『星の王子さま』の作者、アントワーヌ・ド・サン=テグジュペリのブレスレット発見にまつわる動画を紹介します。
タイトルは、26 ans plus tard, le pêcheur de la gourmette d’Antoine de Saint-Exupéry se souvient(26年後、サン=テグジュペリのブレスレットを引き揚げた漁師が振り返る)。
サン=テグジュペリは1944年7月31日、偵察飛行に飛び立ったまま戻りませんでした。長いあいだ謎だったその最期が、ある漁師が彼のブレスレットを発見したことから動き出します。
ちなみに、動画の製作が2025年なので26年後となっています。
時系列を簡単にまとめると:
行方不明:1944年7月31日
ブレスレット発見:1998年
機体の残骸発見:2000年ごろ
2026年時点で、行方不明から82年
海から出てきたブレスレット
2分23秒。フランス語の字幕はありません。
マルセイユの漁師さんが話す場面は訛りがあって少し聞き取りにくいです。
動画の内容
1944年7月31日にコルシカ島から飛び立ったサン=テグジュペリは、そのまま行方不明になりました。
謎が動いたのは1998年。マルセイユの漁師ジャン=クロード・ビアンコさんが、網の中に彼の名が刻まれたブレスレットを見つけます。
その後、海底で機体の残骸が特定され、のちに元ドイツ軍パイロットが自分が撃墜したと名乗り出ました。
ただ、この証言には矛盾も指摘されていて、最期の状況が完全に解明されたわけではありません。
今では、墜落現場にある岬をサン=テグジュペリ岬と改名しようという動きもあります。
重要フレーズ
動画の中から、私が学びどころだと思ったフレーズを5つ紹介します。
1. 離陸の場面(0:01〜)
Le 31 juillet 1944, Antoine de Saint-Exupéry décolle de la base de Poretta en Corse, à bord d’un P-38 Lightning comme celui-ci.
1944年7月31日、アントワーヌ・ド・サン=テグジュペリは、コルシカ島のポレッタ基地から、こちらと同じP-38ライトニングに乗って離陸します。
過去のできごとなのに、動詞が décolle(現在形)になっています。ドキュメンタリーが臨場感を出すために使う現在形で、プチ文法で説明します。
comme celui-ci の celui-ci は、映像に映っている機体を指しています。「(今ご覧の)これと同じ機体」です。
2. 行方不明のまま(0:17〜)
Porté disparu, le mystère demeurera entier jusqu’au 7 septembre 1998.
行方不明のまま、謎は1998年9月7日まですっかり解けないでいました。
porté disparu は「行方不明と届け出られて」「行方不明扱いで」という決まった言い方。
porter の過去分詞 porté と、disparu(消えた)を組み合わせています。ニュースでよく見かける表現です。
demeurera は demeurer(〜のままである)の単純未来。
過去を語る流れの中で未来形が出てくるのは不思議に見えますが、これも語りの現在形とセットの演出です。
entier は「まるごと、そっくり」で、謎が手つかずのまま残っていた感じを表しています。
3. 漁師さんの驚き(0:33〜)
Vous vous rendez compte, vous trouvez une gourmette de 38 grammes dans l’immensité de la mer.
想像できますか、広大な海の中で、38グラムのブレスレットを見つけるんですよ。
se rendre compte は「〜に気づく、〜がわかる、実感する」。
ここでは vous vous rendez compte(おわかりでしょう、想像してみてください)と、相手に語りかける言い方です。
gourmette は鎖が平たいタイプのブレスレット。
immensité は「広大さ」で、dans l’immensité de la mer(果てしない海の中で)と、偶然の大きさを強調。
4. 嘘つき呼ばわりされた4年半(1:09〜)
Et c’est pendant cette période que les héritiers de Saint-Exupéry, qui sont ses neveux et petits-neveux, m’ont fait passer pour un menteur, pendant 4 ans et demi.
そしてこの時期に、サン=テグジュペリの相続人たち、つまり甥や大甥にあたる人たちが、4年半ものあいだ、私を嘘つき呼ばわりしたのです。
faire passer 人 pour 〜 は「(人)を〜だと思わせる、〜のように見せかける」。ここでは m’ont fait passer pour un menteur で「私を嘘つきに仕立て上げた」。
文の頭は c’est pendant cette période que… という強調構文(c’est … que)です。「ほかでもなく、この時期に」と、時期を前に出して強調しています。
petit-neveu は甥・姪の息子、つまり大甥のこと。
5. 記憶を残すということ(1:58〜)
Un personnage de l’envergure de Saint-Exupéry … c’est quand même un événement majeur qui doit être commémoré, dont la mémoire doit être conservée.
サン=テグジュペリほどの人物が(ここで任務中に亡くなった)、それはやはり記念されるべき大きなできごとであり、その記憶は守られなければなりません。
de l’envergure de 〜 は「〜ほどの大きさ・スケールの」。
envergure はもともと鳥や飛行機の翼幅のことで、そこから人物の器の大きさを表すようになりました。飛行士サン=テグジュペリにぴったりの言葉なので使ったと思われます。
dont は関係代名詞で、ここでは la mémoire de cet événement(このできごとの記憶)の de を受けています。dont la mémoire doit être conservée で「その記憶が守られるべき(できごと)」とつながります。
単語メモ
décoller 離陸する
à bord de 〜に乗って
porté disparu 行方不明扱いの、行方不明と届け出られて
demeurer 〜のままである、とどまる
remonter (網などを)引き上げる
pêcheur 漁師
filet 網
chalut 引き網、トロール網
gourmette (鎖が平たい)ブレスレット
maillon 鎖の輪、リンク
se rendre compte 気づく、実感する、わかる
immensité 広大さ、果てしなさ
intervention divine 神の介入、天の配剤
ingénierie sous-marine 海洋(水中)工学
héritier / héritière 相続人
neveu / petit-neveu 甥/大甥
faire passer 〜 pour … 〜を…だと思わせる、見せかける
menteur / menteuse 嘘つき
emballement médiatique メディアの過熱、報道の熱狂
épave (船・飛行機の)残骸
abattre 撃ち落とす
envergure 翼幅、(人物の)器の大きさ、スケール
commémorer 記念する、追悼する
プチ文法:過去を現在形で語る(présent de narration)
この動画のナレーションは、過去のできごとをと現在形で語っていきます。これは présent de narration(物語の現在、歴史的現在)と呼ばれます。
本来なら複合過去や半過去で語る場面を、あえて現在形にして、その場に立ち会っているような臨場感が出ます。
ニュースやドキュメンタリー、歴史の説明でよく使われます。
動画の中では、たとえばこんなふうに使われています。
Saint-Exupéry décolle de la base de Poretta.
サン=テグジュペリはポレッタ基地から離陸する。(→離陸した)
Un pêcheur marseillais remonte dans ses filets une gourmette.
マルセイユの漁師が、網の中にブレスレットを引き上げる。(→引き上げた)
Jean-Claude Bianco contacte une société spécialisée.
ジャン=クロード・ビアンコは専門の会社に連絡する。(→連絡した)
En 2006, un pilote allemand parle avec remords.
2006年、一人のドイツ人パイロットが後悔とともに語る。(→語った)
日付(Le 31 juillet 1944、En 2006)とセットで使われていると、過去の話だとすぐわかるので読み手も混乱しません。
サン=テグジュペリの生涯・関連動画
サン=テグジュペリの人生に興味のある方には、こちらの動画もおすすめです。
Les mille et une vies d’Antoine de Saint-Exupéry, l’écrivain aviateur(FRANCE 24)。作家であり飛行士でもあったサン=テグジュペリの生涯を振り返るドキュメンタリーです。
12分。フランス語の字幕があります。
タイトルの les mille et une vies は、直訳すると「千と一つの人生」。
『千夜一夜物語』(Les Mille et Une Nuits) をもじった言い回しで、「数えきれないほど多彩な人生」「波乱万丈の人生」という意味になります。
作家、詩人、イラストレーター、飛行士、探検家と、いくつもの顔を持ったサン=テグジュペリにぴったりのタイトルです。
動画では、飛行への情熱、リビア砂漠への不時着と『星の王子さま』の誕生、時代を先取りしたメッセージ、そして最後の出撃がインタビューと共に紹介されています。
サン=テグジュペリ関連記事もどうぞ
サン=テグジュペリと『星の王子さま』については、過去にもいくつか記事を書いています。
「星の王子さま」の作者、アントワーヌ・ド・サン=テグジュペリの生涯
名言その7~愛するとは互いが同じ方向を見ること~アントワーヌ・サン=テグジュペリ
「リトルプリンス 星の王子さまと私」予告編のフランス語・前編
*****
サン=テグジュペリのブレスレットが海から見つかった経緯をたどる動画を紹介しました。
『星の王子さま』は、王子さまがどこか遠くの星で今も生きているように感じさせる物語です。そして作者自身も、飛行機ごと空に消えたのに、半世紀以上たってから海の底から戻ってきたかのようでした。
作品の世界と現実の最期があまりにも響き合っていて、読み返すたびに不思議な気持ちになります。
それでは、次回の記事もお楽しみに。











この記事へのコメントはありません。