今年に入って、イランとアメリカの間の緊張関係が続いています。
なぜ、この2つの国は仲が悪いのか、子供むけにざっくり、簡単に説明している 1 jour 1 actu の記事を訳してみます。
タイトルは、États-Unis/Iran : les deux ennemis(アメリカとイラン/2つの敵)
イラン事情に詳しい、専門家へのインタビューです。
1月7日にアップされたものなので、イランによる、イラクに駐留しているアメリカ軍の基地への攻撃や、ウクライナ航空機の過射はまだ起きていない段階の記事です。
アメリカとイランの関係
なぜ、これが話題なのか?:なぜなら、この金曜日、アメリカの大統領、ドナルド・トランプが、急襲を命じ、イランの重要な指導者、ソレイマニ将軍を殺害したからです。
アメリカとイランの間の緊張が高まっています。イランの専門家、ティエリー・コーヴィユが、なぜこの2つの国がこんなに嫌いあっているのか、よくわかるように教えてくれました。
1J1A: アメリカとイランの間で、攻撃する行為が増えています。この深い対立のそもそもの原因は何ですか?
TC: 理解するためには、67年前にさかのぼらなければなりません。1953年に、アメリカのシークレットサービスがイランでクーデターを起こしたのです。
というのも、イランの首相の決断に同意できなかったからです。クーデターを起こした人たちは、ほかの首相を据えました。
この事件はイランの人にとっては、深刻なできごとで、以来、アメリカに対する強い反感が生まれました。
1J1A: それ以来、イランの人たちは、アメリカの支配下にあると感じるようになったということでしょうか?
TC: はい、そのとおりです。そして、その反感は次第に高まり、1979年の2月11日にイスラム教徒(シーア派)が権力を握りました(イラン革命)。
なぜ、イランの国民は、革命派を支持したのか? 革命派は、独裁的で、急進的なイスラム人を擁護したのに。
その理由はおもに、革命派がアメリカに対する嫌悪をはっきり示したからです。
1J1A: それで、アメリカのほうは? なぜイランのことを拒絶しているのですか?
TC: 1979年の終わりに、イランのアメリカ大使館で、50人ほどのアメリカ人が人質に取られたのです。
中には、400日以上、囚えられていた人もいました。この事件はアメリカにとっては屈辱です。この事件が、アメリカのイランに対する一連の長い制裁の始まりでした。
たとえば、アメリカは、イランがアメリカで石油を売ることを禁じました。
1J1A: 誰も、対立を終わらせて新しい関係にすることはできなかったのですか?
TC: それこそ、前アメリカ大統領のバラク・オバマがしようとしたことです。彼は、もしイランが核兵器の開発にかかわるプロジェクトを終わらせるなら、制裁はやめるという協定を提示しました。
そうやって2015年に、イラン、アメリカ、中国、ロシア、フランス、イギリス、ドイツの間でとても重要な協定が調印されました(イラン核合意)
1J1A: それはうまくいきましたか?
TC: そうでもありません。というのもドナルド・トランプが大統領になったあと、彼はこの合意を「腐っている」として、協定を尊重しないことに決めたのです(核合意からの離脱)。そして、ほかの国がイランと経済取引することを禁止しました。
1J1A: なぜ、トランプ大統領はイランの人に対して、そんなに敵意を持っているのですか? ソレイマニ将軍を暗殺したことが証明しているように。
TC: 私が思うに、トランプ大統領は、これまでの歴史を古くまでさかのぼって見ていないからでしょうね。彼は1979年にイランによってアメリカン人が屈辱を受けたことにこだわっているのです。
ドナルド・トランプは、負けたと見せたくないのです。弱いところを見せたくないし、強さを見せつけたいのです。
1J1A: 二国間で戦争があるかもしれないと思いますか?
TC: どちらも戦争をしたいとは思っていません。トランプは、戦争はしたくありません。なぜなら、彼の選挙民はそんな遠いところでお金を使うより、アメリカ自身を発展させるために使ってほしいと思っていますから。
イランもアメリカに戦争をしかける余裕はありません。しかし、イランは反撃するしかないでしょう。忘れてならないのは、こんなに高いランクのイラン人がアメリカの手によって殺されたのは、今回が初めてだということです。
ではこれからどうなるのか?
残念ながら、「きみがそうしたから、僕もきみにそうする」というゲームをしているときは、状況がコントロールできず、手に負えなくなる可能性があります。
元記事⇒États-Unis-Iran : pourquoi ces deux pays se détestent tant
単語メモ
infliger 課する
siffler la fin ⇒ 試合終了のホイッスルを吹く→ 終わらせようとする
riposter 反論する、反撃する
déraper 横滑りする、暴走する
イランとアメリカ、補足説明
1953年:CIA(とイギリス)がイランのクーデターを支援。石油の国有化を宣言したモサデク首相の政権を倒し、親欧米派のパーレビ国王派の人が首相に就任。ここからしばらくはイランは親米的な国。
☆イランの石油について:もともとは、イギリスが開発し、その利益のほとんどはイギリスがもらっていたので、石油を国有化することは、イランが独立宣言するようなもの。
1979年:イラン革命:パーレビ朝の独裁を倒し、イスラム教に基づく共和国を樹立した革命。亡命中だったホメイニ師が指導した。この後イランは、反アメリカ的な国となる。
2015年:イラン核合意;イランが高濃縮ウランや兵器級プルトニウムを15年間は生産せず、ウラン濃縮に使われる遠心分離機を大幅に削減する代わり、アメリカと欧州の国々が、金融制裁や原油取引制限などを緩和することを決めた。
2018年:アメリカ(トランプ大統領)が核合意から離脱。トランプ大統領は、アメリカはイランと経済取引をしないだけでなく、イランと取引した国に対しても制裁を行うと言った。ほかの国はまだ核合意から抜けていないが、アメリカがこう言ったので、実質上、イランと取引できない。
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もとをたどれば石油の利権が欲しくて、アメリカはイランのクーデターをサポートしたのです。よその国に対するすごい干渉です。
しかし、トランプ大統領はそこのところはあまり重要視していないようです。
アメリカが核合意から抜けて、1年ほどして、アメリカはイランの原油輸出をゼロにする、と経済制裁を強めました。すると、イランは、核合意で「やります」いったことは、段階的にやめますよ、と言いました。
そして、アメリカの無人機を撃墜したり、ということを開始します。
アメリカに圧力をかけられても、屈しない、という姿勢を見せていたのです。
そんな時、アメリカが、最重要人物のソレイマニ将軍を殺害したから、イラン側が報復として、アメリカ軍の基地などを攻撃したのが1月8日です。
同じ日に、ウクライナ航空機をミサイルで撃ち落としました。アメリカ軍の飛行機だと思って間違えて撃ったとイランは言っており、たぶんそうだと思いますが、こういう意図しないミスが状況をどんどんエスカレートさせる可能性があります。
この飛行機事故、本当に悲惨で、カナダとイランの国籍を持っていた人がたくさん乗っていたので、カナダではいまだに、ニュースで話題になっています。私の住んでいる市にも、トルドー首相がお悔やみの会に出席するためやってきました。
ウクライナ航空の旅客機(ボーイング737)、イランで墜落。生存者なし。
悲しい事故でしたが、アメリカ人が乗ってなくてよかったです。もし乗っていて、命を落としていたら、これをいいきっかけとして、トランプ大統領がもっと極端なことをしていたかもしれません。
気の毒なのは、イランの一般市民ですね。ものすごいインフレで、生活が苦しいし、心穏やかに暮らせません。
何とか、両国が和解してくれるといいのですが。
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