物語のタイトルをご紹介するシリーズ、第13回は『フランダースの犬』です。
『フランダースの犬』のオリジナルは英語
この作品は英国の作家、マリー・ルイーズ・ド・ラ・ラメー(Marie Louise de la Ramée)が1872年に発表した “A Dog of Flanders” という英語の小説です。
話の舞台がフランダース(Flanders フランドル)というベルギーのアントワープのすぐそばの寒村なので、なんとなくオリジナルはフランス語というイメージを持っている人も多いのではないでしょうか?
作者はアントワープに旅行したとき、この話のインスピレーションを得ました。また、彼女は大変な犬好きだったそうです。
物語のクライマックスはクリスマスイブなので、今回とりあげてみました。
フランダースの犬をフランス語で
Un chien des Flandres
un 男性名詞につく不定冠詞
chien 犬
des 前置詞 de + les の縮約
Flandres フランドル(フランダース)地方 北海に面する地方で、現在のベルギー西部、フランス北部にまたがります。
※フランドルは La Flandre と Les Flandres という両方の表記があります。
この話のおもな登場人物は犬のパトラッシュと飼い主の少年のネロ、ネロのおじいさん、ネロの友だちの女の子アロアなど。
サイドストーリーもいくつかありますが、そういうのは全部はしょって簡単にあらすじを書きます。
フランダースの犬 あらすじ~penバージョン
フランダース産の犬はからだが大きく丈夫で、愛玩動物ではなく、荷車をひくといった労役を課せられています。
犬のパトラッシュは飼い主にこきつかわれて、とうとう荷車をひいてるときに、気を失ってしまいます。エサもろくに与えられず、鞭でビシバシやられていたからです。
飼い主は「役立たずめ」と草の中に放置しました。それをあるおじいさんが見つけてやさしく介抱します。もともと頑丈な犬なので、そのうち元気になり、おじいさんの家の犬となります。
おじいさんは、ネロという孫と小屋に住んでいました。
ネロは2歳でお母さんが亡くなり、80歳のおじいさんに引き取られたのです。
おじいさんはナポレオン戦争で怪我をし、片足が不自由。牛乳をみんなに配達して生計をたてています。というか、生計はたっておらず、ネロと2人何日も食べないということがありました。着ているものはもちろんボロボロ。
ネロとパトラッシュは大の仲良しになります。
6歳になると、ネロはおじいさんに替わって、荷車で牛乳を配達するようになります。パトラッシュも一緒です。まあ、おじいさん、86歳ですからね。ちょっと無理ですね。
ネロは正直で、とても素直なよい子。実はルーベンスの絵が大好きです。ルーベンスはアントワープ出身の画家です。生存していたころはここはスペイン領オランダでしたが。
アントワープのセントジャック大寺院というところに、ルーベンスの絵があるのですが、ネロはこれが大好きでした。
キリスト昇架:Elevation of the Cross (1611)
十字架降架:Descent from the Cross (1612)
ふだんはお金を払わないと見えないので、門番が鍵を書き忘れたときなどに、こっそり忍び込んで見ています。
ネロ自身も絵の才能があり、村の18歳未満の若いアーティストの絵画コンテストに出品するために、一生懸命絵を描いていました。
もし一等に選ばれると、賞金がもらえます。貧乏だったネロはこのコンテストにかけてみようと思いました。
おじいさんはリューマチにかかってしまい、クリスマスが来るというのに、家賃滞納で小屋を出なければならず、食べ物を買うお金もなく、またミルク売りの仕事もほかの業者にとられてしまっていたのです。いつにもまして寒さが身にしみます。
絵は12月1日に会場に運び込み、24日に結果が発表されます。
クリスマスの1週間ほどまえにおじいさんが亡くなり、ネロとパトラッシュの二人きりになりました。
24日の発表の日。ネロの絵は選ばれませんでした。選ばれたのはアントワープの金持ちの息子の絵でした。
絶望したネロはルーベンスのある大寺院へ。あとを追うパトラッシュ。翌朝、村の人々は冷たい聖堂のルーベンスの絵の足元に、抱き合って死んでいる2人を見つけました。
関連動画
★1975年の日本のアニメのフランス語版のテーマソングです。
★1999年のイギリス映画からルーベンスと会うシーン(もちろんネロの空想、あるいは幻です)
この話は英語のせいか、ベルギーでもフランスでもそれほど有名ではないそうです。しかし、この話を読んで、観光に来る人が多いので、現地でも除々に知られるようになったとか。
私は子どもの頃、絵本で読みました。犬が可愛かったです。原作の犬はネロと同じ年で、老犬なのですが、絵本ではそれほど年とった感じはありませんでした。
また、ルーベンスの絵がひじょうに大切な役割を果たしますが、子どもときはそれも知らなかったです。
今読むと、当時の時代背景などもわかり、別の気づきがあるかもしれません。
【参考】
★原文はProject Gutenbergで読めます。
⇒A Dog of Flanders by Ouida – Free Ebook
Ouidaは作者の別名。
★日本語版~青空文庫(菊池寛訳)
⇒マリー・ルイーズ・ド・ラ・ラメー Marie Louise de la Ramee 菊池寛訳 フランダースの犬 A DOG OF FLANDERS
それでは、次回の「タイトルでフランス語」をお楽しみに。
この記事へのコメントはありません。