翻訳講座テキスト

フランス語脳プロジェクト

仏検の参考書の訳がよくわからない日本語になっているその理由

翻訳者養成プロジェクトの特別授業~第1回を聞きました。

時期的に仏検前なので、今回と次回の課題は仏検1級の読解問題より出題されています。

初回の文章のテーマは北極圏に関する熱い利権争いでした。

地球温暖化のせいで北極の氷がだんだん溶けています。よって、これまでアクセスできなかった北極の地下資源を沿岸諸国が狙っているのです。

問題の場所が自国の領土であると国連に証明出来れば、自由に開発できます。

また、北極の北西にある海峡を所有していると認められれば、アジアとヨーロッパを結ぶ近道の航路を手に入れたことになります。

この航路はスエズ運河まわりで行くより5000キロも短いそうです。

地下資源と近道・・この二つをめぐって北極のそばにある国は熾烈な陣地争いをしているのです。

現在の領土と地続きであると証明できれば、自分の国土になります。

なかなか興味深い文章でしたが、課題をやってるときは全然おもしろくなかったですね。

出てくる単語がいちいち難しかったですから。まあ、ふだんやってる本の訳よりは多少やさしかったでしょうか。

と言いながらも、例によってしっかりいくつか誤訳してましたが^^;

先生によると今回の課題は仏文的には勉強になるよい素材で、復習しておくといいそうです。

8回目の講義で取り上げられた内容を自分の控えに項目だけあげておきます。

テーマ:テストで通用する「間違ってはいない」解答と「読める」翻訳の間を知る

・«:»(deux points)
・欧米言語のセンテンスと日本語の主題文の違い(日本語の主題文とは助詞の「は」を中心に構築される文です。)
・間接話法と直接話法 - 視点の変更
・前の文を受ける名詞(前の文の言い換え-無冠詞)

単語、句:地球温暖化関連語句、季節を表す形容詞、défférentの二つの意味、 aux fins de、 pour(この前置詞は難しい)、terme など。

間接話法と直接話法

きょうは間接話法と直接話法についてシェアします。

間接話法と直接話法はどういうのかと言うと、たとえばpenがおやつの時間に大好物のしるこサンドを「あ~しるこサンドっておいしいな」と言いながら食べたとします。

これを文章で表すのに二通りの方法があります。

・直接話法:penは「しるこサンドっておいしいな」と言った。
・間接話法:penはしるこサンドをおいしいと言った。

しゃべった言葉をそのまま直接書くのが直接話法、じかに書かないのが間接話法です。

フランス語の例文:
Il a dit: «je vais divorcer bientôt.»
「僕、もうすぐ離婚する」と彼は言った。
l a dit qu’il allait divorcer bientôt.
彼はもうすぐ離婚すると言った。

間接話法の文章はqueなどの接続詞が出現し、その接続詞のあとの文で主語が変わったり、時制の一致が起きたりします。

フランス語は日本語にくらべてずっと間接話法が多いです。というのもフランス語の世界では物事を突き放して、客観的に眺めようとする傾向があるからです。

確かに間接話法って客観的ですね。人ごとみたいな雰囲気が出ます。

反対に、日本語はその言葉がしゃべられた状況に、主観的に入り込もうとする傾向があります。

この両者の違いを意識して、原文が間接話法の場合、なんでもかんでも機械的に間接話法として訳すのではなく、状況に応じて、直接話法に転換して訳すのが日本語らしく訳すコツです。

「おおっ!」と思ったのは、間接話法の訳し方に三つあること。

例文:Je lui demande si c’est vrai.

1.間接話法を間接話法としてごく普通に訳す
私は彼にそれが本当かどうかたずねる。

2.間接と直接の中間 ←これを知らなかったというか訳す時、あまり意識したことがなかったです。
私は彼に本当ですかとたずねる。

3.直接話法に転換
僕は彼にたずねる - 本当?

特に2の中間の訳を使うとうまくいくことが多いそうです。

考えてみると2の文はふだんブログにもよく書いているのですが、この中間訳の場合、発話を示すかっこ(「」)はつけなくてもいいですよね? 中間訳なのだから。

この点が曖昧です。が、これは翻訳技術ではなく、記述のしかたの問題ですが。

今回は仏検の過去問が課題だったので、先生が訳した文と参考書にのっている訳文(模範解答)の二つを比較しながら、講義がすすめられました。

参考書にのってる訳文は、たぶん想像つくと思いますが、日本語の文としては、いつも今ひとつよくわからないですよね。

いわゆる翻訳調が強く残っている文章です。

それに比べて先生の訳は日本語として読める訳になっていました。

先生によると、参考書の訳が変なのは、べつにそれを訳している人が翻訳ができないのではなくて、あまりにこなれた日本語にしてしまうと、学習者が原文の仏文の構造を見抜けなくなってしまうからだそうです。

今回の訳文でも関係代名詞などは、すべて後ろから前にかけるやりかたで訳されていました。

これは学習者の便宜をはかっているのです。

でもそのせいで、日本語になっていないというクレームがたまに来るそうです。

・・・参考書の執筆もなかなか大変です。






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