2004年のフランス映画 Un long dimanche de fiançailles(ロング・エンゲージメント)の予告編のフランス語を紹介します。
映画のタイトルの直訳は、「婚約期間中のある長い日曜日」です。この映画、日本でも公開されて話題になりました。もう10年以上前の話ですが。
Un long dimanche de fiançailles 予告編
1分57秒
Tu es déjà monté en haut du phare ?
Moi, je peux te porter jusqu’en haut des escaliers.
灯台の一番上まで上ったことある?
僕は、君を階段の一番上まで運ぶことができるよ。
Quand Mathilde et Manech ont fait l’amour pour la première fois,il s’est endormi la main posée sur son sein.
マチルドとマネクが初めて愛し合ったとき、マネクはマチルドの胸に手を置いて眠った。
Un matin d’août on était venu le chercher.
ある8月の朝、マネクは連れていかれた。
Si Manech était mort, Mathilde le saurait.
マネクが死ねば、マチルドにはわかる。
Si j’arrive au virage avant la voiture…
Si j’arrive au bout sans la casser…
Si, le temps de compter jusqu’à sept,le train n’est pas rentré dans un tunnel…
Manech reviendra vivant.
もし車より先に角につけば
切れないで最後まで行けば
7つ数える間に、汽車がトンネルに入らなければ
マネクは生きて戻ってくる。
Elle se raccroche obstinément à son intuition.
マチルドはがんこに自分の直感を信じた。
Ça, à ta place, j’oublierais tout ça, Mathilde. Ça sert à rien de poursuivre du vent.
Ça s’appelle de l’espoir.
わしが君の立場なら、すべてを忘れるがね、マチルド。つかみどころのない話を追いかけても無駄だ。
それを希望というのよ。
Je veux comprendre !
Je veux comprendre !
知りたいのよ!
知りたいのよ!
Dis-moi, Bleuet. T’as bien une fiancée, non?
Mathilde… Je sens son cœur qui bat. C’est comme du morse.
なあ、新入り。婚約者がいるんだろ?
マチルド…彼女の心臓の鼓動が聞こえる。
まるでモールス信号のように。
Ce que je peux être idiote !
私バカみたいになるときがあるわ。
Si Manech était mort, Mathilde le saurait.
マネクが死んだらマチルドにはわかる。
Avec des si, on peut mettre un cachalot dans une boîte d’allumettes.
「もし~」なんて考えていたら、マッチ箱にクジラをいれることもできるさ。
スクリプトはこちらを参考にしました⇒Bande-annonce: Un long dimanche de fiançailles
単語メモ
phare 灯台
du vent 無価値(無意味)なもの、実体のないもの、空約束
Bleuet 新兵
bleuet は「ヤギルマギク」ですが、ここでは、軍隊にもっとも最近入った人のこと
bleu は新兵という意味があります。かつて青い服を着ていたことから、と辞書にありました。
Avec des si, on peut mettre un cachalot dans une boîte d’allumettes.
これは、si(もし)という言葉を使うなら、つまり、仮定の話なら、マッチ箱にクジラを入れることもできる、つまり何でも可能だ、だけど現実は違うさ、とたしなめるときの表現です。
Avec des si, on mettrait Paris en bouteille. 「もし」というなら、パリを瓶に詰めることもできる、ということわざもあります。
こちらで説明しています⇒想像上なら何でも可能だ~フランス語のことわざ23
ロング・エンゲージメントのあらすじ
この映画はフランスのミステリー作家であり脚本家のセバスチャン・ジャプリゾ(Sebastien Japrisot)の同名の小説の映画化です。
小説は1991年に発表されています。「長い日曜日」というタイトルで翻訳版が出ています。
ものすごくざっくりあらすじを書くと、時代は20世紀のはじめ、足の悪いマチルドは幼馴染のマネクと恋仲でした。2人はブルターニュに住んでいます。
第1次世界対戦が勃発して、マネクは戦争に。
彼の帰りを待っていたマチルドに「マネクは戦死した」という知らせが届きます。
実はマネクは、ほかの4人の兵士とともに、除隊するために、わざと自分で手を撃った罪で軍法会議にかけられ、武器を持たずに、ドイツ軍との戦いの中間地点に放り出されたのです。
3年ぐらいあと、マチルドは、5人を護送した人から手紙を受け取ります。
この手紙をじっくり読んでみるとどうも辻褄があわないところがあります。
「マネクは生きてる。だって死んでるなら、私にわかるはずよ」という、まったく根拠のない直感に突き動かされ、マチルドはマネクを探そうとします。
恋人の死を受け入れられないというか、受け入れたくないのです。
かくして、マチルドの執念のマネク探しが始まります。
マチルドは足が悪いせいか(小説では車椅子生活)、もともとそういう性格なのか、おまじないというか験を担ぐ(げんをかつぐ)のが好きです。
予告編で出てくる「もし7数える前に、汽車がトンネルに入らなかったら、マネクは生きてる」なんてことをよく考えています。
しかし、彼女はとても人から好かれる性格で、なぜか周囲の人が、マネク探しに力を貸してくれます。
ロング・エンゲージメント:日本語版の予告編
マチルドのおまじないの例が出てきます。
日本語版の予告編の出だしはちょっとおとぎ話風です。
この映画の監督は、ジャン=ピエール・ジュネ。「アメリ」の監督です。主演は「アメリ」でアメリをやったオドレィ・トトゥ。
アメリを知らない方はこちらへどうぞ⇒映画『アメリ』の予告編のフランス語
だからちょっとアメリ風の雰囲気を出しているのでしょうね。
話は全然違いますが。
マネクと一緒に死んだとされる5人は、別に軍人志願でもなんでもなく、ふつうの人でした。戦争が泥沼化し、駆り出され、なかなか家に帰れなかったのです。
しかも、仲間はどんどん死んでいます。だから、逃げたかったのでしょうね。実際、自傷して、戦隊を逃れようとした人がたくさんいたようです。
おまけ情報:ジョディ・フォスターも出ている
この映画には、ジョディ・フォスターもエロディという女性の役で出ています。ジョディ・フォスターはフランス語が得意なことで有名です。
彼女はフランス語版のインターナショナルスクールである、リセ・フランセに通っていたので、学校でフランス語を学びました。
リセ・フランセは、世界にちらばるフランス語をしゃべる子どもたち向けの学校です。
学校が違ってもカリュキュラムはみな同じとのこと。ジョディ・フォスターは小さいときから、子役の仕事をいっぱいしていたので、撮影場所がばらばらでも、勉強できるようにリセ・フランセに通っていたらしいです。
彼女はリセを主席で卒業。
ジョディはもともと頭がよかったんでしょうが、仕事が忙しいのに、学業もきっちりこなして偉いですね。
原作を書いたセバスチャン・ジャプリゾのミステリは1960年代~1970年代に日本でも人気があり、私も何冊か読みました(もちろん翻訳で)。
特に「新車の中の女(La Dame dans l’auto avec des lunettes et un fusil)」というのが好きで、他の本は捨ててもこれはずっと持っていました。
そのうちフランス語版を読めたらいいな~と思っています。
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