セバスティアンの作品
今週の「虎と小鳥」はアートがテーマ。
パリの20区にあるこじんまりとしたギャラリーが舞台です。
アントワーヌがまずオーナーのバジル、つぎにそこで作品を展示していたアーティストのセバスティアンにインタビュー。
オーナーの話はともかく、アーティストの作品解説のフランス語は難しいですね。芸術作品の場合、作品に語らせて、自分は語る必要はないとも言えます。でもこのセバスティアンはとても雄弁でした。
サンプルビデオがありますのでごらんください。
オーナーへのインタビューです。
インタビューだからはっきり話してます。
★2015/01/24追記
「虎と小鳥のフランス日記」の配信が終了したため、サンプル動画も削除されました。あしからずご了承ください。
36秒ぐらいのところで話している姿が見える方が、今回、作品を解説してくれたアーティストのセバスティアンです。
きょうのメニュー
それでは、復習、行ってみよう!
サンプルビデオのスクリプトと和訳
ちょっと長いけどのせますね。le temps de は「今週の表現」です。
スクリプト
Bonjour à tous. Donc aujourd’hui je suis tout seul. Camille n’est pas avec moi.
Mais je vais vous emmener découvrir une galerie dans le 20ème arrondissement, qui s’appelle «L’œil du vingtième».
Dis-moi Basile, ça fait longtemps que vous avez lancé le…la galerie ?
«L’œil du vingtième»? La galerie «L’œil du vingtième» ? Ça fait deux ans.
Ouais.
Et on la codirige à deux, avec Paul Calauri.
D’accord.
Euh… on a commencé, c’était plutôt de la brocante.
Ouais.
Et le temps de réussir à mettre tout en place, à faire des programmations sur une saison, euh voilà ça fait euh…un an et demi qu’on fait des expos d’artiste contemporains.
D’accord.
Donc on, on…tout le lieu est consacré à un artiste, ou, quand on fait une expo thématique, à…deux, trois. Et euh…et c’est vraiment de montrer, défendre le travail de quelqu’un dont on aime le…la démarche, quoi.
Ouais.
Et euh…un boulot de galeriste, quoi.
和訳
皆さん、こんにちは。きょうは僕1人です。カミーユは一緒ではありません。パリ20区にある「ルイユ ドゥ ヴァンティエム (20の瞳)」を見に、皆さんをお連れしましょう。
それで、バジル、このギャラリーを始めてどのぐらい長いんですか?
「20の瞳」?ギャラリー「20の瞳」ですね?2年です。
はい。
ポール・カロリと2人で共同経営しています。
そうですか。
はじめはどちらかというと、古物を売っていました。
ええ。
すべての手配や、シーズンごとのプログラムを順調に展開させて、1年半ほど現代美術のアーティストの展覧会をしていますね。
なるほど。
この場所は1人のアーティストの展覧会をしています。または、2,3人のテーマ別の展覧会も。いいなと思うアプローチをしているアーティストの作品を紹介し、支持しています。
はい。
つまりギャラリーの仕事ですね。
単語メモ
emmener 連れて行く
découvrir 発見する、見つける
この単語は「見つける」という意味ですが、日本語では、「知る」と訳すほうがぴったり来る場合があります。
lancer 事業などを起こす、開始する
mettre … en place ~を確立する、実施する
démarche アプローチ
quoi ここでは間投詞 つまり、要するに
文法メモ
関係代名詞 dont
関係代名詞は2つの文をくっつけるもの。
くっつけるときに、それぞれの文の中で共通のもの(の一つ)を、その関係代名詞で置き換えます(だから代名詞)。
dontは特に、前置詞 de+何か を置き換えます。
c’est vraiment de montrer, défendre le travail de quelqu’un dont on aime la démarche
を関係代名詞を使わずに2つにばらすと
c’est vraiment de montrer, défendre le travail de quelqu’on.
on aime la démarche de quelqu’on.
共通しているのは de quelqu’on 誰か
ça fait longtemps que ~
~して長いですか?
インタビューのとき、「虎と小鳥」では必ず、この場所で開業してどのぐらいですか、これをどのぐらいやってますか、って聞いてます。
考えてみると、これはインタビューにおける定番の質問ですね。
Ça fait + 期間+que~「~してから~になります」という表現はこちらに集めていますので、さらに勉強したい方はごらんください。
⇒セーヌ川沿いの散歩~第12話 このエピソードでは、セーヌ川沿いでマッサージをしている人にやはりアントワーヌがインタビューしていました。
今週の表現2つとその解説
le temps de ~するあいだに
これはサンプルビデオの55秒で出てきます。
すべての手配や、シーズンごとのプログラムを順調に展開させて、1年半、現代美術のアーティストの展覧会をしていますね。(意訳です)。
オーナーのバジル
Et le temps de réussir à mettre tout en place, à faire des programmations sur une saison, euh voilà ça fait euh…un an et demi qu’on fait des expos d’artiste contemporains.
この長い文章を直訳すると
必要なものをすべて確立することと、ひとつのシーズンのプログラムを作ることが上手くいく間に、もう1年半、現代美術の展覧会をしています。
ここの le temps de は~するあいだに、という意味。
何をしていた間かというと、
le temps de réussir à mettre …
必要なことを手配するのがうまくいく間
と
le temps de réussir à faire …
プログラムを作るのがうまくいく間
の2つです。
直訳すると変ですけど、そういうことがうまくいって、気づくと現代美術のアーティストの展覧会をもう1年半ほどやってますね~、という感じ。
自分では発想できない文です。
On va dire いわゆる、いわば
アントワーヌがアーティストのセバスティアンに質問します。
それで、いわゆる「安全性のモチーフ」は他の作品にも見られますか?
アーティストのセバスティアン
Et… et pour le coup ce, ce travail sur euh, les motifs sécuritaires, on va dire, tu les as…on les retrouve dans d’autres œuvres ?
「安全性のモチーフ」って何?って思いますよね。
セバスティアンは、「現代の監視される社会における、危険なものを美しいもので包み込んで安全に見せている、その美しいものをモチーフにして作品を作っている」とのことです。その意匠は幾何学模様です。
書いてて、自分でも今ひとつわかりません^^;
封筒の中身が見えないように、よく白い封筒の裏側に細かい幾何学模様が印刷してあるのがありますよね?私は単にその模様がきれいだから、それを作品のモチーフにしているのだと思ったのです。が、現代社会をユーモラスに告発しているとか。
そこで、アントワーヌは、
「えーと、もしかして、解釈が間違っているかもしれませんが、そのいわゆる「安全性のモチーフ」は、他の作品にも使われていますか?」
と聞いています。
on va dire ほかの例
Il a échoué dans son projet, on va dire.
彼の計画は失敗した、ってことかな。
on va dire は会話では
on va dire ça comme ça.
まあ、そういうことです。
という形でよく使われます。
いかがでしたか?
今週は、ちょっと難しかったかもしれないですね。
画廊のオーナーのバジルが、「『20の瞳』はどのぐらいやってますか?」と聞かれたとき、「『20の瞳』ですか?」と2回聞き返しています。
初めてこの動画を見たとき、「ここに決まってるじゃん?」と不信に思いました。
実は、この場所は彼のお母さんの昔のアトリエです。バジルのお父さんもアーティストで、彼自身もアーティスト。
彼はいろんなギャラリーに縁があったのです。だから、「ここですか?」と確認していたわけ。
私は、彼が聞き返していることから、「他にも画廊があるのかな」と思いつくべきだったのです。
同時に、インタビューでも映画でも、話していることを理解するには、こういった周辺知識があるのとないのとでは、大きく違うものだ、と改めて思いました。
Sébastien Mettraux 氏は数年前から作品を発表してる人のようですが、みずからを現代アートの何派に位置づけているのでしょうか。それとも完全に一人だけで世間と縁を切って創作しているのでしょうか。アーテイストたちはは仲間と切磋琢磨スルケースが多くあるようで、したがって「何々派」という名称がついています。現代アートには数十の流れがあります。完全に孤独の人もいるのでしょうが、彼がどちらか、私にはわかりなせん。。
あるページに寄せられた解説の最後に、L’Oeil du vingtième に出品されていない作品が掲載されています。左側の正方形の絵と、全く同じ構図の絵を Marevich は描いています。それと全く同じ構図の絵を描いて、(色も同系等)、ナイフでキャンバスを真っ二つに切り裂いた作品を斎藤義重は発表しています。私は実際に見たことがあります。Mettraux 氏 はまだ自分の世界を模索しているようにも感じます。「危険なものを美しく包んで隠す」派かどうか注目したいところです。
樋沼さん、こんにちは。
この青い正方形の絵の絵の具(?)はセシウム137の解毒剤なんですね。
絵の後ろには処方箋まで添えるなんて、彼はユーモアのある人だなと思いました。
コメント、ありがとうございます。