フランスの雑学系番組 Intéressant(アンテレソン)から、色にまつわる興味深い動画を紹介します。
タイトルは、Le monde des humains est-il moins coloré qu’autrefois ?(人間の世界はかつてよりも色がなくなっているのか?)
60年代や70年代の写真を見ると、車も家具も下着も、カラフルなものであふれていたのに、今の製品はグレーや黒、白ばかり。一体なぜなのか? そんな疑問を取り上げた短い動画です。
2分34秒。
動画の内容
ロンドンのScience Museum(科学博物館)の研究チームが、19世紀初頭から現代までの日用品(カメラ、時計、電話、パソコンなど)の写真7,000点を分析し、それぞれの写真に含まれるピクセルの色を数えてグラフにまとめた研究を紹介しています。
■グラフからわかること
1800年代の製品には赤、茶、黄色、緑など、非常に多様な色が使われていたのに対し、時代が進むにつれて黒とグレーが徐々に勢力を広げ、2020年にはこの2色が圧倒的に多くを占めるようになりました。青は少しだけ増えていますが、暖色系はほぼ消えてしまっています。
■自動車の色も同じ傾向
別の研究でも、同じ傾向が確認されています。1980年のヨーロッパで人気だった車の色は赤、緑、オレンジでしたが、2022年にはグレー、黒、白が主流になっています。
■なぜ色がなくなったのか?
動画では理由を2つ挙げています。
1つ目はグローバル経済の影響です。世界中で販売する製品には、誰にでも受け入れられやすい無難な色が選ばれる事情があります。
2つ目は価値観の変化です。色のない製品は天然素材を連想させ、それが節度や美徳を象徴するようになりました。
戦後の高度経済成長期(フランスではles Trente Glorieuses=栄光の30年と呼ばれる時代)の過剰な工業化への反動として、控えめな色合いが好まれているのです。
重要フレーズ
動画の中から、学習のポイントになりそうなフレーズを4つ取り上げます。
1. 博物館の所蔵品から(0:33〜)
Ils ont sélectionné, au sein de la collection du musée, 7000 photographies d’objets du quotidien.
彼らは博物館の所蔵品の中から、7,000点に及ぶ日用品の写真を選び出しました。
au sein de は「〜の中で、〜の内部で」という意味のフォーマルな表現です。dans より硬い響きがあり、ニュース記事や学術的な文脈でよく出てきます。
au sein de l’entreprise(企業の中で)、au sein de la société(社会の中で)のように使います。
2. 黒とグレーの台頭(1:12〜)
Mais petit à petit, le noir et le gris, que l’on voit en haut du graphique, gagnent du terrain, au point qu’en 2020, ce sont largement les couleurs les plus représentées.
しかし、グラフの上部に見える黒とグレーが徐々に勢力を強め、2020年にはこれらが圧倒的に多くを占める色となっています。
gagner du terrain は直訳すると領土を獲得するという意味ですが、ここでは勢いを増す、優勢になるという比喩的な意味で使われています。ニュースでよく見かける表現です。
au point que(〜するほどまでに)とセットで、変化の程度の大きさを伝えています。
3. 青の変化(1:20〜)
Dans le même temps, le bleu se développe légèrement, et c’est vrai que cela me rappelle certains objets contemporains.
同時に、青色もわずかに増えており、確かに現代の製品をいくつか思い起こさせます。
dans le même temps は「同時に、それと同時期に」という表現で、en même temps とほぼ同じ意味ですが、やや書き言葉寄りです。
se développer は「発展する、広がる」。ここではグラフの中で青のピクセルの割合が少しずつ増えている様子を表しています。
4. 無彩色が増えた理由(1:55〜)
Eh bien, en partie parce que dans une économie mondialisée, il est plus prudent de choisir des coloris consensuels, qui ne risquent pas de déplaire, et sans doute aussi parce que l’absence de couleurs évoque les matériaux naturels, et donc une sorte de sobriété vertueuse qui s’oppose aux excès industriels des Trente Glorieuses.
それは、グローバル化した経済の中では、嫌われるリスクのない無難な色を選ぶほうが賢明だからです。そしておそらく、色がないことが天然素材を連想させ、高度経済成長期の産業の過剰さに対抗するような、ある種の節度ある美徳を象徴するようになったからでもあります。
この一文はとても長いですが、構造を整理するとこうなります。
en partie parce que…(部分的には〜だから)と、sans doute aussi parce que…(おそらく〜でもあるから)という2つの理由が並列されています。
il est plus prudent de + 不定詞(〜するほうが賢明だ)は、非人称構文の典型です。
coloris consensuels は日本語にしにくい表現ですが、万人受けする色、誰にも嫌がられない色合い、というニュアンスです。consensuel は「合意にもとづく、コンセンサスのある」という意味の形容詞です。
sobriété vertueuse(節度ある美徳)という表現もフランス語らしくて印象的ですね。環境意識やシンプルな暮らしへの志向を背景にした価値観を、2語で表現しています。
単語メモ
Science Museum 科学博物館
autrefois かつて、昔
mobilier 家具(集合的に)
au sein de 〜の中で、〜の内部で
dater de 〜にさかのぼる、〜の年代から始まる
pixel ピクセル、画素
mettre ~ dans un graphique 〜をグラフにまとめる
représenté(e) 表されている、占めている
les couleurs chaudes 暖色(赤、オレンジ、黄色など)
gagner du terrain 勢力を広げる、優勢になる
au point que 〜するほどまでに
se développer 発展する、広がる
contemporain(e) 現代の、同時代の
se décolorer 色あせる、色を失う
mondialisé(e) グローバル化した
prudent(e) 慎重な、賢明な
coloris 色合い、色調
consensuel(le) 合意にもとづく、万人受けする
déplaire 気に入らない、不快にさせる
évoquer 思い起こさせる、連想させる
sobriété 節度、控えめさ
vertueux / vertueuse 道徳的な、美徳のある
s’opposer à 〜に対抗する、反対する
les Trente Glorieuses 栄光の30年(1945年〜1975年のフランスの高度経済成長期)
プチ文法:比較の表現
動画のタイトルにもなっている Le monde est-il moins coloré qu’autrefois ? を手がかりに、フランス語の比較表現を整理します。
■基本の3パターン
plus + 形容詞 + que(〜よりも…だ)
moins + 形容詞 + que(〜よりも…でない)
aussi + 形容詞 + que(〜と同じくらい…だ)
動画タイトル:
Le monde est-il moins coloré qu’autrefois ?
→ 世界はかつてよりも色がなくなっているのか?
動画冒頭のフレーズ:
On a l’impression que le monde d’alors était plus coloré que celui d’aujourd’hui.
→ 当時の世界は今よりもカラフルだったという印象を受ける。
動画本文のフレーズ:
Il est plus prudent de choisir des coloris consensuels.
→ 無難な色を選ぶほうが賢明だ。
この最後の例は、que 以下がない比較です。何かと直接比べているのではなく、漠然とより賢明だという意味で使われています。こういう使い方もよくあります。
■自作の練習例文
Cette robe est plus chère que l’autre.
このドレスはもう一方よりも高い。
Mon café est moins sucré que le tien.
私のコーヒーはあなたのよりも甘くない。
Il fait aussi froid qu’hier.
昨日と同じくらい寒い。
比較の表現は日常会話でもニュースでも頻出します。
関連動画:色の心理学
インテリアにおける色彩の心理的効果を説明している動画も紹介します。
世の中の製品が無彩色へ寄っていますが、暮らしの中では色を意識的に使って気分を調整できます。
La Psychologie des Couleurs : Choisir les Bonnes Teintes pour Influencer Votre Humeur et Votre Espace(色彩心理学:気分と空間に効果的な色の選び方)
3分。
この動画では、代表的な5つの色が持つ心理的な効果と、インテリアへの取り入れ方を紹介しています。
赤(情熱とエネルギー)は活力や大胆さの象徴で、食欲を高める効果もあるため、ダイニングなどのアクセントに向いています。
青(静寂と信頼)は落ち着きをもたらし、寝室やリラックスしたい場所に最適です。集中力を高めるため、仕事環境にも適しています。
黄色(喜びと創造性)は明るい気分にさせ、コミュニケーションを活性化させるため、共同作業スペースに向いています。
緑(自然と調和)は心身のバランスを整え、安定感をもたらす色です。
紫(神秘と優雅)は想像力をかき立て、内省を促す効果があります。
色にはそれぞれ力があるのだなと思います。メイン動画で紹介された無彩色の世界と対照的で、おもしろい視点ですね。
色のフランス語:関連記事
色に関するフランス語については、過去にこちらの記事でも取り上げています。
かわいいフランス語、教えます~その60 いろいろな赤、ピンク、黄色
かわいいフランス語、教えます~その61 その他の色のバリエーション
*****
身の回りの製品がグレー・黒・白ばかりになった理由を解説する動画を紹介しました。
グローバル経済の影響で無難な色が選ばれやすいことと、過度な大量生産への反動として控えめな色が好まれるようになったこと。動画では主にこの2点が挙げられていました
ほかにも、ミニマルな暮らしやシンプルライフを志向する人が増えていることも、無彩色の製品が増えている背景にあるかもしれません。製造コストの面でも、色数が少ないほうが安く済みます。
私自身も、塗り絵をするときはオレンジやグリーンなど鮮やかな色を使うのが好きなのに、身の回りのものは黒、グレー、白ばかり。この動画を見て、まさに自分もその傾向にしっかり当てはまっていると思いました。
みなさんの身の回りは何色が多いですか?
それでは、次回の記事もお楽しみに。











この記事へのコメントはありません。