「そのタイトル、フランス語だと?」、きょうは『眠れる森の美女』です。
『眠れる森の美女』は『眠りの森の美女』『姫り姫』とも呼ばれます。私が一番なじみがあるのは『眠れる森の美女』です。
作者は 『赤ずきんちゃん』と同じく、フランスのシャルル・ペロー。またグリム童話のバージョンもあります。
眠れる森の美女のあらすじ
タイトルどおり眠っているお姫さまが出てきます。仕事で疲れていたのではなく、魔女の呪いのせいです。
お姫さまが生まれたとき、王様はそのへんの魔女(妖術使い、あるいは占い師)を誕生日パーティーに招待しました。
でも1人だけ、招くのを忘れてた魔女がいたんです。結局、彼女はちゃんとやってきただけでなく、お招きがなかったことをひがんで、お姫さまにちょっとした呪いをかけます。
糸巻きの「つむ」のとがっているところをさわると、死んでしまうという恐ろしい呪いです。
逆恨みです。しかし、その場にいた別の魔女が、とっさに「死んでしまう」という呪いを「100年間、寝てしまう」という呪いに変えました。この魔女のパワーが足りなくて、これがせいいっぱいだったんです。
死刑が、無期懲役になった感じでしょうか。
「つむ」の利用は禁止された
とはいえ、100年寝ることも、望ましいことではないので、王様は糸巻きのつむの使用を禁止しました。うっかり、つむをそのへんに置きっぱなしにしても死刑です。
「つむ(錘)」というのは、辞書によると、
糸をつむぐ機械の付属品。鉄製の太い針状の棒で、回転して糸を巻き取ると同時によりをかける働きをする。
これです↓
このとがってるやつの使用を禁止しました。じゃあ、どうやって糸をよったのか、そのへんは不明です。
そういうおふれを出して用心し、15年ぐらいは何事もなかったのです。が、ある時、お姫様は城の塔の一番上の小さな部屋で、糸車を使ってる老婆と出会います。なんと、灯台下暗しなのでしょうか。
彼女、「つむ」をさわってはいかん、と言われてなかったみたいです。物珍しさも手伝って、糸も簡単に(シャレです、念のため)ときときをさわってしまいました。
『眠れる森の美女』のフランス語のタイトル
フランス語では、La Belle au bois dormant
la 女性名詞につく定冠詞
Belle 美女 belle はもとは「美しい」という意味の形容詞
bois 森
au bois = à le bois の縮約 「森で、森の」
dormant 眠っている ←動詞 dormirの現在分詞
dormantは現在は「よどんだ、固定した」という意味。「眠っている」という意味ではあまり使われません。この意味ではendormi という形容詞があります。
enfant endormi 眠っている子ども。
このタイトルはdormant(眠っている)なのが、森なのか美女なのか、どちらともとれます。そばにある森にかかっていると解釈するのが普通です。という形容詞は、bois(男性名詞)にかかっていますが、眠っているのはお姫様(Belle)です(←コメントでご指摘いただきました。ありがとうございます。)
これは代換法(だいかんほう)というレトリックの一種で、わざと違う言葉に形容詞をかけているそうです。
ちなみに英語は«Sleeping Beauty»で、美女を形容する形です。
★一緒に覚えられる基本単語
un roi 王様
une reine 王女さま
se piquer (自分のからだの一部を)刺す
★次のお話はこちら
⇒第6回『マッチ売りの少女』
眠れる美女を楽しむために
●Il était une histoire..というサイトにペローの話が朗読つきでのっています。⇒Lire l’histoire : La Belle au bois dormant – Contes-legendes – Il était une histoire
●こちらはディズニーのアニメから糸巻きのつむにさわってしまうシーン(3分ほど)。
●参考サイト
青空文庫⇒ペロー Perrault 楠山正雄訳 眠る森のお姫さま
みんな眠ってしまう
この物語のおもしろいところは、お姫様が「つむ」にさわってしまうところまでですね。
そのあとは寝てるだけですから。
お姫様がめざめたときに一人ぼっちで困らないように、王様は魔女に頼んで、城の召使いもことごとく眠らせます。
みんな、眠っている間は年をとりません。城のまわりの木が生い茂ってきて勝手に森みたいになり、世界から隔離される形になります。
100年後、そこは人の知らない、伝説の場所に。たまたまどこかのた王子さまが、通りかかります。
好奇心が強い彼は、美しいお姫さまが眠っているのを発見し、口づけをしてみたら、お姫さまはぱちっと目をさまします。このあとは、よくある物語の展開と同じです。
ペローの童話では、二人が結婚したあとのことまで書いてあるのですが、そのへんはあんまり絵本にはなりません。
付け足しっぽいですから。事実、この部分は別の話だったのではないかという研究もあります。
グリム童話では、城のまわりに生えている「いばら」からタイトルをとって、『茨姫』(いばらひめ)です。
キスをしに来る王子さまは、プリンス・チャーミングなんて呼ばれますが、
こちらはフランスではなんと?
やはり、白馬に乗ってくるのかしら?
日本で白馬に乗って来るのは、暴れん坊将軍ですわ。
アンさん、こんにちは。コメントありがとうございます。
フランス語でもまったく同じ単語があります。Prince Charmant です。
意味は、1.おとぎ話の王子様、美しい王子 2.貴公子のような美青年、理想の男性。
やはり白馬に乗っています。このような理想の王子さまを待っていてはいけないと言われます。
Arrêtez d’attendre le prince charmant sur un cheval blanc.
ご無沙汰しております。
いつもすばらしいサイトありがとうございます。
さて、この眠れる森の美女の「La belle au bois dormant」の
dormant なんですが、la belleとboisのどちらにもかかっていると
とれる、とありましたが、この場合la belleにかかっているとすれば
dormanteとなり女性形でeがつくのではないのかな?と思いました。
ですから単純に男性形のboisを修飾していると思っていました。
勝手な思い込み等多々ある私ですので、よろしくお願いいたします。
吉井さん、こんにちは。コメントありがとうございます。
あ、そうですね。belleを形容するなら、dormanteだから、森を形容しているけど、
でも実はbelleを形容しているってことですね。
ご指摘ありがとうございます。今から記事を書き直します。