2017年6月1日、アメリカのトランプ大統領が、選挙中の公約どおり、アメリカのパリ協定からの離脱を発表しました。
このニュースを伝える子ども新聞記事を訳します。
アメリカ合衆国が気候に関するパリ協定から離脱
Les États-Unis quittent l’accord de Paris sur le climat
アメリカ合衆国の大統領、ドナルド・トランプは木曜に、アメリカは温暖化を防止するための、世界ぐるみの取り組みに参加しないと発表しました。アメリカは、地球温暖化に大きな責任があるにもかかわらず。
彼は、選挙運動中に、このことを公約していました。6月1日に、正式にアメリカ合衆国は気候に関するパリ協定から離脱すると発表。彼にとって、気候の温暖化は存在しないのです。それは、アメリカの国力を妨害するための中国の介入にすぎないというわけです。
摂氏2度という制限 La limite a 2°C de plus
パリ協定は2016年にアメリカを含む195カ国によって締結されました。当時のアメリカ大統領はバラク・オバマでした。
この協定の目的とは?
二酸化炭素などの温室効果ガスの排出を減らし、地球の気温上昇を2度未満に抑えることです。この合意に到達するまで、話し合いは困難を極めました。
問題は石炭と石油 Le charbon et le pétrole accusés
というのも、温暖化ガスを排出する原因である石炭と石油の使用を減らし、やがてはやめなければならないからです。替わりに、太陽や風から作る持続可能なエネルギーを使うようにします。
トランプ大統領によると、こうすることは、石炭と石油に関連する工場の閉鎖をうながし、失業者が増えるのです。合衆国は、世界で2番めに温室効果ガスを大量に出しており、持続可能なエネルギーを導入することで、たくさんの雇用が生まれるにもかかわらず。
プランBもなければプラネットBもない! Pas de plan B ni de planète B !
トランプ大統領の発表後、世界中に波紋が起きました。2時間もたたないうちに、フランスの大統領、エマニュエル・マクロンは夜の11時半、テレビで声明を発表。
彼は、フランス語で、次に英語で、トランプ大統領の決定がいかに危険か訴えました。また、フランスはパリ協定を維持していくことを伝え、「プランBもなければプラネットBもない!」 « Il n’y a pas de plan B, car il n’y a pas de planète B ! » と念を押しました。
歴史的な過ち Erreur historique
世界各国でも衝撃が走りました。元、アメリカ大統領選の候補、ヒラリー・クリントンは「歴史的な過ち」だと言いました。
合衆国では、木曜に、複数の知事と市長が同盟を作り、パリ協定に残る意志を伝えました。しかし、アメリカが協定から抜けてしまうと、気温上昇を2度までに抑える目標は達成できないかもしれません。
とりわけアメリカは、この協定に調印した、世界でももっとも貧しい国々30億ドルの資金援助をしていたのです。そうすれば、貧しい国でも、クリーンエネルギーに変えていくことができるからです。
元記事 → Les États-Unis quittent l’accord sur le climat
単語メモ
gaz à effets de serre 温室効果ガス
énergies renouvelables 持続可能なエネルギー、クリーンエネルギー
entraîner ~を誘う、導く
intervention 発言
prendre la parole 話し始める、発言する
maintien 維持、保持
consternation (不意の変事による)茫然自失、驚愕、落胆
milliard 10億
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マクロン大統領の、プランBはない、という演説部分。
プラネットBとは、「2つめの地球」ということです。地球温暖化を防止するために、これ以外の方法はないし、そうしなければ、地球に未来はない、ということですね。
こちらは英語の演説です。
パリ協定とは?
2015年、パリで開かれたCOP21 で採択された地球温暖化防止に関する国際条約です。
温暖化がこれ以上進まないように、平均気温上昇を産業革命から、2度未満(理想は1.5度)に抑えるたことに参加国、195カ国が同意しました。
採択は2015年12月、発効は2016年の11月です。
COP21の説明はこちら⇒地球温暖化対策の正念場、COP21は11月30日からパリで開催
21世紀後半には、温室効果ガスの排出がゼロになるよう努力することになっています。
しかし、まだ具体的なルールはできていません。それまでは、温暖化防止対策は先進国が主導でやっていたのですが、発展途上国も協力して進められるように、たくさんの国が採択したところに意義があります。
アメリカは脱退すると言っていますが、正式な脱退通告はパリ協定発行の日から3年間できません。通告1年後に脱退が完了しますが、早くてもこれは2020年11月4日で、トランプ大統領の任期が切れるころです。
民主党の候補が次の大統領になれば、脱退はないかもしれません。
尚、パリ協定の上位の条約に、気候変動枠組条約というのがありますが、トランプ大統領はこの条約から脱退するとは言っていません。パリ協定で合意した内容をアメリカに有利になるように、再交渉するのかもしれません。
ドイツやフランスなどは、再交渉には応じないと言っています。
記事に出てきた、「地球温暖化なんてデマで、パリ協定は中国の陰謀」といった発言は、実際、以前、トランプ大統領が言っていたことです。しかし、この発言はあとで取り消されています。
しかし、一度、言ってしまったので、いくら取り消しても、このように話題にされてしまうのです。
離脱を発表する演説で、トランプ大統領は私はピッツバーグ市民の代表として大統領に選ばれたのであって、パリじゃありません、と言いました。
しかし、すぐにピッツバーグの市長が、「市の経済と未来のため、パリ協定の指針に従う」とツイートしています。
また、トランプ大統領は記者会見で、パリ協定で決まったことを各国がやっても、2100年までに、0.2度しか温度は下がらない、とも言っています。
こんなことを言ってしまったので、「地球温暖化問題がちゃんとわかっているのか?」と思われています。
そんなこんなで、アメリカでも、今回の離脱宣言に反発している人もたくさんいます。
オバマ大統領が尽力して、成し遂げたことを次々と反古にしているトランプ大統領ですが、今回のパリ協定からの脱退は、アメリカ国内のことだけにとどまらないので、衝撃が大きいですね。
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