『みにくいアヒルの子』のフランス語のタイトルをご紹介します。
『マッチ売りの少女』、『人魚姫』、『赤い靴』と同じ、アンデルセン(1805-1875)の作品です。1843年に出版されたました。
Le vilain petit canard
le 男性名詞につく定冠詞
vilain (名詞の前で)醜い、見苦しい
petit 小さな
canard アヒル
白鳥は un cygne(シーニュ)
英語は The ugly duckling です。
ディズニーの1939年のアニメ映画より
★こちらは絵本の読み上げです。
小さい子どもむけにやさしいフランス語で書かれ、読み上げもゆっくりです。
40分ありますので時間のあるときにどうぞ。
『みにくいアヒルの子』のあらすじ penバージョン
一匹だけ兄弟ににていないアヒルが生まれた
ある夏の日、農場のうらで、お母さんアヒルが卵をあたためていました。1つだけ、みょうに大きな卵があり、なかなか生まれないのです。
近所のおばあさんアヒルが様子を見に来ます。
「まだ生まれないの?それにしても大きな卵ね~。もしかしたら七面鳥じゃないの?私、前に七面鳥の卵かえしたことあるんだけど、全然泳げないのよ。グワッって鳴けないし。きっと七面鳥よ。もうほっといて、他の子たちの面倒見たほうがいいわよ。」
よくしゃべる近所のおばあさんアヒル。
お母さんアヒルはせっかくここまであたためたのだし、もう少しあたためてみることにしました。
とうとう生まれました。
「あらま~大きな子。それに他の子に全然似てない・・。なんか、ブサイク。やっぱり七面鳥なのかも?」
お母さんアヒルはふと疑念にかられましたが、泳ぐときになればわかることだし、ま、いいや、と気持ちを切り替えました。
翌日、グワっと鳴いたり、泳ぐ練習をさせるため、おかあさんアヒルは子どもたちを池に連れていきました。
一匹だけやけに大きく、灰色で汚いアヒルも、水に入れてみたらそこそこうまく泳ぎます。
「ちゃんと泳いでる。見た目は今ひとつだけど、やっぱりわたしの子だったわ。」
おかあさんアヒルは安心しました。
でも、近所のアヒルはめざとく、この大きなアヒルを見つけ、
「あんた、不器量ね~。」
「ほんと、みっともないやつ!」
とひどいことを言います。
とあるアヒルにはいきなり首をかまれ(何もしていないのに!)、自分の兄弟にはどつかれます。自分よりちょっと先に生まれた雛鳥たちからは、羽ではたかれ、農場のお嬢さんには足でガシッとけられました。
それもこれも、このアヒルがみにくいからです。
来る日も来る日もいじめが続くので、思い余ってこのアヒルは家出をしました。
家を出てもいじめは続いた
野生の鴨(カモ)に、
「きみ、いったいどこのアヒル。なんでそんなへんてこりんな顔なの?」
「確かに、驚くほどみっともないやつだが、僕達の仲間をお嫁にくれと言わないなら、そばにいてもいいぞ。」
と言われます。傷つき、また別の場所へ。
雁(ガン)が二匹寄ってきて、空から、
「きみ、すごく変な顔だね。でも、そこが気にいった。よかったら、僕達と渡り鳥にならない?」
と誘われました。
初めて聞いた友好的な言葉。詳しく話を聞こうとすると、いきなり、銃声がとどろき、友達になれそうだった雁は、二匹とも池にぼとっと落ちて、死んでしまいました。
猟が始まったのです。
幸か不幸か、みにくいアヒルは、猟犬にも相手にされず、命拾いしました。
アヒルの放浪は続きます。どこへ言っても「みっともないやつ」とののしられ、いじめられます。アヒルはとことん落ち込みます。季節はめぐり秋から冬、そして、春になりました。
悲しみでいっぱいのアヒルは
「もう死ぬしかない」と思いました。
たまたま白鳥を発見
たまたまそばを白鳥が三羽、優美に泳いでいます。実は、以前、白鳥が群れをなして飛んでいるのを見たことがあり、アヒルはその美しい姿に感銘していました。
「あんなきれいな鳥のそばに、みっともない僕が行けば、きっと殺されるに決まってる。いっそ、殺してもらおう。」
アヒルは白鳥に近づきました。白鳥たちは、アヒルを見て、翼をひろげて、急いで近づいてきます。
「殺してください!」
アヒルは、頭をさげ、殺されるのをじっと待ちました。
ふと見ると、水の上に自分の姿があります。でも、見慣れたいつもの自分ではありません。
灰色のボディは、いつのまにか、美しい白になっていました。
そう、このアヒルは実は白鳥だったのです。
おわり。
次の「タイトルのフランス語」はこちら⇒第11回『シンデレラ』
■関連リンク■
青空文庫⇒ハンス・クリスチャン・アンデルゼン Hans Christian Andersen 菊池寛訳 醜い家鴨の子 DEN GRIMME AELING
オリジナルのフランス語訳⇒Le Vilain Petit Canard (Andersen-Soldi) – Wikisource
☆このシリーズを最初から読む方はこちらから
⇒第1回『白雪姫』
「みにくいアヒルの子」はアンデルセンの創作
これまで紹介したアンデルセンの作品は悲しい結末ですが、『みにくいアヒルの子』はハッピーエンド。だたし、この結末を幸せなものにするためなのか、その日までこのアヒルの子はとても悲しい思いをします。
この話は完全にアンデルセンの創作で、伝承の昔話をベースにしたものではありません。
アンデルセン自身がとても背の高い大男で、鼻も大きいですね。
30歳頃のアンデルセンの肖像画。前を向いてるから鼻が目立っていませんが・・・
彼は歌やお芝居が好きで、一番最初は歌手か俳優になるつもりでした。子どものとき、歌を歌うと上手なのに、姿形がまずいせいで、笑われたそうです。
そういう体験を書いたのかもしれません。
アンデルセンは、デンマークの王子の愛人の子どもだったのではないか、という説があります。
ただ、彼はすごく想像力が豊かだったから、靴屋さんの子どもでいても、このぐらいは楽に書けたと思います。
この話はハッピーエンドだから人気がありますね。
主人公のアヒルは特に何をしたというわけでもありません、どんなにいじめられても、じっと耐えて自分自身でいたから、最後に居場所を見つけることができたのでしょう。
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