2025年の夏、エルメスの「バーキン」の最初の一歩となったプロトタイプ(最初の試作品)が史上最高額で落札されたという1分のニュースを紹介します。
タイトルは、Premier sac Birkin : le mythe Hermès adjugé 8,6 millions d’euros(最初のバーキン:エルメスの神話が860万ユーロで落札)
860万ユーロはおよそ14億円ぐらいです。ハンドバッグとは思えない価格です。
バーキンは、エルメスが1984年に作った最高級ハンドバッグで、女優ジェーン・バーキンとの出会いから誕生しました。
バーキンの落札
1分。フランス語の字幕があります(ハードサブです)。
トランスクリプション
Un sac à 8,6 millions d’euros.
Ce jeudi, un Birkin de la marque Hermès est devenu le sac à main le plus cher jamais vendu au monde.
Mais ce n’est pas n’importe quel Birkin : c’est le tout premier.
Une création née en 1984 d’un vol Paris-Londres, d’un échange entre Jean-Louis Dumas, alors à la tête d’Hermès, et sa voisine de siège, Jane Birkin.
Jeune maman à l’époque, la chanteuse et actrice anglaise se plaignait de ne pas trouver de sac à la fois pratique et élégant.
Résultat : il réalise un fourre-tout en cuir noir avec un espace dédié aux biberons.
Gravé des initiales J.B., ce prototype unique est aujourd’hui une légende : bandoulière fixe, coupe-ongles intégré, anneaux métalliques fermés et même des traces d’autocollants sur le cuir patiné.
Il devient le sac à main le plus cher jamais vendu aux enchères dans le monde, et le deuxième objet de mode le plus précieux vendu aux enchères derrière les souliers rouges du “Magicien d’Oz”, vendus 32,5 millions de dollars en 2024.
和訳
860万ユーロ(約14億円)のバッグ。
今週木曜日、エルメスというブランドの「バーキン」が、世界で売られた中で最も高価なハンドバッグとなりました。
しかし、これはただのバーキンではありません。まさに最初の一つ(プロトタイプ)なのです。
1984年、パリ・ロンドン間の機内にて、当時エルメスのトップを務めていたジャン=ルイ・デュマと、隣の席に座っていたジェーン・バーキンとのやり取りから生まれた作品です。
当時、若い母親だったこのイギリス人歌手・女優は、実用的でエレガントなバッグが見つからないとこぼしました。
その結果、彼は哺乳瓶専用のスペースのある黒革のなんでも入れられるバッグを制作したのです。
イニシャル「J.B.」が刻印されたこの唯一無二のプロトタイプは、今日では伝説となっています。
固定式のショルダーストラップ、組み込まれた爪切り、閉じられた金属リング、さらには使い込まれた革の上にはステッカーの跡さえ残っています。
それは世界で最も高額で落札されたハンドバッグとなり、 2024年に3,250万ドルで売却された「オズの魔法使い」の赤い靴に次いで、オークションで販売された中で2番目に価値のあるファッション・アイテムとなりました。
単語メモ
adjugé:落札された
n’importe quel:どんな~でも、ここでは、単なる~ではない
vol:フライト
se plaindre de:~について不満を言う
fourre-tout:なんでも放り込めるバッグ
biberon:哺乳瓶
bandoulière:ショルダーストラップ
coupe-ongles:爪切り
autocollant:ステッカー、シール
patiner:古色をつける cuir patiné:使い込まれて味の出た革
enchères:オークション、競売 単数、enchère だと「入札」
今日のプチ文法:« Ne … pas n’importe quel »
形:ne + 動詞 + pas n’importe quel(le) + 名詞
意味:「どんな~でもいいわけではない」「単なる~ではない」
n’importe quel は「どんな〜でも」という意味ですが、これを ne … pas で否定して、特別なものであると強調します。
Ce n’est pas n’importe quel Birkin. それはただのバーキンではない。
Ce n’est pas n’importe quel moment. それはただの時間ではない。かけがえのない時間だ。
Je ne choisis pas n’importe quel objet. どんなものでも選ぶわけではない。吟味して選んでいる。
バーキン・関連動画
ジェーン・バーキン自身が語るバーキンの話
Jane Birkin nous racontait l’histoire du sac Hermès : le “Birkin”(ジェーン・バーキンがエルメスのバーキンについて語る)
30秒
内容のまとめ
・偶然の出会い:1984年、パリからロンドンへ向かう飛行機の中で、ジェーンは偶然、エルメスの会長ジャン=ルイ・デュマの隣の席に座りました。
・バッグの中身が散乱:彼女が使っていたカゴから中身が床にぶちまけられてしまいました。
・不満をもらす:それを見たデュマ氏に、ジェーンは「ポケット(仕切り)のある素敵なハンドバッグがどこにもない」と不満をもらしました。
・機内でスケッチ:その場でデュマ氏は「どんなバッグがいいか描いてみて」と言い、二人は機内で新しいバッグの構想を練り始めました。
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ジェーン・バーキンの『無造作紳士』(アクアボニスト)歌と訳詞
おわりに:rencontre fortuite(偶然の出会い)
ジャン=ルイ・デュマ氏とジェーン・バーキンは、飛行機の中で隣り合わせになるまで、お互いに面識はありませんでした。
二人が隣の席になったのは運命の出会いだと言われています。というのも、ジェーンが持っていた航空券がたまたまアップグレードされて、デュマ氏の隣の席になったからです。
カゴから中身が出てしまったとき、彼女は隣の人が誰か知らずに、「ポケット付きのバッグがないのよね」と話したのです。
スケッチは機内に備え付けの袋(吐く時に使うもの)に描かれたそうです。
消費者の不満がイノベーションの最大の種(たね)だと言われますが、それを絵に描いたようなエピソードですね。











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