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ニキ・ド・サンファルの反抗~ライフルで描く『射撃絵画(Tirs)』

フランスのアーティスト、ニキ・ド・サンファルが行ったライフルで絵画を撃つ「射撃絵画(Tirs)」のパフォーマンスに関する短い動画を紹介します。

タイトルは Niki de Saint Phalle (ニキ・ド・サンファル)です。

ニキ・ド・サンファルは、フランス出身の前衛芸術家です。

Niki de Saint Phalle | Klash ! L’art en acte | ARTE

2分40秒

Tirs:トランスクリプション

Elle tire sur la société.

Le dimanche 12 février 1961 vers midi, impasse Ronsin, à Paris, dans une ruche d’ateliers d’artistes, la toute jeune artiste Niki de Saint Phalle, entreprend un improbable tir à la carabine sur des tableaux couverts de plâtre, remplis de poches de couleurs et qui explosent sous les balles.

Seuls sont présents trois complices : son compagnon et artiste Jean Tinguely, le critique Pierre Restany et le photographe Harry Shunk.

Ils assistent à cette première oeuvre manifeste de l’artiste qui fait voler en éclats tous les préjugés, les tabous et les carcans de l’époque.

Avec ses tableaux Tirs, elle fusille en rafale papa, tous les hommes, la société, l’église,le couvent, l’école, sa famille, maman et elle-même.

Elle commet un acte artistique d’une insolence absolue, totalement inimaginable pour l’époque.

C’est aussi une réplique à une violence sociale omniprésente, à la guerre d’Indochine qui vient de s’achever, à la bombe atomique qui plane sur le monde et à la guerre d’Algérie dans laquelle la France s’est enlisée.

Le fusil de Niki est une arme critique qui conjure et libère. Niki nous dit “la peinture pleure, la peinture est morte. Guerre sans victime. “

-Il y avait des sachets de couleurs et c’était une explosion, c’était un spectacle et en même temps, c’était une révolte, c’était une révolte contre le Sacré Cœur, contre la religion, contre mon background, contre ma famille.

Ce dimanche 12 février 1961, armée d’un 22 long rifle, Niki de Saint Phalle entre dans le monde de l’art par effraction. Avec ce geste radical, l’art au féminin libéré est déclaré.

☆トランスクリプションの引用元⇒KLASH! L´ART EN ACTE (ARTE>ARTS/CULTURE & POP): NIKI DE SAINT PHALLE (3MIN/CO-QCM/ B2-C1) – DOIT-ON DECLARER SON BAGAGE CULTUREL? https://bagagelitteraireabord.com/2025/02/02/klash-lart-en-acte-artearts-culture-pop-niki-de-saint-phalle-3min-co-qcm-b2-c1/

射撃絵画・和訳

彼女は社会に向けて撃ちました。

1961年2月12日の日曜日、正午ごろ、パリのロンシン小路、アーティストのアトリエが集まる場所で、とても若い芸術家ニキ・ド・サンファルは、ライフルを手に、石膏で覆われたキャンバスに向かって発砲する前例のないパフォーマンスを行いました。キャンバスには色の入った袋が仕込まれており、弾が当たると爆発しました。

この場にいたのは、3人の共犯者だけ。彼女のパートナーでアーティストのジャン・ティンゲリー、美術評論家のピエール・レスタニー、写真家のハリー・シャンク。

彼らは、ニキ・ド・サンファルの最初の象徴的な作品を目の当たりにしました。それは、この時代の偏見やタブー、抑圧を粉々に打ち砕くものでした。

「射撃絵画(Tirs)」というこの作品で、彼女は父親、男性たち、社会、教会、修道院、学校、家族、母親、そして自分自身を次々に撃ち抜きました。これは、当時は想像もできなかった、極めて挑発的な芸術行為でした。

同時に、これは社会に蔓延する暴力に対する返答でもありました。終戦したばかりのインドシナ戦争、世界を覆う原爆、フランスがはまりこんでいたアルジェリア戦争など。

ニキの銃は、批判の武器であり、悪を払いのけ自由になるものでした。

彼女はこう語ります。

「絵画は泣いています。絵画は死にました。これは、犠牲者なき戦争です。」

- 色の入った袋があり、それが爆発しました。それはショーであると同時に、反乱でもありました。

サクレ・クール寺院に対する反抗、宗教に対する反抗、私の生い立ちや家族に対する反抗でもありました。

1961年2月12日、この日、ニキ・ド・サンファルは22口径ライフルを手に、芸術界に強引に押し入りました。

このラディカルな行為によって、女性による自由な芸術表現が宣言されたのです。

単語メモ

impasse 袋小路

ruche 人が集まり活気に満ちた場所

entreprend (entreprendre) ~を始める;~を企てる

improbable ありそうもない

carabine カービン銃

plâtre 石膏

sous les balles 弾丸の下で、弾丸に撃たれて

complice 共犯者、仲間

assister à ~に立ち会う、~に参加する

faire voler ~を吹き飛ばす、粉々にする

carcan 束縛、抑圧

en rafale 連続して、激しく

commet (commettre) (罪や過ちを)犯す、行う

réplique 反応、応答、反論

s’achever 終わる、完結する

plane (planer) (不吉なものが)漂う、広がる

s’enlisé (s’enliser) (困難などに)陥る、泥沼化する

conjure (conjurer) (不幸・災厄を)払いのける、追い払う

révolte 反乱、反抗

effraction 侵入、押し入り

関連動画:ニキ・ド・サンファルの芸術と人生

ニキ・ド・サンファル(Niki de Saint Phalle, 1930-2002)は、フランス生まれの前衛芸術家です。

彫刻家、画家、映画監督としても活躍しました。

1960年代初頭、ライフルで絵画を撃つ「射撃絵画(Tirs)」のパフォーマンスで注目を集め、社会の抑圧や固定観念に対する強いメッセージを込めた作品を生み出しました。

代表作には、大胆な色彩と曲線が特徴の「ナナ・シリーズ」や、「タロット・ガーデン」といった巨大彫刻があります。

彼女の作品は、フェミニズムや社会批判を芸術に取り入れた先駆的なものとして、高く評価されています。

■L’art avec Malo & Mila – Niki de Saint Phalle 

マロとミラというネズミのキャラクターがアートを紹介するシリーズのようです。

3分56秒。

内容を簡単にまとめました。

1.ニキ・ド・サンファルの芸術とフェミニズム

ナナシリーズを通じて、女性の自由と自己表現を支持した。

「女性は結婚し子供を持つべき」という伝統的な価値観に異議を唱えた。

2.射撃絵画(Tirs)による自己表現

銃で絵の具を撃ちつける手法で、過去のトラウマを昇華。

アートをセラピーとして活用し、内面的な苦しみを表現。

3.社会的問題への取り組み

フェミニズムだけでなく、人種差別やエイズ啓発活動にも積極的に関与。

アートを通じて社会的メッセージを発信。

4.タロット・ガーデンの創造

イタリア・トスカーナで20年かけて「タロット・ガーデン」を制作。

22枚のタロットカードをモチーフにしたカラフルな彫刻が特徴。

5.映画『Daddy』による自己表現

幼少期にに父親から受けた傷と向き合うために映画を制作。

アートを通じて、自身の経験を昇華し、伝える手段とした。

NIKI – Bande-annonce

Nikiというタイトルの自伝映画の予告編です

ニキ・ド・サンファルは幼少期に父親から性的虐待を受けています。

これは彼女の精神的な傷となり、生涯にわたって影響を与えました。

この経験は、彼女の芸術にも大きな影響を与え、「射撃絵画」のような破壊的な作品や、父親との関係をテーマにした映画『Daddy(ダディ)』につながっています。

■関連記事もどうぞ⇒L15 フランス人が待ち合わせに使う噴水 ニキ・ド・サンファルの作ったストラビンスキーの噴水にふれています。

*****

1930年は昭和5年なので、ニキ・ド・サンファルは昭和8年生まれの私の母と同世代です。

それを考えると彼女の考え方や活動はとても先進的でしたね。

女性の自立、フェミニズム、社会的正義、アートによる自己表現などは、今でこそ広く受け入れられていますが、彼女の生きた時代には、なかなか理解されなかったと思います。

ニキ・ド・サンファルは時代を先取りした芸術家と言えるでしょう。






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