キッズユナイテッド(Kids United)の2016年のヒット曲、鳥と子ども(L’oiseau et l’enfant)を紹介します。
キッズユナイテッドは固く訳せば「団結した子どもたち」、やわらかく訳せば「仲のよい子どもたち」。その名のとおり、歌のうまい子どもたち5人が歌っています。
L’oiseau et l’enfant(鳥と子ども)聞き取りのポイント
フランス語が得意な人は、どんどん聞き取っていただければいいのですが、初心者の方は、歌詞に出てくる「鳥」と「子ども」という単語を聞き取ってみてください。
鳥 l’oiseau ロワゾ
子ども l’enfant ロンフォン
「鳥」と「子ども」という基本的なこの2つの単語が、フランス語の読み方の深遠さを表しています
フランス語は基本的にローマ字読みでよい、と言われますが、特定の言葉の並びに、特定の読み方があります。oiseau は、この読み方のルールを知らないと、どうしてこれがオワゾなんだ、と思ってしまう単語です。
oi が出てきたら2つ合わせて オワ
eau が出てきたら3つセットで オ
と読むことになっています。ちなみに eau だけの単語があり、「水」です。 オー・デ・コロンのオーです。
まんなかにあるS。これはiとeという2つの母音にはさまれているので、音がにごります。よって、オワゾ。
その前についてる l’ は 定冠詞 le の縮約(ちぢまったもの)です。フランス語では母音と母音がぶつかるのを嫌うため、leの母音のeを取り去り、いきなりlをoiseauにくっつけているのです。
つぎにenfant。日本でもブランド名によく使われているアンファンです。しかしオンフォンと書いたほうが近いと思います。en も an も同じ音で、鼻母音と呼ばれる鼻に抜ける音です。最後のTは読みません。
リフレインで、l’amour ラムール 「愛」という単語がたくさん出てきます。これも聞き取りやすいでしょう。
この3つの単語の発音を確認してから、聞き取りにチャレンジしてください。△をクリックすると音が聞こえます。
oiseau
enfant
amour
enfantはfの発音も難しいですね。
L’oiseau et l’enfant(鳥と子ども)の動画
それでは訳詞に挑戦!
★Comme un enfant aux yeux de lumière
Qui voit passer au loin les oiseaux
Comme l’oiseau bleu survolant la Terre
Vois comme le monde, le monde est beau
きらきらした目で見つめる子どものように
遠くのほうに飛んでいく鳥を
地球の上を羽ばたく青い鳥のように
こんなふうに世界を見て、世界はとても美しいよ★
Beau le bateau, dansant sur les vagues
Ivre de vie, d’amour et de vent
Belle la chanson naissante des vagues
Abandonnée au sable blanc
波の上で舞う美しい舟
人生や愛、風に酔いしれて
波間から生まれたばかりの美しい歌が
白い砂浜の上に打ち捨てられる
Blanc l’innocent, le sang du poète
Qui en chantant, invente l’amour
Pour que la vie s’habille de fête
Et que la nuit se change en jour
まっしろな純真さ、詩人の血が
歌いながら愛をつくりだす
晴れ着を着た人生のために
そして、夜が朝に変わるように
Jour d’une vie où l’aube se lève
Pour réveiller la ville aux yeux lourds
Où les matins effeuillent les rêves
Pour nous donner un monde d’amour
夜が開けて人生の1日が始まる
眠たい目で街が起きるのを見る
朝が来て、夢が集められる
私たちに愛の世界をくれるために
☆L’amour c’est toi, l’amour c’est moi
L’oiseau c’est toi, l’enfant c’est moi.
愛、それは君、愛それはわたし
鳥、それは君、子ども、それはわたし☆
Moi je ne suis qu’une fille de l’ombre
Qui voit briller l’étoile du soir
Toi mon étoile qui tisse ma ronde
Viens allumer mon soleil noir
私は影の中にいるただの女の子だけど
夜空の星の輝きを見つめている
きみは私の星、私のロンドを織ってくれる
私の暗い太陽に明かりをつけにきて
Noire la misère, les hommes et la guerre
Qui croient tenir les rênes du temps
Pays d’amour n’a pas de frontière
Pour ceux qui ont un cœur d’enfant
真っ暗な絶望、人々と戦争は
時代の手綱を取れると信じている
愛の国は国境を持たない
子どもの心を持っている人には
Comme un enfant aux yeux de lumière
Qui voit passer au loin les oiseaux
Comme l’oiseau bleu survolant la terre
Nous trouverons ce monde d’amour
きらきらした目で見つめる子どものように
遠くのほうに飛んでいく鳥を
地球の上を羽ばたく青い鳥のように
私たちはこの愛の世界を見つける
☆~☆ 繰り返し
★~★ 繰り返し
☆~☆ 繰り返し
Beau le bateau, dansant sur les vagues
Ivre de vie, d’amour et de vent
Belle la chanson naissante des vagues
Vois comme le monde, le monde est beau
波の上で舞う美しい舟
人生や愛、風に酔いしれて
波間から生まれたばかりの美しい歌
こんなふうに世界を見て。世界はとても美しいよ
単語メモ
survoler ~の上空を飛ぶ
ivre de ~に夢中になった
naissante 生まれかかった、生まれたばかりの
aube 夜明け
effeuiller 葉を取る(摘む)、花びらをむしる
tisser 織り上げる
rêne 手綱;管理、指導
※関係代名詞でつないでいるところ、たとえば、
Comme un enfant aux yeux de lumière
Qui voit passer au loin les oiseaux
は、qui以降をくっつける形で訳しました。日本語的には、「遠くに飛んでいく鳥を、輝く瞳で見ている子どものように」としたほうがわかりやすいと思います。
ですが、この歌はひじょうに絵画的というか、イメージを喚起する歌なので、前から訳しています。
まず子どもの輝く目がクローズアップして、その視線の先には、空を渡る鳥たちが見える、という順番で意味をとっていったほうが楽しめると思うからです。
ほかにも真っ白な純真さ、詩人の赤い血、青い鳥、波から生まれる歌、ロンド(輪舞)を織りなすなど、視覚に訴えています。
原曲:マリー・ミリアムの L’oiseau et l’enfant
この歌のオリジナルは、1977年、マリー・ミリアム(Marie Myriam)という女性シンガーがユーロビジョン・ソング・コンテストで歌ったものです。現在、2017年に知名度が高いのは、Kids Unitedのカバーのほうです。
マリーはアフリカのコンゴ生まれ。コンゴはベルギーの植民地だったことがあるので、フランス語をしゃべるのだと思いますが、もともとはポルトガル系の人とのこと。
こちらはテレビ番組で歌っているところです。
当時マリーは二十歳ですが、ユーロビジョンではとても堂々とした歌いぶりでした。
その昔、ユーロビジョンでは生で歌わなければなりませんでしたので(歌のコンテストなので当たり前といえば当たり前ですが)、歌のうまい下手がよくわかります。
フランス・ギャルはいきなり出だしで音をはずしており、気の毒だったのでその動画は紹介しませんでした。
マリーのオリジナルでは、「鳥はあなたで、私は子ども」というリフレインで終わっています。
この曲のテーマはいったい何か?
マリーが歌っているのはラブソングだと思います。それならなんで歌詞に戦争が出てくるんだ、と疑問を持つ方もいるでしょう。
暗い過去を背負っている少女が、新しい場所で出会った、きらきら輝く少年への恋心を歌っているのではないでしょうか?
少年というか、少年の心をもった青年です。彼は、戦争をする大人のように汚れていないのです。
15、16、17とマリーの過去は暗かったけれど、彼との出会いで、明るい毎日になっていきます。彼はマリーのロンド(輪舞)を織ってくれるのですから、2人でこれから楽しく生きていけるわ、ほら見て、世界はとっても美しいのよ、という感じです。
以上、penの勝手な解釈でした。
Kids United(キッズユナイテッド)とは?
動画を見ればわかるように、キッズユナイテッドはユニセフが作ったというか、ユニセフのキャンペーンの一つとして結成されたグループです。
CDの売上の一部はそのままユニセフに寄付されます。
9歳から17歳の歌の上手い子の集まりです。最初は6人でしたが、今は5人。これまで2枚CDを出していいます。いずれのアルバムでも、ユニセフのメッセージにそった過去の名曲をカバーしています。
「鳥と子ども」は、上に書いたように、別に、子どもたちが幸せな世界を作ろう、子どもたちを守ろう、と歌っているわけではないと思います。ユニセフの人はそう解釈して、子どもたちはそういうふうに歌っています。
だから最後は、「この世界は本当は美しいんだ」としめているのでしょうね。
こちらはアコースティックバーションです。
アマゾンでは輸入盤が手に入ります。
9歳の子どもに歌を歌わせる仕事をするのは、ユニセフ的にどうなんでしょうか?
まあ、0歳からCMモデルとして活躍する子どもたちはいっぱいいます。芸能活動は、児童労働とは違う、という解釈なのでしょう。
子どもの芸能人は1日の労働時間の規定があるので、一応人権は守られているのかもしれません。子役に双子が多いのは、1人を長時間働かすことができないから、交代で仕事をさせるためです。
歌を歌っている子たちも、もともとスター誕生みたいな番組によく出ていたそうですから、好きで歌っているのでしょう。
しかし、子役で有名になった芸能人は、大人になってとんでもなく人生が狂ってしまうパターンが多いです。どんなに子どもの容姿が可愛くても歌がうまくても、親は安易に子どもを芸能界に入れないほうが、子どもにとってはよいでしょう(大きなお世話でしょうが)。
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