フランスのお菓子、今回は『サヴァラン(savarin)』を紹介します。
発酵させた生地をリング型で焼いて、洋酒をたっぷりしみこませたケーキです。
サヴァランとは?
サヴァランは、1845年にパリのパティシエの、オーギュスト・ジュリアン(Auguste Julien)が考案しました。
お菓子の名前は、『美味礼賛』という本を書いた、美食家として有名なブリヤ・サヴァラン(Jean Anthelme Brillat-Savarin 1755-1826)にちなんでいます。
しかし、もしサヴァランをババという名前のお菓子のバリエーション(形が違う)と考えると、18世紀のはじめ、ロレーヌ公の宮廷で生まれたともいえます。
当時、ロレーヌ公だった、元ポーランドの国王、スタニスラス・レクザンスカ(1677-1766)のために、クグロフ(彼の好物)にラム酒をかけたのが、ババの始まり、という説があるからです。
ロレーヌ公は歯が痛くて、固いお菓子が食べられなかったから、洋酒をふりかけてふやかしたそうです。歯が痛いなら、お菓子そのものを食べないほうがいいと思うのですが。
ロレーヌ公が、『千夜一夜物語』が好きで、アリ・ババからババという名前をとったとも言われています。
ですが、本当かどうかわかりません。私の電子辞書に入っている、小学館ロベール、仏話大辞典には、ババはもともとポーランド語で、原義は「老婆」、形の類似から、と書いてあります。
ババは、サヴァランと同じ生地ですが、コルク(びんの栓)がふくらんだような形をしています。
ババの歴史を説明している1分の動画です。
パリにあるストレールという老舗のお菓子屋の名物菓子、ババ・オ・ラム(ラム酒をかけたババ)が有名です。この動画に出てくるババも、ストレールのものです。
オーギュスト・ジュリアンは、ストレールで働いていたこともあるので、そこで、サヴァランのアイデアを得たのかもしれない、という説もあります。
ババとサヴァラン用シロップの作り方
サヴァランにしみこませるシロップの作り方です。生地を発酵させている間に、作ればいいでしょう。
材料
1/2 l d’eau 水
250g de sucre 砂糖
1/2 zeste de citron レモンゼスト
1/2 zeste d’orange オレンジゼスト
1 gousse de vanille バニラのさや
5 cl de rhum brun ラム酒(茶色いラム酒)50ml
シロップの作り方
1)鍋に、水、砂糖、レモンゼスト、オレンジゼスト、バニラを入れ、かき混ぜながら、沸騰させる。
鍋のなかにサヴァランを入れて、シロップをかけるので、大きめの鍋で作ったほうがいいです。バニラはさやを割いて、中身(バニラビーンズ)を取り出します。バニラとさやの両方、鍋に入れます。
2)沸騰したら火を止めて、60度ぐらいになったらラム酒を入れる。
もし、子供に食べさせるなら、ラム酒も一緒に沸騰させて、アルコール分を飛ばします。
生クリームをのせたサヴァランのレシピ
スタンドミキサーを使って生地を作っています。
材料
100g de lait 牛乳
10g de levure fraîche de boulanger ベイカーズイースト。画像や動画をみると、ねっとりしたパン種みたいなものかと思います。ドライイーストを使えばよいです。
225g de farine 小麦粉
1/2 zeste de citron レモンゼスト
20g de sucre 砂糖
5g de sel 塩
125g d’œufs(2個ぐらい) 卵
20g de jus d’orange オレンジジュース
50g de beurre pommade やわらかくしたバター
Sirop pour savarin サヴァラン用シロップ
作り方
1)ボールにミルクとイーストを入れ、かきまぜ、小麦粉、卵、オレンジジューズ、レモンゼスト、塩、砂糖を入れてかるめに混ぜる。
2)混ぜているところに、バターを少しずつ入れる
3)サバラン型にバターをぬり小麦粉をふりかけておく
4)生地を型の半分の高さまで絞り込む。そのまま、室温におき、発酵させる(型がいっぱいになるくらいまで)。
6)オーブンを170~175度に予熱
7)30~35分焼く
8)サバランが焼けたら、少しさまして、サヴァランのシロップにひたす。
9)表面にてりをつけるために、アプリコットジャムを水でゆるめて、ブラシで塗る
10)リングの真ん中に生クリームを絞り込む
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大昔、市販のサヴァランを食べたことがありますが、洋酒がきつすぎて、あまりおいしいとは思いませんでした。以来、「サヴァランってまずい」というイメージがあります。
お酒を好きな人に向いているお菓子かもしれません。
なお、ルイ15世の王妃、マリー・レクザンスカは、スタニスラス・レクザンスカの娘で、ルイ16世の母親です。
このころ、ヨーロッパの王室は、よその国から后を迎えていました。后についてきたパティシエから、お菓子のレシピも入ってきました。
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