今日、ご紹介するフランス語のことわざはこちらです。
よいことをすると返ってくるものだ。
Un service en vaut un autre.
情けは人のためならず
まず日本語のほうですが「人に親切にすると、それは自分に戻ってくる」という意味です。
だから、人に情けをかけるのは、その人のためじゃない、結局、自分のためなんだ、ということですね。
ただ、この「人のためならず」を「その人のためにはならない」というふうに解釈し、誤って使われることが多いです。そこで現在は、誤用ではあるけれども、そういう意味でも使ってもいい、といった位置づけになっています。
事実、私も小さいときはずっと「情けをかけるのはその人のためにならない、甘やかしちゃいけないんだ」と思っていました。
ですが、私、この「情け」を「お情け」と取り違えていたのです。
「情け」は「人間らしい気持ち、他人をいたわる心」です。思いやりともいえますね。
「お情け」は「特別の思いやりや、哀れみ」です。たとえば「試験にひどい点をとってしまったが、先生のお情けで及第した」というふうに使われます。
この「情け」と「お情け」はごっちゃになって使われることが多い気がします。
さて、人に親切にすると、めぐりめぐってその親切が自分にかえってくる現象は返報性の原理とか返報性の法則と呼ばれています。
人は何か恩を受けると、それを返さなければいけないと自然に思うそうです。
生まれつきそうなのか、社会的にそういうふうに教育されるのかは知りません。
特に日本人は「お返し」することにこだわる国民性があるので、この傾向が顕著ですね。
よくわかる!フランス語の文法解説
★単語の意味
service 手助け つづりはeで終わっていますが、男性名詞
en 中性代名詞 ここではserviceのこと(後述)
vaut < valoir ~に匹敵する、相当する、同じようなものである
autre 別の
★直訳
「一つの手助けは別の手助けに相当する」
★補足
中性代名詞のenについて
このenは不特定の人、物を表す名詞を受ける用法です。そして、その名詞の数量が限定されています。
enはもう1つのserviceのことですが、そのserviceは動詞vaut(valoir)の目的語なので、動詞の前に出ています。
そして、もう1つのserviceの「もう一つ」という数詞の部分は後ろに残っています。
このことわざをenを使わずに書くと、
Un service vaut un autre service. となります。
他の例)
Tu as des frères ? 兄弟いる?
Oui, j’en ai un. = j’ai un frère. うん、一人いるよ。
似た意味のことわざ
英語にも同じ意味のことわざがあります。
Scratch me (or my back) and I’ll scratch you (or your back)
わたしのかゆいところをかいてくれたらあなたもかいてあげます。⇒かゆいところをかいてくれたら、返そう。
One good turn deserves another.
よいことは、ほかのよいことに値する。
日本のことわざでは
「魚心(うおごころ)あれば水心(みずごころ)」が近いでしょうか。
これは、魚に水と親しむ気持ちがあれば、水もそれに応じる心がある、というなかなかおもしろいものです。
好意のやりとりを語っているので、少しニュアンスが違うかもしれません。べつに無理しなくても魚は水に親しんじゃうと思うのですが、いったいどういう経緯でこのことわざが生まれたんでしょうかね。
ほかのことわざはこちらから探せます⇒フランス語のことわざ・名言
ビジネスや、政治などで返報性の原理を利用するのは別として、人に何か親切にするとき、見返りを期待してやってる人って少ないと思います。
困ってる人を見ると、自分のできる範囲で手助けしてしまうのは、人としてごく自然なことではないでしょうか?
何かの都合で親切にできないとあとあとまで覚えていたりします。
自分の気持ちが許さないから親切にする、だから、情けは人のためというより自分のためなのかもしれません。
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