パリで最も高級なエリアのひとつ、モンテーニュ通りに50年間暮らすマリーという女性を取材した3分のインタビュー動画を紹介します。
タイトルは英語で
She has lived in the most expensive district of Paris for 50 years(パリで最も高価な地区に50年間住んでいる女性)。
モンテーニュ通りは、シャネルやルイ・ヴィトン本店が立ち並ぶ超高級ショッピングストリートとして知られ、シャンゼリゼ通りのすぐ南に位置するパリの一等地です。
退職後は質素に暮らすマリーの語りから、昔ながらのパリの暮らしと今のラグジュアリーな現実のギャップが伝わってきます。
Marie, qui habite dans un quartier prestigieux de Paris
マリーの話:トランスクリプション
Cela fait 50 ans qu’elle vit ici. L’adresse est prestigieuse, mais l’intérieur de son appartement est plus simple.
— Voilà, ça, c’est ce qu’on appelle un “fous-y-tout”. C’est-à-dire que c’est un débarras. Et ça, c’est ma cuisine, qui est en plein désordre. Comme ça, vous allez pouvoir vous en donner à cœur joie. Voilà.
En 1964, la mère de Marie achète ce trois-pièces de 70 m² pour 180 000 francs, l’équivalent de 240 000 €. À ce prix-là, déjà à l’époque, il ne fallait pas espérer avoir la vue.
— Ma mère, quand elle est arrivée ici, vous ne pouvez pas savoir les complexes qu’elle avait. Parce qu’elle trouvait que cet appartement était minable. Et puis, elle l’a arrangé ensuite, et puis on s’y est fait. Et puis maintenant, moi, je trouve qu’il est très bien.
— Pourquoi ? — Parce que c’est petit.
Avec la montée en gamme du quartier, Marie, employée de banque retraitée, est en quelque sorte devenue une déclassée. Son dernier achat de grande marque, c’est ce sac, il y a plus de 30 ans.
— Ça va vous amuser. Alors, vous voyez, c’est le grand, grand, grand, grand classique. Il est très beau, et ce sac, pour moi, c’était quelque chose de fabuleux. Pour moi, c’est un mythe. C’est le sac star de Chanel.
— On peut faire ça aussi, on peut le porter comme ça. Il est quand même très joli.
Et depuis ce foulard, en l’an 2000, elle n’a plus rien acheté. Aujourd’hui, ce ne sont plus les vrais habitants du quartier, comme Marie, qui assurent la prospérité des boutiques de l’avenue Montaigne.
— Vous allez vous faire écraser. Moi, je ne vois rien, alors vous me dites.
À 75 ans, elle ne sort plus sans son aide à domicile. Depuis un demi-siècle qu’elle habite avenue Montaigne, la vieille dame est une mémoire du quartier.
— Qu’est-ce qu’il y avait là, avant ? Oh Seigneur, ça finit par être tellement défiguré que… Louis Vuitton, il y a combien de jours qu’ils sont là ? Ils sont revenus, ils sont là-bas, ils sont ici. Autrefois, ils étaient là-haut, ils bougent tout le temps. On finit par ne plus savoir.
J’étais en train de me dire : c’était qui avant ? Je m’accroche aux grilles. J’ai un cousin qui me taquine, il me dit : “C’est parfait, on t’a arrangé un parcours nickel”.
Alors, on fait semblant de regarder la vitrine et on se repose.
Ce qui manque à Marie, c’est la vie de quartier qui a disparu avec les petits commerces de proximité.
— Alors, on est à la boulangerie, là. Alors, regardez la boulangerie, je ne sais plus comment elle s’appelait. Je me souviens de la boulangerie quand elle est partie, et c’était des gens qui étaient déjà très âgés, propriétaires du fonds de commerce, qui ont dû vendre ça une fortune. Ils étaient ravis de s’en aller et de prendre une retraite confortable.
Désormais, pour Marie, qui n’est pas milliardaire, faire les courses de base, ce n’est plus si facile.
— Vous avez oublié votre baguette de pain ? Mes enfants, il faut faire 1 km pour aller la chercher. Vous avez besoin d’un timbre-poste et d’une enveloppe ? Il faut aller courir je ne sais où pour l’avoir. Ça serait beaucoup plus marrant de sortir dans la rue, de me poser dans un petit bistrot… Ça, c’est plus ça.
マリーの話:和訳
彼女がここに住んで50年になります。住所は一等地ですが、アパートの内装はずっと質素です。
— ほら、これがいわゆる「fous-y-tout(何でも放り込み)」ってやつ。つまり物置みたいなもの。そしてこれが私のキッチン、めちゃくちゃ散らかってるの。だから、遠慮なく楽しんで見ていってちょうだい。
1964年、マリーの母親がこの70㎡の3部屋のアパートを18万フラン(現在の約24万ユーロ)で購入しました。当時でもその値段では、眺めは期待できなかったのです。
— 母がここに来たとき、どれだけ引け目を感じていたかあなたには想像できないと思うわ。このアパートがみすぼらしいって思ってたの。でも、その後手を入れて、私たちも慣れた。今では私はとてもいいと思ってる。
— なぜですか?
— 小さいから。
周辺の高級化にともない、元銀行員のマリーは、ある意味「格下げ」された住民のひとりとなりました。彼女が最後に買った高級ブランド品は、30年以上前のこのバッグです。
— おもしろいと思うわよ。見て、すごくすごく、すごくクラシックなやつ。とっても素敵で、私にとってこのバッグは夢みたいなものだったの。神話みたいな存在よ。シャネルのアイコン的バッグなの。
— こういうふうに持つこともできるの。やっぱりすごく素敵よね。
そして、このスカーフを2000年に買ってからは、もう何も買っていません。今や、マリーのような地元の住民たちが、モンテーニュ通りのブティックを支えているわけではありません。
— ひかれちゃうわよ。私、よく見えないから、教えてね。
75歳の今、彼女はヘルパーなしでは外出しません。モンテーニュ通りに住んで半世紀、彼女はこの街の生き字引です。
— 昔ここに何があったかしら? ああ、もう、あまりに姿が変わっちゃって…。ルイ・ヴィトンは? 今どれくらいここにあるのかしら? 戻ってきたのよね、あっちにも、こっちにもある。以前はもっと上の方だったのに、いつも場所が変わってるの。
どこに何があったかわからなくなるわ。ふと思ったの、「ここって前は何だったっけ?」って。
手すりにしがみついて歩くの。従兄弟がからかうのよ。「完璧な散歩コースができたな」って。
だから、ウィンドウを見てるふりして休むの。
マリーが寂しく感じているのは、近所の小さな商店ともに消えた地域の暮らしです。
— あそこがパン屋だったのよ。パン屋を見て、名前はもう忘れたけど。
覚えてるわ、そのパン屋がなくなったときのこと。かなり年配だった御夫婦が店主で店をすごく高く売ることにしたの。引退して、快適な生活をするようになったわ。
今では、億万長者でないマリーにとって、日常の買い物ですら簡単ではありません。
— バゲットを買い忘れた? 子どもたち、1キロ歩かないと買いに行けないのよ。切手と封筒が必要? どこに行けば手に入るかもわからないから走り回らないと。
ほんとはね、通りに出て、小さなカフェでちょっと座る…そういうのがよかったのに。もう、そうじゃなくなったのよね。
単語メモ
prestigieux, prestigieuse(adj) 名声のある、高級な
une adresse prestigieuse
名高い住所
fous-y-tout(m) 何でも放り込む場所、がらくた置き場
C’est un vrai fous-y-tout ici.
ここは完全にがらくた置き場だ
débarras(m) 物置、不要品の部屋
On a tout mis dans le débarras.
全部物置に入れたよ
en donner à cœur joie(loc) 思う存分楽しむ、やりたい放題にする
Ils se sont donné à cœur joie pendant les soldes.
セールで思い切り買い物した
minable(adj) みすぼらしい、情けない
Il trouve son appartement minable.
彼は自分のアパートがみすぼらしいと思っている
la montée en gamme(f) (地域や製品の)高級化、上位移行
Le quartier a connu une montée en gamme.
この地区は高級化した
déclassée(adj/f) 格下げされた、地位を失った人
Elle s’est sentie déclassée dans son propre quartier.
彼女は自分の町で肩身が狭く感じていた
grande marque(f) 一流ブランド、高級ブランド
C’est un sac d’une grande marque.
それは一流ブランドのバッグだ
écraser(v) 押しつぶす、轢く
Attention, tu vas te faire écraser !
気をつけて、轢かれるよ!
aide à domicile(f) 在宅ヘルパー、訪問介護者
Elle sort toujours avec son aide à domicile.
彼女はいつも訪問ヘルパーと一緒に出かけている
Oh Seigneur(感) ああ神よ、なんてこと
Oh Seigneur, c’est catastrophique !
なんてこと、ひどいありさまだ!
défiguré(adj) (風景や顔などが)変わり果てた、損なわれた
Le quartier est complètement défiguré.
町の様子がすっかり変わり果ててしまった
grilles(f, pl) 柵、鉄柵
Elle s’accroche aux grilles pour marcher.
彼女は歩くとき柵につかまっている
fonds de commerce(m) 営業権、商売の権利
Ils ont vendu leur fonds de commerce.
彼らは営業権を売った
milliardaire(n) 億万長者
Elle n’est pas milliardaire.
彼女は億万長者じゃない
きょうのプチ文法:過去形の使い分け(半過去と複合過去)
この動画では、マリーが昔の出来事を語る場面がよく登場します。
このとき、複合過去(passé composé)と半過去(imparfait)が自然に使い分けられています。
たとえば:
Ma mère, quand elle est arrivée ici, vous ne pouvez pas savoir les complexes qu’elle avait.
(母がここに引っ越してきたとき、どれだけ劣等感があったか、あなたには想像できません)
elle est arrivée 複合過去で、はある時点で起こった出来事
elle avait 半過去で、はそのときの気持ちや状態の描写
✔ 複合過去: 一度きりの行動、完了した事実、変化の瞬間などに使用。
例:
Elle a acheté l’appartement.(彼女はアパートを買った)
Ils sont partis.(彼らは出ていった)
✔ 半過去: 習慣・継続・背景・状態の描写などに使用
例:
Elle vivait ici depuis longtemps.(彼女は長くここに住んでいた)
L’appartement était minable.(アパートはみすぼらしかった)
この2つの使い分け、難しいときもありますけど、こうした動画でニュアンスがつかめると思います。
⇒「まいにちフランス語」34:L56 2つの過去~半過去と複合過去
50年でアパート価格はどれだけ上がった?
マリーさんの母親がこのアパートを購入したのは1964年。
当時の価格は180,000フランで、現在の価値に換算すると約240,000ユーロ(※約4,000万円)と言われていました。
もしこの物件と同じ場所・広さ(70㎡)のアパートをいま購入しようとすれば、200万ユーロ(≒3億円以上)することも珍しくありません。
高級ブランド通りとして知られるモンテーニュ通り周辺では、1㎡あたり2〜3万ユーロという超高価格帯もあります。
この50年で、同じ不動産の価値が 7〜8倍に跳ね上がっているのです。
かつて、庶民が住んでいた場所は、今では一部の富裕層だけが手にできるラグジュアリー資産へと変貌しました。
※1ユーロ ≒ 166〜174円で計算。
関連動画:8平方メートルで500ユーロ
Paris : 500€ de loyer pour 8m²(パリ:8平方メートルで家賃500ユーロ)500ユーロはだいたい8万5千円。
3分。
アメリという女子学生がアパルトマンを探している動画です。内容を簡単にまとめると:
1. 部屋は狭いが設備は整っている
アメリが下見しているのはパリ、6階にある8m²の「chambre de bonne(メイド部屋)」。エレベーター付きという珍しい物件。テレビ、電子レンジ、シャワーなどが備え付けられており、見た目には学生向けに便利そうな部屋です。ただし、トイレは部屋の中ではなく廊下にあり、共用となっています。
2. 法律の規定により住宅手当が受け取れない
フランスの住宅手当(CAF)は、部屋の広さが9㎡以上であることが条件ですが、この部屋は8㎡しかないため、対象外です。アメリは家賃の一部を手当でまかなうつもりだったため、住んでいたら経済的に困るところでした。
3. オーナーは短期滞在者向けという建前で貸している
部屋のオーナーは、最初はあいまいな態度をとっていましたが、実際には短期滞在者にしか貸せない物件であることを認めました。にもかかわらず、募集広告には「学生向け」と書かれており、誤解を招く内容となっていました。
4. 現在は叔父の家に仮住まい中
アパルトマンが見つからず、アメリは現在、パリ在住の叔父の家で従妹と一緒に一部屋を使って暮らしています。しかし、叔父の都合もあり、長くは居られず、早急に新しい住まいを探さねばなりません。
5. 家族の支援を検討中
大学の新学期まであと2週間。レユニオン島にいるアメリの母親はアメリの家賃を少し払うことを考えています。しかし、航空券や生活費の負担が大きく、家族にとっても簡単な決断ではありません。
■関連記事もどうぞ
ガイア・ヴァイスの元アーティストのアトリエだったアパルトマン(1人の女の子、1つのスタイル)前編
*****
動画で紹介されている8㎡の部屋は、畳で言えば約4.8畳ほど。
私が今住んでいるベースメントの寝室が、ウォークインクローゼット込みでそれよりひとまわり小さい感じです。
室内にはテレビや電子レンジ、シャワーなどが揃っていて、ぱっと見は学生向けのミニマムな暮らしには十分そうですが、トイレは室外で共用。洗濯機や乾燥機も、もしかしたら共用かもしれません。バスタブもなくシャワーだけみたいだし。
8万5千円でこの広さ・設備というのは、やっぱり高いと感じます。
この記事へのコメントはありません。