バレンタインデーにちなみまして、きょうは「愛」に関する名言をご紹介します。
L’expérience nous montre qu’aimer ce n’est point nous regarder l’un l’autre mais regarder ensemble dans la même direction.
Antoine de Saint Exupéry(1900-1944)~Terre des Hommes (1939)
経験が私たちに教えてくれたこと。それは、愛するとは我々が互いを見ることではなく、共に同じ方向を見つめることなのである。
アントワーヌ・サン=テグジュペリ~人間の土地より
「人間の大地」
「星の王子さま」の作者、サン=テグジュペリの「人間の大地」の一節です。私はこの本を読んだことがありませんが、彼の15年の飛行士の体験を書いた随想です。
アマゾンの説明は
雪のアンデス山脈から奇蹟の生還を果たしたアンリ・ギヨメ、幾多の危険を賭して航空路を拓き、ついには郵便飛行に殉じたジャン・メルモーズ、そして、サン=テグジュペリ自身がリビア砂漠に不時着した極限状態の五日間…小説に分類することはできないにもかかわらず、1939年度のアカデミー小説大賞を受けた円熟期の傑作。
さて、きょうの名言の箇所だけ見ると、恋人や夫婦の話のようにも思えますが、本の内容を考えると、ちょっと違いますね。
直前の文章も入れて引用します。
Liés à nos frères par un but commun et qui se situe en dehors de nous, alors seulemen nous respirons et l’expérience nous montre qu’aimer ce n’est point nous regarder l’un l’autre mais regarder ensemble dans la même direction.
かなりの意訳⇒私たちが同じ場所にいないとき、共通の目的を持ち、同胞と結ばれることができさえすれば、私たちは息がつける。そして、経験は私たちに教えてくれた。愛するとは、互いを見つめることではなく、ともに同じ方向を見ることだと。
これは第8章(最終章)『人間』(VIII Les hommes)に書いてあります。
respirer (息をする)はもしかしたら「生きる」という意味合いかもしれません。
この本は恋愛の話ではなく、極限状態の彼の体験、どうやって生きていったらいいのか、そういうことが書いてありますので、ここでいうnous は同胞、あるいは僚友、といったニュアンスだと思います。
けれども恋愛関係にある人について言うこともできますね。ふつうの恋人たちは絶対お互いを見つめてぼーっとします。でも結婚して、地道に家庭を築いていこうとすれば、もう相手を見てばかりはいられません。同じ方向を見て、日々の生活を積み上げていかなければなりません。
よくわかる!フランス語の文法解説
単語の意味
きょうは単語が多いのでポイントだけ。
montrer 見せる、指し示す、教える
aimer 愛する
ne … point ~ない
Je n’ai point d’ami.
私には友人がいない
l’un(e) l’autre 互いに、互いを
彼らは愛し合っている
Ils s’aiment l’un l’autre.
la même direction
同じ方向
regarder は 見る ですが、注意して見ようと思って見ること。べつに見ようと思っていないのに勝手に視界に入ってくる場合は voir です。
英語の定番訳
Life has taught us that love does not consist in gazing at each other but in looking outward together in the same direction. (Translated by Lewis Galantière in “Wind, Sand and Stars”)
互いに見合うのではなく、外を見ること、とありますね。
ちなみに、英語のタイトルは”Wind, Sand and Stars”なのですが、なかなか素敵です。
「人間の大地」はほかにも箴言がふんだんに入っているとのこと。
いつか原文でチャレンジしたいですね。
★サン=テグジュペリの生涯についてはこちらの記事に書いています⇒「星の王子さま」の作者、サン=テグジュペリの生涯
サン=テグジュペリの書いた言葉をもう少し吟味するとnousで表された2人は、同じ場所にはいません。
飛行士ですから、別のところを飛んでいるのかもしれません。あるいは片方は安全なところにいて、片方は遭難しているのかもしれません。
同じ方向とは、同じ価値観、あるいは同じ目的、共通のミッションなどが考えられます。
そのような物を共有している人を見つけるのは難しいです。微妙なズレはいつもあるような気がします。ここにあるのは絶対的な信頼でしょうか。「愛する」ということは一筋縄では行きません。
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