「赤い靴」という物語のタイトルをご紹介します。童話では「赤いくつ」とひらがなで書かれることも多いですね。
作者は「マッチ売りの少女」や「人魚姫」と同じデンマークのアンデルセンです。
「赤い靴」のフランス語のタイトル
「赤い靴」はフランス語で
Les Souliers rouges
または Les Chaussures rouges
souliers スリュは靴、短靴。
この単語は古風で、現在は「靴」はchaussuresという単語を使うことが多いですが、小説などにはよく出てきます。
souliers à talons hauts ハイヒール
souliers vernis エナメルの靴
rougeは 赤い 靴が複数なので複数のSがついています。
英語はThe Red Shoes
子どものころ、文字の多い本でこの話を読んだ記憶があります。原作はかなり残酷な展開です。
あらすじを簡単にご紹介しますね。
「赤い靴」のあらすじ
カレンという貧しい女の子がいました。だいたいマッチ売りの少女と同じくらいの年頃です。見た目はなかなかかわいい子です。
マッチ売りの少女も冬なのに素足で歩いていましたが、カレンも貧しくてはだしで登場。
お母さんが亡くなり孤児になります。はだしで葬式に出ていると、お金持ちの年配の奥様が、彼女を見そめ、養女にします。
カレンは奥様の家で、お裁縫や読み書きを学びながら幸せに育ちます。
カレンの堅信礼の日が近づいてきました。
堅信礼というのは、辞書によると自分の信仰を告白し、教会の正会員になる儀式。堅信礼を受ける年齢は教会によっていろいろあるようですが、だいたい10~15歳ぐらい。
この堅信礼に、はいていくのに、カレンは自分の好みで、赤いエナメルの靴を義理のお母さんに買ってもらいます。
教会にそんな派手な靴をはいていくのは言語道断なのですが、奥様は目が悪くて、色がわからなかったのです。
教会に赤い靴をはいていったカレン
この靴をはいて教会へ行ったのが不幸の始まり。神様よりこの靴のことで頭がいっぱいになります。
みんなが、私のきれいな靴を見てる、とか。
教会の外でひげの長い老兵に出会い、「きれいなダンス靴じゃの~」とほめられたとたん、赤い靴が勝手にステップを踏み始めます。
その時は、まわりの人に助けてもらって、なんとか家に帰り、靴を戸棚にしまうのですが、カレンは赤い靴のことが忘れられなくなります。
見るだけならよかろうと戸棚から取り出したら、やはりはいてしまい、さらに舞踏会にまで行ってしまいます。
やさしい奥様が病にふせっているというのに。
舞踏会の帰りに靴が勝手に森へ踊って行き、そこで例の老兵に出会い、また「きれいな靴じゃの~」と言われたら、ますます靴が調子に乗って、踊り始めます。
そして墓地のほうへ。手に剣を持った天使が怖い顔をして「おまえは死ぬまで、一生、踊り続けろ! 昼も夜も、雨の日も風の日も。そしておごった子どもたちの家の戸口に行くのだ!」とカレンに言い放ちます。
踊り続けるカレン
これがダメ押しになってカレンは踊り続けます。どんなに靴を脱ごうとしても、靴下ごと、はぎとろうとしてもダメ。
最後は首切り役人に足を切り落としてもらいます。
斧でね。
痛い話です。カレンは赤い靴を欲しがったことを反省し、教会に行こうとします。今は木の義足をつけています。
でも教会に行こうとすると、切り落とした赤い靴をはいた自分の足が目の前を通り過ぎ、邪魔をするのです。
カレンは牧師館の下女の仕事につき、まじめに働いて、教会に行けないのなら、せめて自分の部屋で神様にお祈りしよう、と思います。
泣きながら部屋でお祈りしていたら、以前墓地であった天使があらわれます。
今度は手にバラの花のついた緑の枝を持っています。天使がその枝で天井をさわると星が散って、せまい部屋が神々しい教会に変わります。
オルガンの響きや合唱の声の中で、幸福感でいっぱいのカレンは窓からさしこむやわらかい光ととともに天にのぼっていきます。
おわり。
虚栄心より信仰心を
この話は一般に虚栄心をいましめたり、信仰心を持つことを諭すものとして知られています。
でも、ほとんど薬物依存の話ですね。
一度禁断の赤い靴をはいてしまうともう止められません。
首切り役人の足を切り落としてもらったあとも、切り取った足の亡霊を見ます。
そして最後は死にます。
死ぬときは幸福感に包まれているようですが。
アンデルセンが「赤い靴」の着想を得たのは子どもの頃
アンデルセンは子どものとき、金持ちのご婦人から頼まれた知り合いが、ご婦人の絹を使って赤い靴を作ったことからこの話のヒントを得たそうです。
その人が絹と、手持ちの皮を使って、苦心してすてきな靴を作ったのに、ご婦人は「こんな靴はただのゴミ。よくも私の絹を台無しにしてくれたわね!」と言いました。
むっとした知り合いは「じゃあ、私も私の皮を台無しにしましょう」と、靴をはさみでばさっと切ってしまったそうです。
きれいな赤い靴がはさみで切られるさまがよっぽど印象に残ったのでしょうね。
もしかしたら、足首を切り落とす場面を先に思いつき、そこへ至るストーリーを考えたのかもしれません。
この話をもとに作られた1948年のThe Red Shoesというバレエ映画が有名です。
予告篇2分40秒(英語、日本語字幕つき)
★関連サイト
青空文庫の「赤いくつ」
ハンス・クリスティアン・アンデルセン Hans Christian Andersen 楠山正雄訳 赤いくつ DE RODE SKO
朗読(フランス語)はこちらで聞けます⇒Les Souliers Rouges – Hans Christian Andersen | Livre audio gratuit | Mp3
★次のお話はこちらから
⇒第10回『みにくいアヒルの子』
★このシリーズを最初から読む方はこちらから
⇒第1回『白雪姫』
赤いかわいい靴は女の子のあこがれです。
赤い靴は、不思議な魔力を持っているようです。オズの魔法使いのドロシーの靴も赤いし、海のそばで赤い靴をはいていた女の子は偉人さんに誘拐されました。
私がこどもの頃はエナメルの靴はお出かけ用の上等な靴でした。それに赤という色が加わるともう最強です。
でも、靴としては目立ちすぎて、合わせる服選びが難しいかもしれません。
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