フレンチポップスの訳詞をするシリーズ。今回は『カプリの恋の物語』という曲をご紹介します。1965年のHervé Vilard(エルヴェ・ビラール)の大ヒット曲です。
オリジナルのタイトルは Capri c’est fini (カプリ、それは終わった)です。邦題は、「カプリ」だけの時もあるようです。
カプリはイタリアのナポリ湾にある島です。
Capri c’est fini カプリ、もう終わった
早速お聞きください。
マネキンのようなモデルのお姉さんは何のために登場しているのでしょうか?
それでは訳詞に挑戦!
Nous n’irons plus jamais
Où tu m’as dit je t’aime
Nous n’irons plus jamais
Tu viens de decider
Nous n’irons plus jamais
Ce soir c’est plus la peine
Nous n’irons plus jamais
Comme les autres années
僕たちはもう決して行かない
君が、僕を愛していいるといった場所に
僕たちはもう決して行かない
君は決心したんだし
僕たちはもう決して行かない
今夜、そんな必要はなくなった
僕たちはもう決して行かない
他の年みたいには
☆Capri, c’est fini
Et dire que c’était la ville
De mon premier amour
Capri, c’est fini
Je ne crois pas
Que j’y retournerai un jour
Capri, c’est fini
Et dire que c’était la ville
De mon premier amour
Capri, c’est fini
Je ne crois pas
Que j’y retournerai un jour
カプリ、もう終わった
その街は
僕の初恋の場所だったけど
カプリ、もう終わった
いつかそこに戻るなんて
ありそうにない
カプリ、もう終わった
その街は
僕の初恋の場所だったけど
カプリ、もう終わった
いつかそこに戻るなんて
ありそうにない☆
僕たちはもう決して行かない
君が、僕を愛していいるといった場所に
僕たちはもう決して行かない
これまでみたいに
時々、僕はきみに
「やり直そうよ」言いたくなる
でも、勇気がない
ノーと言われるに決まってる
☆~☆ 繰り返し
僕たちはもう決して行かない
でも僕は忘れないと思う
君がいいよ、言ってくれた
はじめてのデートのことを
僕たちはもう決して行かない
これまでみたいに
僕たちはもう決して行かない
もう決して、絶対に
☆~☆ 繰り返し
※歌詞はこのあと貼っている、歌詞付き動画を参照してください。
単語・表現メモ
c’est plus la peine は ce n’est pas la peine(~するには及ばない)のバリエーション
dire que + 直接法 「~だとは」「~というのに」驚き、憤慨、動揺を表して、強調する言い方。
Dire qu’il est onze heures et qu’il n’est pas encore rentré.
11時だというのに彼はまだ戻って来ないんだ。
単語はあんまり難しくないです。文法ポイントは1人称が主語のときの単純未来形で、意志を表すこと。
Nous n’irons plus jamais
僕たちは2度と行かない
エルヴェ・ビラール(1946生)
エルヴェ・ビラール(Hervé Vilard)はフランスのシンガーソングライター。自作のこの歌でデビュー、これが大ヒットしました。
彼は生まれてすぐに父親が家を出ていってしまい、ほどなくして母親も養育権を失い孤児院や里親のもとで育つという不幸な生い立ちです。
エルヴェが生まれたのは、母親が病院にむかうタクシーの中。母親はヴァリエテ劇場の売り子さんでした。父親には1度も会ったことがないそうです。
6歳のとき、母親が養育権を失い、パリから離れた孤児院に送られます。エルヴェ少年は家に帰りたくて孤児院から何度か脱走を試みました。
その後、里子を預かる家庭を転々とし、11歳のとき、親切な牧師さんと出会い、この牧師さんが父親がわりになってくれて、愛情を得ることができました。
エルヴェは、この牧師さんにすすめられ、10代半ばでパリに出て職を探しました。
バーなどで働いていた時、画廊のオーナーで、レコードも販売している親切な人に出会い、次第に音楽業界に近づきます。そして19歳のときに出したこの曲が大ヒットしたのです。
彼は今でも現役です。
Capri, c’est fini 歌詞付き動画
この歌は Capri, c’est fini の Capriとfiniの箇所をべつの言葉に入れ替えていろんなパロディが作られています。
マルグリット・デュラス(Marguerite Duras)の「愛人 ラマン 最終章」
作家のマルグリット・デュラス(1914-1996)がこの曲を好きで、ヴィラールにファン・レターを何通か送ったとヴィラールの自伝に書かれているそうです。
デュラス自身もこの曲のことを著作に書いています。そして、デュラスの伝記映画、Cet Amour-là でこの曲が使われています。
この映画は晩年のデュラスを描いたもので、原作は、デュラスより38歳年下の当時のパートナー(主導権は完全にデュラスが握っていましたが)、ヤン・アンドレア(1952-2014)が書いた本です。
この映画について、監督や主演のジャンヌ・モローがインタビューを受けている動画です。
1991年制作の、L’amant というデュラスの少女のころの自伝的小説をもとにした映画の邦題が、「愛人・ラマン」だったので、この映画も「愛人 ラマン 最終章」となったのでしょうね。
カプリの恋の物語~ポール・モーリアのアレンジ
最後に、ポール・モーリアのインストゥルメンタルをご紹介します。
若い頃のエルヴェ・ビラールはちょっとジャニーズ系のかわいい(?)感じですね。それもあってマルグリット・デュラスが気に入ったのかもしれません。それでは次回の歌の記事をお楽しみに。
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