フレンチポップスを通してフランス語になじむシリーズ、今回はフランスの女性シンガーソングライター、Juliette Armanet(ジュリエット・アルマネ)のL’amour en solitaire(ひとりぼっちの恋)を紹介します。
繊細な歌詞と美しいメロディが心に残る、春に聴きたくなる一曲です。
L’amour en solitaire
それでは訳詞に挑戦!
L’amour en solitaire 歌詞
Solo dans ma peau, sur la plage
J’me la joue mélo, je drague les nuages
Solo dans ma fête, c’est dommage
À deux c’est tellement chouette
J’fumer des cigarettes, sur la plage
Solo dans l’bateau, je mets les voiles
Mais solo je prends l’eau, des matelots
☆Où es-tu mon alter, où es-tu mon mégot
Pour moi t’étais ma mère mon père mon rodéo
Je traverse le désert l’amour en solitaire
Reviens moi mon alter, reviens moi héros
Je veux retrouver ma terre ma bière et mon tricot
Plus traverser le désert, l’amour en solitaire☆
Solo sur mon île, sur ma plage
J’me tiens plus qu’à un fil
J’ramasse mon coquillage fragile
Solo dans ma gueule j’peux plus voir
Te voir dans toutes ces gueules en miroir
☆~☆
Solo j’danse le slow sur ta plage
J’m’enroule dans les flots
Solo j’fais naufrage
Mais dans l’fond j’m’en fous
C’est pas grave
Sans toi j’devenais flou
Un point c’est tout
L’amour en solitaire(ひとりぼっちの恋):和訳
ひとりぼっちで浜辺で
メロドラマみたいに気取って雲を口説いてる
ひとりぼっちのパーティー、残念だわ
ふたりならどんなに素敵だったか
浜辺でタバコを吸っている
ひとりで舟を漕ぎ出して帆をあげる
でもひとりじゃ沈みそう、船乗りもいないし
☆どこにいるの?わたしの片割れ
どこにいるの?わたしの吸い殻
あなたはわたしの母で、父で、荒馬だった
ひとりぼっちで恋という砂漠をさまよっている
戻ってきて、わたしの片割れ
戻ってきて、わたしのヒーロー
わたしの大地とビールと編み物の日々を取り戻したい
もうこれ以上ひとりぼっちで恋の砂漠を渡りたくない☆
ひとりきりの島で、わたしの浜辺で
1本の糸にすがっている
貝殻を拾っている、もろい貝殻
ひとりきりでもう見たくない
鏡に映るすべての顔があなたに見えてしまうのを
☆~☆
ひとりスローダンスを踊る、あなたの浜辺で
波に身を包まれて
ひとりきりで沈んでいく
でもほんとうはどうでもいいの
大したことじゃないわ
あなたなしだと私はぼやけてしまう
それだけのことよ
単語メモ・補足
s’enrouler 巻きつく
flou ぼやけた
un alter もうひとりの自分、片割れ(※ここでは恋人の比喩)
un mégot タバコの吸い殻、「小さな残りもの」「燃え尽きたあとのかけら」といったイメージあり。
prendre l’eau (船が)浸水する → うまくいかなくなる、沈む
traverser le désert 砂漠を横断する → 孤独な時期を耐える
un coquillage 貝殻
tenir à un fil 糸一本にすがっている → 限界の状態、ギリギリの状況
Solo dans ma gueule j’peux plus voir
Te voir dans toutes ces gueules en miroir
ここはちょっと分かりにくいのですが以下のように解釈しました。
gueule もともと「口」「顔」のくだけた表現(「ツラ」みたいなイメージ)、ここでは「自分の顔」「自分の中」あるいは「自分の世界」と解釈。
j’peux plus voir もう見ることができない
ces gueules いろんな人の顔、というニュアンス
直訳は、自分の中(顔/心)でひとりきりで、もう見ることができない。鏡の中に他人の顔すべてにあなたが映って見えるのが。
「あなたの残像」から逃れられない苦しさを歌っていると思われます。
プチ文法と詩的な表現ポイント
この歌詞には、フランス語の口語表現や比喩的表現が多く含まれています。
1.省略形(口語の省略)
j’me = je me
j’fume = je fume
j’peux plus = je ne peux plus(否定の ne の省略)
フランスの歌の歌詞ではリズムを重視して、ne を省略したり、主語と代名動詞がくっついた形が頻出します。
2.比喩表現
Je traverse le désert → 「砂漠を渡る」は実際の動作ではなく、「孤独や苦しい時期を乗り越える」という比喩。
Je prends l’eau → 「水をかぶる」「浸水する」は、「物事が破綻する・沈む」の比喩表現。
3.所有形容詞で強調
mon alter / mon mégot / ma mère / mon père / mon rodéo → 立て続けに mon / ma を使って、愛情・執着・依存の強さを表現。
ジュリエット・アルマネ(Juliette Armanet)について
ジュリエット・アルマネは、1984年生まれのフランスのシンガーソングライター。
もともとはジャーナリストとして活動していましたが、30代から本格的に音楽の道へ進みました。
2017年にデビューアルバム『Petite Amie(小さな恋人)』を発表し、フレンチポップの新星として注目を集めました。今回紹介したL’amour en solitaireはこのアルバムに収録されています。
彼女の音楽は繊細でロマンティックな歌詞と、ピアノを中心とした美しいメロディが特徴です。
彼女は、ミシェル・ベルジェやフランソワーズ・アルディなど、フランスのレジェンドと呼べるアーティストから大きな影響を受けています。
2021年には2作目のアルバム『Brûler le feu(炎を燃やす)』をリリースし、より洗練されたサウンドで高い評価を得ました。
フランス国内で多くの音楽賞にもノミネートされるなど、注目を集め続けているアーチストです。
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初めてジュリエット・アルマネの曲を聴いたとき、私が思い出したのは若いころ好きだったイギリスのケイト・ブッシュです。
ピアノをバックに歌っているところや浮遊感や詩的でちょっと神秘的なところが似てますよね?
ただしアルマネの音楽はケイト・ブッシュほどエキセントリックではなく、もう少しポップで聴きやすいです。ミッシェル・ポルナレフのようなフレンチポップス特有の甘くノスタルジックな雰囲気も漂います。
フレンチポップスという枠に収まりながらも、音作りはかなり英米寄りの印象を受けました。
いつも、素敵な曲紹介をありがとうございます。先日日本のテレビで、東京の神楽坂にはブラジル・アルゼンチンの音楽専門店があると知りました。コーヒーも飲めて、ブラジルやアルゼンチンの音楽が探せるって、いいなぁと思いました。同じようにフランスのポップスを置いているお店が日本にあってもいいですよね。ブラジル・アルゼンチンのお店は、「ホエール」さんという店名なので、フランスは「ペンギン」はどうかと勝手に考えて楽しみました。これからも曲紹介を楽しみにしています。
conomiさん、こんにちは。
コメントありがとうございます。
フレンチポップスの専門店、レコード店はありそうな気がしますが、今、配信で音楽を聴く人が多いので採算が取れないかもしれません。
また音楽を紹介する記事を書きますね。
これからもよろしくお願いいたします。