古いピアノ

時事ニュース

戦時中のピアノが現代に蘇る:希少なスタインウェイの修復

希少なピアノ(Victory vertical)を見つけ、修復に取り組む男性を紹介するニュース動画を紹介します。

タイトルは、Il trouve et restaure un piano Steinway créé pour les GIs pendant la Seconde Guerre mondiale(彼は第二次世界大戦中にGIのために作られたスタインウェイのピアノを見つけて修復した)。

2分。

動画の内容

この動画は、第二次世界大戦中にアメリカ軍の慰問用として製造された希少なスタインウェイ製ピアノ「ビクトリー・バーティカル」の修復を追ったニュース映像です。

■希少なピアノとの出会い

ピアノ技師の工房スタッフのテオさんは、フランスのオンライン掲示板 Le Bon Coin で、このピアノが2500ユーロで出品されているのを発見し、即座に購入しました。このモデルは1942年から1945年にかけて約2400台のみ製造された非常に希少なもので、前線の兵士の士気を高めるために、頑丈で持ち運びしやすいように設計されています。

■修復のこだわり

テオさんは、当時の正確な音を蘇らせることを目標に修復に取り組んでいます。そのために新しい部品への交換は最小限にとどめ、状態の良いオリジナル部品を極力残す方針です。

たとえば、特殊なプラスチックで覆われた鍵盤は、多少の欠けがあっても当時の「魂」を残すためにあえてそのまま保存することにしました。

■テオさんの願い

単なる博物館の展示品としてではなく、歴史的な再現イベントなどで再び演奏されることをテオさんは願っています。

重要フレーズ5つ

動画の中から、私が「聞き取りにくい」「意味が取りにくい」と思ったフレーズを5つ紹介します。

1. 考えずにはいられなかった(0:45〜)

Donc quand je l’ai vu passer, je pouvais pas m’empêcher d’y penser.

それが出ているのを見たとき、考えずにはいられませんでした。

ここには3つのポイントがあります。

知覚動詞の構文(voir + 目的語 + 不定詞):je l’ai vu passer は「それ(広告)が流れるのを見た」。英語の I saw it pass に似た構文ですね。

ne pas pouvoir s’empêcher de + 不定詞:「〜せずにはいられない」という表現。否定形で使うのが基本です。

代名詞 y:y penser の y は à ça(そのことについて)の代わり。penser à(〜について考える)の à を受けています。

2. 名詞だけの文(1:06〜)

Ce jour-là, démontage de la partie mécanique.

その日、機械部分の分解(を行います)。

ここでは動詞が使われていません。これは名詞文(phrase nominale)と呼ばれる表現で、ニュースのナレーションや新聞の見出し、日記などでよく使われます。

簡潔でテンポが良いので、報道では定番の手法です。

3. 目的を見失うことなく(1:09〜)

Après inspection, il va falloir changer le feutre de chaque marteau sans perdre l’objectif de vue.

調べたあと、目的を見失うことなく、それぞれのハンマーのフェルトを変えなければなりません。

perdre qn/qc de vue(〜を見失う、への興味をなくす)という表現が使われています。

例文:Il ne faut pas perdre de vue que la situation peut changer. 状況が変わるかも知れないということを忘れてはいけません。

「修復作業に熱中するあまり、本来の目的(当時の音に近づけること)を見失ってはいけない」という意味合いです。

4. オリジナルの状態に近づける(1:15〜)

Si on garde un maximum de pièces en bon état et qu’on en change un minimum en se rapprochant de l’état d’origine, on va normalement se rapprocher du son exact qu’il y avait le piano au moment où il a été construit. ※qu’il y avait le piano 部分は聞き取りにくかったので間違っている可能性があります※

もし、できる限り多くの部品を良い状態のまま残し、オリジナルの状態に近づけるように交換する部品を最小限に抑えれば、ピアノが作られた当時の正確な音に近づくことになります。

長くてややこしいですね。いくつかの文法ポイントがあります。

Si … et que …:「もし〜で、そして(もし)〜ならば」。si を繰り返す代わりに que を使っています。

ジェロンディフ(en se rapprochant):en + 現在分詞で「〜しながら」「〜することによって」。ここでは「オリジナルの状態に近づけるように作業しながら」というニュアンスです。

代名詞 en:qu’on en change un minimum の en は「部品(pièces)のうち」を指しています。

en の説明は、こちらの記事でしています⇒LLM(大規模言語モデル)入門:3分で仕組みをつかむ

5. 鍵盤の特殊なコーティング(1:35〜)

Il est un peu particulier, on peut voir qu’il est pointé sur le dessous et le revêtement de clavier vient vraiment faire le tour de la touche, ce qui est assez peu commun et on ne pourra jamais retrouver à l’identique ce plastique utilisé.

これは少し特殊で、裏側が釘で留められていて、鍵盤のコーティングがキーを本当にぐるりと囲んでいます。これはかなり珍しいことで、使われているこのプラスチックを全く同じものとして復元することは決してできないでしょう。

pointé:木工や楽器修理の用語で「釘(pointe)で留められている」という意味です。

faire le tour:「〜の周りをぐるりと囲む、一周する」。

ce qui:前の文章全体を受ける関係代名詞で、「(そして)そのことは〜」という意味。

à l’identique:「全く同じように」という副詞句。retrouver à l’identique で「完全に同じ状態で復元する」という意味になります。

単語メモ

restaurer ~を復元する、修復する

Le Bon Coin フランスのオンライン掲示板サイト(日本のメルカリやジモティーのようなもの)

remonter le moral 士気を高める、元気づける

sauter sur ~に飛びつく(sauter sur l’occasion = 好機に飛びつく)

abordable (価格が)手頃な、手の届く

exemplaire (同じ製品の)個体、台数

robuste 頑丈な、丈夫な

compter sur ~を頼りにする、~をあてにする

démontage 分解、解体

se rapprocher ~に近づく(se rapprocher de l’état d’origine = オリジナルの状態に近づく)

revêtement コーティング、外装、表面を覆うもの

tel quel そのままの状態で、ありのままで

éclat (木材やプラスチックなどの)欠け、ひび

facteur de piano ピアノ技師/調律・修理をする職人

reconstitution historique 歴史再現イベント

authenticité 真正性、本物らしさ

au lieu de + 不定詞 〜する代わりに

décider de + 不定詞 〜することを決める

プチ文法:否定の ne の省略

この動画は、話し言葉ならではの特徴がよく出ています。そのひとつが否定の ne の省略です。

たとえば、テオさんはこう言っています。

Au début j’y crois pas en fait.

本来は je n’y crois pas ですが、話し言葉では ne が落ちて「ジクロワパ」のように聞こえます。

もうひとつ。

Je pouvais pas m’empêcher d’y penser.

こちらも je ne pouvais pas が本来の形ですが、ne が省略されています。

ne の省略は、生のフランス語会話ではごく普通に出てきます。でも書く時はちゃんと ne を入れるのが原則です。聞き取りの時に「あれ、否定なのに ne がない?」と思ったら、口語の省略だと考えてください。

また、この動画には en fait(実は、というか)や bah non(いや違う)など、ネイティブ特有のつなぎ言葉もたくさん出てきます。これも聞き取りのハードルを上げている要因です。

ピアノの歴史・関連動画

ピアノの歴史を1分少々でコンパクトにまとめた動画を紹介します。

L’histoire fascinante du piano : De son invention à son évolution(ピアノの魅力的な歴史:誕生から進化まで)

1分25秒。

この動画ではピアノの誕生から現代までの進化をたどっています。簡単にまとめると:

■発明(1700年代初頭):イタリア人のバルトロメオ・クリストフォリが、音の強弱をつけられないチェンバロ(フランス語ではクラヴサン)への不満から開発しました。「弱く、そして強く弾けるチェンバロ」という意味の名前がつけられ、それが「ピアノ」の語源です。

■19世紀の大きな進化:内部のフレームが木製から鉄製に変わり、より力強い音が出せるようになりました。19世紀末には現代のグランドピアノが誕生します。

■20世紀から現代へ:エレクトリックピアノの登場で持ち運びが簡単になり、現在はオーケストラ全体の音を再現できるデジタルピアノへと進化しています。

関連記事もどうぞ

かわいいフランス語教えます~その37 楽器

音楽、楽譜にまつわる単語:かわいいフランス語教えます~その38 

かわいいフランス語教えます~その39 音楽~楽曲

ロックミュージックを迎え入れたルーブル美術館。

*****

戦時中のスタインウェイ・ピアノの修復についての動画を紹介しました。

私も幼い頃、ピアノを習っていました。手が小さいため演奏者向きではありませんが、ピアノ音楽を聴くのは大好きです。

現代のポップミュージックでは、ピアノの音を打ち込み(プログラミング)で作るのが主流になっています。最近はAIがその演奏に人間らしさを加えてくれるそうで、譜面データを読み込ませるだけで、プロのピアニスト特有の「溜め」や「強弱の呼吸」がある演奏を生成できるようです。

さらに、今のパソコン用のピアノ音源は、スタインウェイなどの最高級グランドピアノの音を一音ずつあらゆる強さで録音(サンプリング)しているそうです。

テオさんのように古い珍しいピアノの音を丁寧に蘇らせる仕事は、AIによる完璧な再現や効率とは対極の世界にあります。どちらも、ピアノの音を大切にしているという点では同じで、おもしろいなと思いました。

それでは、次回の記事をお楽しみに






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