イヴ・サンローラン(Yves Saint Laurent)という2014年のフランス映画の予告編のフランス語を紹介します。
20世紀を代表する有名デザイナー、サンローランの伝記映画です。
彼の映画はドキュメンタリーをあわせて、3本作られています。
イヴ・サンローラン 予告編
☆スクリプトと和訳☆
Tu émets la beauté, Yves ! On ne sait pas d’où vient un goût, un instinct. Personne ne vous l’apprend.
Ce jour-là, tu as rencontré la gloire… et depuis, elle et toi ne vous êtes plus quittées.
きみは美を放つ、イヴ。そのセンスや天分はどこから来るのかわからない。誰にも君を知ることはできない。
いま、君は栄光の中にいる。その輝きときみを分けることなど、もうできない。
Avec mes robes, avec mes dessins, j’essaie de m’exprimer, mais si on m’en empêche, je vais mourir.
Le talent, tu l’as. Le reste, je m’en occupe.
ドレスとデザイン画で、自分自身を表現しているんだ。それができなかったら、僕は死んでしまう。
きみには才能がある。ほかのことは僕にまかせてくれ。
J’ai quatre collections par an. C’est toi qui va les faire peut-être ? J’en peux plus. Je suis épuisé !
Mais tout ça, tu l’as voulu !
僕は年に4回コレクションがある。そうさせたのはたぶん君だよね? これ以上はできない。僕は疲れた。
でも、すべては君が望んだことだ。
Yves, regarde-moi ! Tu veux vivre ou tu veux mourir ? Parce que si tu veux mourir, moi, je peux rien faire pour toi.
イヴ、僕を見て。 きみは生きたいのか死にたいのか? 死にたいのなら、僕にはきみのためにできることは何もない。
Tu peux pas isoler Yves, comme ça.
Si je t’entoure de paravents, tout le monde va dire que je suis un Tyran.
こんなふうにイヴを孤立させることはできないわ。
まわりに囲いを作っていたら、みんなきみを暴君だと言うよ。
La mode, ce n’est pas un art majeur. Non, ce n’est pas un art du tout même.
Mais, pour la faire comme tu la fais toi, il faut être un artiste.
T’es un génie, Yves.
Sans toi, y aurait rien eu.
モードはメジャーな芸術じゃない。いや、芸術なんかじゃないんだ。
でも、君がやるようにモードを作るためには、芸術家になる必要がある。
君は天才だ、イヴ。
君なしでは、何もできなかった。
Espèce de raté !
Ils attendaient tellement. Je pouvais que les décevoir.
大失敗さ!
みんな熱心に待っていてくれた。僕ができたのはみんなをがっかりさせることだけ。
Quand on aime, on est en danger. Moi, c’est ça qui me plait.
好きになると、危険が待っている。僕はそこが気に入っているけど。
単語メモ
émettre (光、音などを)発する、放出する
goût 良い趣味、センス、美的感覚
instinct 本能;天分、素質;直感
paravent びょうぶ、ついたて、スクリーン
tyran 暴君、専制君主
raté しくじった、成功しなかった
イヴ・サンローランのプロフィール
この映画は、イヴ・サンローラン(1936-2008)のビジネスパートナーで恋人でもあった重要人物、ピエール・ベルジェ(1930-2017)とイブサンローラン財団が公認のオーソドックスな伝記映画です。
ベルジェの視点から描いているので、2人の関係はわりと美しく(喧嘩したりはするけれど)描かれていると思います。「イヴ・サンローラン」というブランドは、デザイン担当のサンローランと、ビジネス関係すべてを担当するベルジェの2人が作ったものです。
天才すぎて傷つきやすく、はちゃめちゃなことをするサンローランを、ベルジェが母親のように温かく包み込んできた、という感じです。
イヴ・サンローランは、フランス領アルジェリアで、中流階級の家に生まれました。お父さんは保険会社に勤めていて、大金持ちでもなく、かといってシャネルのような孤児でもなく、ごくふつうの家に生まれたわけです。
イヴは子供のときにパリに引っ越し、ファッション学校で学び、デザインコンクールで賞をとります。
この時の審査員が、イヴの才能を見抜き、クリスチャン・ディオールに紹介。ディオールも彼の才能にいたく感銘を受けます。
1957年の秋、ディオールが52歳で亡くなったあと、イヴはディオールのメゾンの主任デザイナーになります。このときサンローランは弱冠21歳です。
21歳から、2002年、66歳で引退するまで、徴兵されて留守のときや、スランプもありましたが、40年以上、彼はフランスのモード界を牽引してきました。
ピエール・ベルジェと知り合ったのは、イヴが最初のコレクションを発表した1958年です。
ベルジェは固い仕事を持つ両親のもとに生まれましたが、ジャーナリストかライターになりたくてパリに出てきました。
まず始めたのが古本の売買。政治にも興味があったので、政治新聞も作りました。
ベルジェは才能のある人が好きで、1950年代はじめ、ベルナール・ビュッフェ(画家)と知り合い、公私ともにサポート。ビュッフェは画家として成功します。
その後、サンローランと知り合い、ベルジェは今度はサンローランに惚れ込みます。
予告編でパジャマ姿でぼーっとしているイヴに、ベルジェが、「生きるのか、死ぬのかはっきりせい」と言っているのは、イヴがアルジェリア独立戦争に徴兵され、3週間ぐらい、軍隊にいたとき、いじめやら何やらにあって、すっかり精神がまいっていたときの話です。
この頃のイヴは疲れ切ってデザインができずディオールを退職。その後ベルジェと2人で、自分のブランドを立ち上げます。その後はデザイナーとして順調で、数々のモードをつくりだしました。
とはいえ、仕事のプレッシャーも多く、繊細だったイヴは、薬物に溺れたり、放埒な生活をしたりもします。
ですが、完全に破滅することはなく、引退までがんばりました。その功績を認められて勲章をもらったりしています。
イヴは2008年、ガンで亡くなりました。
この映画の見どころの1つは、本物のサンローランのドレスの数々です。財団が後援しているので、コレクションをリアルに再現しています。
とはいえ、デザイナーとしてのサンローランのどこがそんなにすごかったか、という点については、そこまで掘り下げてないと思います。あくまで、イヴとベルジェの関係にスポットがあたっています。
イヴ・サンローラン:関連動画など
日本向けの予告編です。
主演のピエール・ニネはサンローランにそっくりだし、ベルジェ役のギョーム・ガリエンヌも熱演しています。
ピエール・ニネはこの映画で、第40回、セザール賞の主演男優賞を獲得しました。
いかに、ピエール・ニネがサンローランにそっくりかは、この動画を見るとわかります。1968年、インタビューに答えている本物のサンローランです。
「僕はまだバレンシアガやシャネルの域には達していません」と謙虚に話しています。
シャネルの映画はこちらで紹介⇒映画『ココ・アヴァン・シャネル』の予告編でフランス語を学ぶ
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この映画、私は映画館で見ました。
本当にサンローランは、布切れを引き裂いて、モデルの腰に巻いたんですかね? きっとすごく高い布だと思います。
「風と共に去りぬ」ではヴィヴィアン・リーが、カーテンからドレスを作っておりましたが。
センスさえあれば、なんでもおしゃれな服になるのでしょう。
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