penとピンクの花

かわいいフランス語

これだけは知っておきたい。フランス語の名前をつけるとき考慮すべき7つの文法事項。

最近、ネーミングのお問い合わせがまた増えてきたので、フランス語で何かの名前を考えるとき、最低限知っておいたほうがいい文法事項を紹介します。

日本に住んでいれば、義務教育で英語を学ぶので、英語的発想でフランス語を考える人が多いと思います。

確かに英語とフランス語ははそっくりといえばそっくりなのですが、2つの異なる言語なので、明らかに違うところもあります。

ネーミングを考えるとき以下のことを考慮してください。

1.名詞に男女の区別がある

英語の名詞には性別がありません。まあ、mother といえば、母親だから女性ですし、brother は男の兄弟ですから男性です。

しかし主語がお母さんやお兄さんのとき、その前につく冠詞、その前後につく形容詞、過去分詞の形は英語では変わりません。

しかし、フランス語の名詞には男女の区別があるため、その名詞に関係のある冠詞、形容詞、過去分詞などが性別に応じて形が変わります。

ちなみに名詞とは物の名前のことです。富士山、pen、机、ぬいぐるみ、アルツハイマー病、ペンギン、誕生日、網走番外地、サッカー、すべて名詞です。

名詞の性別の違いは、母(mère)父(père)など生物の性別に合っているものもありますが、ほとんどが全くランダムについています。

◆男性名詞の例
☆前についている、le とか la というのは定冠詞です。これはあとで説明します。

le pont  ル ポン  橋
le village  ル ヴィラージュ 村

◆女性名詞の例 

la ville  ラ ヴィル 都市
la maison  ラ メゾン 家

2.名詞には単数と複数がある

英語もそうですが、フランス語ではその名詞が単数か複数かを明らかにします。

日本語だと「りんご食べたいな」と言ったとき、そのりんごが1つか、それとも2つなのかはわざわざ言いません。

もちろん、買い物をするときは、「りんご3個ください」と言ったりしますが。

しかし、フランス語では、「りんご食べたいな」というとき、単数か複数かどちらかにします。まあ、たいてい1個だと思うので、une pomme ユヌ ポム と1個を示す不定冠詞をつけると思います。

りんごが複数になると、des pommes デ ポム です。複数形なのでSがついていますが、発音は変わりません。

りんごの例からわかるように、単数のときと複数のときでつける冠詞が違います。というわけで次、冠詞の話にいきます。

3.名詞には(たいてい)冠詞をつける

冠詞とは、私のもっている電子辞書に入っている、デジタル大辞泉によれば、「英語・ドイツ語・フランス語・イタリア語・スペイン語のようなゲルマン語派・ロマンス諸語などで、名詞につけて、これにある限定を加える語。

不定冠詞・定冠詞・部分冠詞などがあり、また、性・数・格などの変化に応じて交代する」ものです。

英語でいうと、I have a car. (私は車を1台持っています)の a のことです。

英語では冠詞は、a(an)と the しか出てきません。無冠詞の場合がけっこう多いです。

しかし、フランス語では名詞に性別があるし、単数か複数かで冠詞が変わります。英語より冠詞をつける頻度がずっと高いと考えてください。

le pont 橋 は「その橋(橋はひとつ)」ですが、これを、「あるひとつの橋」という言いたいときは、 un pont となります。un は 男性名詞につく不定冠詞です(特定の橋をさしていないから)。

女性名詞だと、la maison 「その家(家はひとつ)」か une maison 「ある家」

つまり男性名詞が単数のときは、un か le がつき、女性名詞が単数のときは、une か la がつきます。

もし橋が複数のときは、des か les をつけます。des は 不定冠詞(un, une)の複数形で、les は 定冠詞(le, la)の複数形です。

このほかに部分冠詞というのもありますが、ネーミングのときにはそんなに出てこないと思います。

フランス語ふうの店の前で、前にルとかラとついていたら、それはたぶん冠詞です。

例:ラ フォーレ la forêt 森

店の名前をつけるときは、冠詞をつけるかつけないかは任意です。

ちなみに格とは、名詞などが文中のほかの語とどんな関係にあるのか、表すものです。

主格、所有格、目的格などありますが、フランス語の場合、格は冠詞に関係ありません。

4.定冠詞はエリジオンすることがある

エリジオンとは特定の語が、母音で始まる名詞の前にくると、その後の最後の母音が省略されて « ’ » (アポストロフ、省略記号) となることです。

エリジオンが生じる単語は決まっていますが、ネーミングのとき問題になるのは、定冠詞の le と la です。この2つは母音で始まる名詞の前に来ると、« l’ » となります。

たとえば、

l’orange  ロランジュ オレンジ

l’amour  ラムール 愛

orangeは冠詞をつけないとオランジュなのに、定冠詞をつけるとロランジュとなるため、「全然違う単語なの?」と思ったりすることがあります。

amour も冠詞なしだと アムール で、冠詞つきだと ラムール です。

5.形容詞について

形容詞は名詞を説明する言葉です。たとえば、「おいしいパン」の「おいしい」、「きれいな花」の「きれいな」。日本語文法で厳密に言うと、「きれいな」は形容動詞ですが、フランス語では形容詞です。

形容詞に関するポイントは2つあります。

1.性数一致する

形容詞は説明を加えている(修飾している)名詞の性別と数によって、少し形がかわります(これを性数一致といいます)

le drapeau blanc   ル ドラポー ブラン 白旗 ☆drapeau は男性名詞

une robe blanche  ユヌ ローブ ブランシュ 白いドレス ☆robeは女性名詞

les cheveux blancs  レ シュヴ ブラン 白髪 ☆cheveux は 髪、cheveu の複数形なので、形容詞も複数形になっています。発音は単数、複数同じです。

2.形容詞は通常、名詞の後ろに来る

上の例を見てもわかるように、形容詞は通常名詞の後ろに来ます。

ほかの例:

les plats italiens  レ プラ イタリヤン イタリア料理

les yeux verts  レ ジュー ヴェール 緑色の瞳

しかし、名詞の前に来る形容詞が少しだけあります。ネーミングで使われそうなのは、

la petite rivière  ラ プティット リヴィエール  小川

bon pain  ボン パン おいしいパン 

belles fleurs ベル フルール きれいな花 

petiteは「小さい」という意味の形容詞、petit の女性形。 bon は 「良い」という意味の形容詞の男性形。

belles は「美しい」という意味の形容詞 beau の女性形の複数形です。花はたいてい複数で出てくるので複数形にしました。

名詞の前と後ろ、どちらにも置くことができる(しかし微妙に意味が変わる)形容詞もあります。

ネーミングで使いそうな例としてcher(形容詞で「いとしい」、名詞で「いとしい人」)をあげておきます。cher は男性形、chère は女性形。

ma chère  マ シェール 私の大事な人、あるいは呼びかけ、「おまえ」とか「あなた」みたいなもの。

un cadeau cher  アン カドー シェール  高価な贈り物

6.所有形容詞も性数一致する

所有形容詞とは「私の」とか「あなたの」とその名詞が誰のものであるか、所有者を明らかにしたいときつける言葉です。

ネーミングでは「私の」「あなたの」とつけたいときがあると思います。

「私の」は英語なら my name マイネーム(私の名前)みたいに、myを1つ覚えればいいのですが、フランス語は、所有形容詞と言う名前からもわかるように、形容詞なので、名詞に応じて性数一致します。

フランス語で「私の」は mon モン (男性形)または ma マ (女性形)、mes メ(複数形)です。

monはよく店の名前になっているので、おなじみだと思います。モン・パリとか。

mon は男性名詞が単数のとき使います。所有者ではなく名詞の性別に合わせます。

女性名詞につけるときは、ma になります。資生堂のシャンプーにマシェリというのがありますが、これは ma chérie (私の愛しい人)という単語から作った製品名だと思います。

chérie (愛しい人)は、女性形なので、maをつけているのでしょう。なぜ、女性が使うシャンプーに「(女性の)愛しの人」という名前をつけるのかよくわかりませんが、このシャンプーを使えば、あなたも誰かの「愛しの人」になれますよ、ということなのかもしれません。

尚、女性名詞(単数)でも、母音から始まるものには、monをつけます。

例:mon amie  モナミ 私の(女性の)友達

名詞が複数のときは、女性でも男性でも、mes(メ)となります。

mes parents  メ パラン 私の両親

7.主語を立てる

日本語では主語を言わないことが多いですが、フランス語ではいつも主語を立てますし、命令法のように主語は直接でてこなくても、主語によって動詞の形が変わります。

これについてはこちらを読んでください⇒フランス語と日本語の3つの大きな違い~お問い合わせに関しまして

実例:私のいとしの天使

以上のことを考慮して、先月いただいたお問い合わせを一つ見てみましょう。

まゆさんからいただきました。

『私の可愛い天使』を自分で『ma charie ange』と訳したのですが、間違っていないでしょうか。

本当は『天使達』としたかったのですが、その場合は『anges』になるのでしょうか。

どうか教えてください。宜しくお願い致します。

「天使」を複数形にしたいなら、その前の形容詞も複数形にする必要があります。

こういう問題(?)を考えるときは、まず名詞の性別をチェックしてください。ange は 通常男性名詞だし(女性に対して使われるときは女性名詞として扱われることもある、と辞書にあります)、母音から始まっているので、ma は使いません。

mon ange   モナンジュ です。

それから charie という単語はありません。たぶん、chérie (いとしい、大切な)のことだと思います。この形容詞は、名詞の後ろにきます。

femme chérie  ファム シェリ 愛妻

liberté chérie   リベルテ シェリ かけがえのない自由

chérie は 女性形なので、ange に合わせて男性形にする必要があります。男性形は chéri なので

mon ange chéri  モナンジュ シェリ となります。

天使が複数になると、mon、ange、chéri すべてが複数になります。

mes anges chéris   メザンジュ シェリ

です。

尚、「かわいい」という意味の形容詞は以下のゆうな単語がよく使われます。

mignon ミニヨン
gentil ジャンティ ☆この意味では名詞の前に来ます。
adorable アドラーブル
joli ジョリ ☆名詞の前に来る形容詞です。

すべて男性形だけ書きました。

名詞が男性なら男性形、複数なら、形容詞も複数形にします。

名詞の性別や、その形容詞が名詞の前に来るかどうかは辞書で確認できます。

最後に、問い合わせに関してのお願いです

ここまで長々と書いてきたように、日本語をフランス語にするとき、考えるべきことが多いため、「◯◯をフランス語にしてください」という質問には基本的にお答えしていません。

また、「◯◯に関係のあるかわいい単語を教えてください」という質問にも答えていません。「過去記事を見てください」と返答しています。

何がかわいいかは、主観で決まるからです。

実際、けっこう細かい注文をつける方がいますが、がんばって返答しても、本人には全然かわいく聞こえなかったりするのです。

それから、「もっと短くなりませんか」という問い合わせも多いのですが、フランス語はもともと発音しない文字が多くて、長めになる宿命なのです。

長いのがいやなら、フランス語を使わなければいいだけです。あるいは、全く別の言葉を使うか、造語にすればいいと思います。

さらに、他と差別化したいから、「人が使っていないけど、覚えやすくてかわいい単語を教えてください」というのも、返答に困る問い合わせです。こういう質問には、「ご自身の名前を使ってはどうですか?」とか「地名をプラスしてはどうですか?」とお答えしています。

「差別化したい、だけど覚えやすい単語」を求めている人は、ご自身でフランス語の辞書をじっくり読むことをおすすめします。






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