仏作文力養成講座第3回後半の受講メモです。
後半は
冠詞(かんし)
冠詞とは、名詞の前についてる短めの単語です。
考えてみると、冠詞は名詞の前にしか来ません(あいだに形容詞などが入ることはあり)。名詞がかぶる冠(かんむり)みたいなものだから、冠詞なのかなと思います。
たとえば、
Je t’attends devant la salle de réunion.
会議室の前で君を待っているよ。
という文の la これは女性名詞の前につく定冠詞。
名詞の前について、その名詞にちょっとした区別を与えているんですね。
日本語には冠詞がありませんので、最適な冠詞をつけるのは至難の業の技です。
同じ名詞でも、その時の話し手の意図が反映されますので、場合によって冠詞が変わりますから。
講義にはいろいろ解説があったのですが、この記事では、特に不定冠詞と定冠詞の使い分けに焦点をあててシェアします。
ウォーミングアップ~冠詞クイズ
冠詞に関して(洒落ではありません)、7つの練習問題が課題として出されましたが、2つ書きますので、解いてみてください。() に適当な冠詞を入れます。
C’est (1) livre que j’en emprunté à Alice ; c’est (2)très beau livre.
これはアリスから借りた本なの。素晴らしい本よ。
次はアリスからマリコへのお手紙
Bonne anniversaire, ma chère Mariko !
J’ai chargé Alain de t’envoyer (3) bouteille de Poire Williams. C’est (4) digestif que j’ai acheté lors de mon voyage en Alsace et que tu aimeras sûrement.
Je suis occupé en ce moment à refaire mon appartement. (5) murs étaient sales et j’ai tout repeint. Te rappelles-tu (6)grand vase que j’ai trouvé (7) Marché aux Puces ? Eh bien, j’en ai fait une trés belle lampe !
En attendant de tes nouvelles, je t’embrasse.
Alice
お誕生日おめでとう、マリコ!
ポワール・ウィリアムス(洋梨のフルーツブランデー)を1本、アランに持っていくように頼んだわ。アルザスに旅行に行ったときに買った食後酒よ。きっと気に入ってくれると思うの。
今、私アパートのリフォームをしてるの。壁が汚くなってたから、全部塗り直したの。私がマルシェ・オ・ピュスで見つけた大きな花瓶を覚えてる?あのね、それをとてもきれいなランプにしたの。
また近況を知らせるわ。愛をこめて。
アリス
答えは記事の一番最後に書きます。
冠詞の大原則
すべての名詞に冠詞がつきます。
これは英語とは違う点ですね。
ちなみに、不定冠詞、定冠詞、部分冠詞があります。
原則、すべての名詞に冠詞がつくので、冠詞がついてない場合は決まった表現(表現モデル)である場合が多く、そういうのは1つずつ覚えていきます。
たとえば、最初に書いた
la salle de réunion 会議室
のréunion (会議)の前には冠詞がついてませんが、こういうやつです。
さて、冠詞は何をしているのかというと、そのあとの名詞に情報上の区別を与えています。
不定冠詞と定冠詞の使い分けの軸~(情報上の区別)
軸その1:聞き手にとって、新情報か既知情報か?
●不定冠詞⇒後ろ(冠詞の直後の名詞)の情報が聞き手にとって未知の情報であることを示す記号。
●定冠詞⇒後ろの情報がすでに知っている情報であることを示す記号。
人と話しをするとき、まず共有されている情報から開始し、次に新情報を伝えるという流れがあるので、定冠詞のほうがよく使われます。
また不定冠詞が出てきたら、新情報ですので、直後の名詞に注意を向ける必要があります。
C’est un appartement. これはアパートです(新情報)。
C’est l’appartement. これが、そのアパートです(既知の情報)
★この使い分けで気をつける点
新情報でも、定冠詞がつくものがあります。たとえば、
la clé d’une voiture 車の鍵
l’inauguration d’une exposition 展覧会のオープニング
le plus haut sommet des Alpes アルプスの最高峰
これは、たとえば、車には必ず鍵がついているし、展覧会にはオープニングがつきものだから、という説明でした。
定冠詞がついていても、話の焦点はla clé, l’inauguration, le…sommet にあたっています。
このあたり、なかなか難しいですね。ただ、たくさんフランス語を読んでいれば、「ここはこうじゃないと、変な感じ」というふうに語感がついてきます(私はまだその域には至っておりませんが)
アルプスの最高峰は最上級でこの世に1つと限定されるから、定冠詞がつくのはわかりやすいですね。
英語でもこうした場合定冠詞をつけますが、「後ろから限定しているから」というふうに習った覚えがあります。
軸その2 抽象的な情報か、具体的な情報か?
抽象的だと定冠詞⇒prendre le train 電車に乗る
trainは移動手段としての電車。電車の機能とも言えます。つまりある種の概念ですね。
具体的だと不定冠詞⇒regarder un train passer 通り過ぎる電車を見る
このtrainは今、実際に見ている物体としての電車です。
ほかの例
抽象的
aller au restaurant レストランに行く
個々のレストランを問題にしているのではなく、食事を提供する場所であるというレストランの概念が問題になっています。
具体的
travailler dans un restaurant
あるレストランで働く
レストランという具体的な店舗が問題になっています。
ですから、「外食する」と訳すほうがいいかもしれません。
問題の解答
1. un livre 新情報
2. un très beau livre (本についてはすでにわかっているが)本の性質は聞き手にとって新情報
3. une bouteille 新情報
4. un digestif 新情報
5. Les murs 手紙の最初に壁塗りをしているアパートについてはすでに知らせているし、アパートに壁はつきもの。ここで des としてしまうと、そのアパートではないどこか別のアパートの壁なのかと思われてしまう。
これは上に書いた la clé d’une voiture と同じ考え方です。
6. le grand vase 「覚えてる?」と聞いているので既知の情報
7. au Marché aux Puces 固有名詞
8. une très belle lampe 新情報(花瓶は知っているが、それをランプにしたのは新情報)
いかがでしたか?冠詞の問題は一生ついてまわると思いますが、少しでも考える手立てになればうれしいです。
以前ラジオ講座のポーズカフェで、「冠詞の付け間違いより、全く付けないことのほうが問題」だとシルヴィ先生が言われてました。
つくべきときについてないと、ものすごく違和感があるようです。日本語で言うと、助詞が抜けてる感じでしょうか?
仏作文の場合は、とくに冠詞がつかない表現に習熟することが大事だと思います。講義では、読解をしているとき、「無冠詞の表現に出会ったら、逐一メモをとるように」と言われました。
何か読解問題をやったら、仕上げに無冠詞の表現に蛍光ペンをひいてみたりするのもいいかもしれません。
それでは、次回の仏作文力養成講座をお楽しみに。
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