翻訳者養成プロジェクトの第7回の授業を聞きました。
今回とりあげられている課題はなぜ昆虫を食べなければならないのか?で書いた「虫を食べること」に関する本の一節です。
インタビューを訳す
今回の課題が、これまでの課題と違うところは、内容がインタビューであることです。
インタビューって会話ですよね?
ふつう、会話は書かれた文章よりやさしいです。少なくとも、読みやすいはずです。で、今回は、けっこううまく訳せたと思っていたのですが、むしろいつもよりが誤訳(誤解)していた箇所が多かったです。
しょっぱなから間違えました。虫が原料の食品を作っている会社の開発中の製品2種を書いた、
des vers de farine et des grillons «nature», déhydratés
という9つの単語からなるフレーズ。ここで二つとも訳を間違えてしまいました。
間違いその1 des vers de farine をミミズの粉とした。
ミミズの粉なら、farine de ver で順番が違います。
間違いその2 farine et des grillons «nature» をひとかたまりととらえてしまい、自然なままのコオロギの粉 とした。
つまり、未加工のミミズの粉と、未加工のコオロギの粉 だと思っていたんです。
ここの«nature»は無添加な、プレーン味の、という意味だそうです。
そもそも「未加工の虫の粉」って、おかしいですよね?
だって、粉にすること=加工することなんですから。
なぜ自分で訳しているとき、こういうことに気づけないんでしょうかね?
7回目の講義で取り上げられた内容を自分の控えに項目だけ箇条書きしておきます。
・冠詞
・使役動詞 faire
単語、句
de façon, mettre,d’order+形容詞、材料、性質のde、consister en/dans, avoir l’habitude de +inf. など。
授業は1時間10分でした。
文法項目としては冠詞の解説があり、あとは細かい動詞句の説明が多かったです。
否定で訳すテクニック
きょうは翻訳技術として「否定にしてみる」というテクニックをシェアしますね。
課題文のなかに、
こんな虫製品を開発中なのです、mais de façon marginale
という箇所が出てきました。
marginaleは「二義的な、副次的な」という意味なので、ここを直訳すると「副次的なやり方で」となります。
が、日本語としては変に聞こえます。
そこで、まずmarginale という単語があらわす意味の対義語である「副次ではない、つまりメインである」というのを見つけだし、
つぎにそれを否定にして、
「メインではありませんが」というふうにする。
このようにそのまま訳すと変なときは、対義語を否定した形にすると、日本語としてしっくりくることがあるそうです。
というのも日本語はフランス語に比べて否定表現が多いからです。
考えてみたらそうですね。
日本語に否定表現が多いのは、述語が文のおしまいに来るので、いくらでも否定できるからでしょうか?
つまり「そんなふうに言えなくもないこともない」といった感じで、どんどん否定していくことができます。
そして「結局、どっちなんだよ? はっきりしろ!」と外国の方につっこまる言語なのかもしれません。
課題の本はこちら
最初に書いた«vers de farine» はこの単語そのものでイメージ検索すると、気持ちの悪い画像がいっぱいでてきます。ミールワームと呼ばれる、飼育のためのエサに使われる、ちいさいウジ虫みたいなやつです。
grillons «nature» は無添加の(あるいはプレーンな)コオロギ。
両方とも déhydratés なので、乾燥させます。
こういうのを粉にして、それをタンパク源として混ぜたエナジーバーのような食品が、10年後には大豆製品と同じくらい一般的になると思う、という話でした。
カロリーメイト・コオロギ味、みたいな製品なんでしょうかねぇ?
でも「コオロギ味」なんて書くと誰も食べませんから、コオロギに含まれてるタンパク質の成分をアレンジした名前がつくのかもしれません。
たとえば、コラーゲン、エラスチン、セラミド、レチノールという「何かによい成分であるらしいが、実はそれが何なのかい今ひとつよくわからないもの味」というふうに。
そもそも昆虫ってどんな風味や味がするんでしょうか?
やたら昆虫のことを考えているうちに一週間が過ぎようとしています。
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