今日、ご紹介するフランス語のことわざはこちらです。
山羊とキャベツの両方に気を配らねばならぬ
Il faut ménager la chèvre et le chou.
「山羊とキャベツの両方に気を配らねばならぬ」
ちょっと唐突な感じがするかもしれません。
ヤギとキャベツ・・・
冷蔵庫に入っているキャベツがくさる前に、早めに使い切ろうと気を配ることはありますね。
でも、ヤギっていったい?
ヤギにどうやって気を使ったらいいのか?
実はこのことわざは大昔の農民が、山羊と、オオカミと、キャベツをのせたボートで川を渡るとき、山羊もキャベツも食べられないように苦労していた、という逸話から来ています。
現在、このことわざは「対立する二つのものを欲しがる人を両方満足させるべきである」という意味で使われます。
対立する二つのもの。
たとえば、あなたがいろいろな店の入っているビルの管理人だとします。
そのビルの冷暖房は全体的にするセントラルヒーティングだとします。
そして、1階に入っているお弁当やさんは、暑いからクーラーを入れてくれとあなたに頼む。
しかし5階の北向きの角にある呉服屋さんは、寒いからヒーターを入れてくれとあなたに頼む。
こんなとき、一体温度を何度に設定するべきなのか。
またしてもうまいアナロジーが思いつきませんが、だいたいそんな感じでしょうか?
あるいは、あなたに小学生の息子が二人いたとします。
その二人が殴り合いの喧嘩をします。
あなたは仲裁するとき、どちらか一方の肩を持ってはいけないのです。
両方が納得する形で喧嘩をおさめなければなりません。
そのような時に登場するのがこのことわざです。
一般的には「仲裁は両方を満足させなければならない」という意味で使われることが多いです。
よくわかる!フランス語の文法解説
★単語の意味
il faut ~しなければならない
ménager ~を大事に扱う、~をいたわる
la 女性名詞につく定冠詞
chèvre ヤギ
et ~と
le 男性名詞につく定冠詞
chou キャベツ
★直訳
「山羊とキャベツを大切にしなければならない。」
★il faut
faut という動詞の不定法(辞書にのっている形)は falloir です。この動詞はいつも il を主語にした非人称表現の形をとるので、
il faut ~ ~しなければならない という形で覚えておけばよいです。
ちなみに否定形の
il ne faut pas ~ は「~すべきではない、してはいけない」という禁止の意味になり、「~する必要はない」という意味にはなりません。
ことことわざは、処世術を説くものです。
特に中間管理職の人など、AとBの間にたつ立場の人にに求められるスキルですね。
両方の顔をたてるのはよいことですが、文脈によっては
「日和見主義である」という悪い意味でも使われます。
常に全員にとってベストな選択をするのはなかなか難しいものです。あなたはキャベツをとるか、山羊をとるかで、悩んだことがありますか?
どっちつかず、旗幟を鮮明にしない、ということでしょうか。
似たような expression に réponse normande, répondre en normand というのがあります。 Oui ou non ? と聞かれたとき、Eh ben que oui eh ben que non 「そうとも言えるし、そうでないとも言えるな」、と応えるのがノルマン式で、よく言えば、慎重な、悪く言えば、曖昧な、逃げ口上とされています。Réconciliation normande はしたがって 見かけの, うわべだけの仲直り reconciliation simulée のようです。
樋沼さん、こんにちな。いつもコメントありがとうございます。
へ~ノルマン式の返答という言い方があるのですね。ノルマンディーの人ってどっちつかずなタイプなんでしょうか。
教えてもらった表現、メモします。
ついでに言いますと、日本語の「旗幟を鮮明にしない」も知りませんでした。
もっと勉強しなければ・・・
旗幟を鮮明にするは英語で show the flag と言うのではなかったでしょうか。
樋沼さん、こんにちは。再度のコメントありがとうございます。
旗幟は旗とのぼりのことなんですね。
旗幟鮮明 きしせんめい という表現を学びました。