシコ人であり、ラテンアメリカ人です。移民労働者であり、人間として、私たちを分かつどんな壁にも反対します」こう言ったのです。
外国語映画賞の受賞も、トランプ大統領の入国禁止例に反対する機会となりました。この大統領令は、イランを含む複数のイスラム諸国の人々が合衆国へ入国するのを禁止しようとするものでした。
外国語映画賞を受賞した、「Le Client (邦題:セールスマン)」は、イランの監督、アスガル・ファルハーディーの作品です。ファルハーディー監督は、授賞式をボイコットすることに決めました。
ボイコットの理由を説明するため彼は代理人にメッセージを託し、それが式で読み上げられました。「みなさんと一緒にいられないことが残念です。合衆国への入国を禁止されたほかの6カ国の外国居住者を思いやってのことです」こんなメッセージでした。
たくさんの記録が打ち立てられた
ほかの賞の授与でも、アメリカ映画では、出身や肌の色、宗教は年齢にかかわらず、すべての芸術家に価値を認めることを証明しました。
助演男優賞はマハーシャラ・アリが受賞しました。イスラム教徒がオスカーを獲得したのは史上初めてです。
ヴィオラ・デイヴィスは、オスカーに3度ノミネートされた初めての黒人女優です。過去2回、彼女は受賞を逃しましたが、今年は助演女優賞を手にしました。
もう1つの記録:最優秀監督賞は「ラ・ラ・ランド」のデイミアン・チャゼル監督が獲得。32歳の彼は最年少で受賞した監督です。85年続いた記録を破りました。
最後のハプニング
アカデミー賞でもっとも権威のある最優秀作品賞を発表するときに起きた信じられない失態を、人は忘れないでしょう。
ほんの少し間をおいたあと、ウォーレン・ビューティが、最優秀作品賞は「ラ・ラ・ランド」だと発表しました。制作陣が舞台にあがり、ふたりのプロデューサーが、謝辞のスピーチをはじめましたが、1人が、何百万人もの視聴者の前で、間違いに気づきました。
彼はカメラに向かって受賞作の書かれたカードを見せ、「間違いがありました。『ムーンライト』です。最優秀作品賞は」と言ったのです。
実は、発表するとき間違った封筒を開けてしまったのです。
「ラ・ラ・ランド」は最優秀作品賞は取れませんでしたが、合計で6個のオスカーという、最多の賞を獲得しました。そのうちの1つは作曲賞です。ミュージカル映画にとっては名誉なことです。
単語メモ
récompenser 報いる、褒章を与える
mésaventure 不運なできごと
décerner 授与する
inhabituel 異例の
remettre 渡す、届ける
au-delà de ~のむこうに、~以上で
ressortissant 海外在留者、外国居住者
musulman イスラム教の、イスラムの
repartir 戻る、帰っていく
couac 調子外れの音、不協和音
gaffe へま、不手際
トランプ大統領の入国禁止例についてはこちらをどうぞ。
なぜ作品賞を間違えて発表してしまったのか?
記事ではウォーレン・ビューティが読み上げた、となっていますが、実際は一緒にプレゼンターをしていたフェイ・ダナウェイが発表しました。
何が起きたのか知りたい方は、7分とちょっと長いのですが(7分15秒)、作品賞を発表したときのクリップをごらんください。
ウォーレン・ビューティがすぐに発表しなかったのは、違うカードが入っていたからなのです。「最優秀女優賞はエマ・ストーン」というカードが入っていたそうです。
私はあまりにも年をとってしまった彼の姿に、「ぼけてしまったのかい?」と思いましたが、誤解でした。
生放送ではこういうハプニングが起きてしまいますね。ミスコンでも同様の失態がありました。
オスカーの翌日、トランプ大統領は作品賞発表でのハプニングについて、 “I think they were focused so hard on politics that they didn’t get the act together at the end. It was a little sad” 「政治に気を取られすぎて、ちゃんとできなかったんだな。なんか悲しいね~」と語ったそうです。
どうして人は年をとってしまうのでしょう(penのつぶやき)
作品賞の間違いに気づいて、「最優秀作品賞はムーンライトです。冗談じゃありません」とはきはきしゃべったのは、「ラ・ラ・ランド」のプロデューサーの1人です。
ほかの関係者はうしろでオロオロしていましたね。
去年のアカデミー賞(第88回)では、俳優部門にノミネートされたアクター20人すべてが白人であったことで物議をかもしました。
今回は7人の黒人俳優がノミネートされたそうです。
次は女性の監督に作品賞をとってもらいたいものです。
それにしても、おじいさんとおばあさんになってしまったウォーレン・ビューティとフェイ・ダナウェイを見るのは感慨深いものがあります。79歳と76歳です。
自分が年をとったのも当然だ、と思いました。
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