「そのタイトル、フランス語だと?」、きょうは『青い鳥』です。
『青い鳥』という童話を知らない人はいないと思いますが、原作を全部読んだという人は少ないのではないでしょうか?
作者はベルギーの詩人であり、劇作家のメーテルリンク(1862-1949)。『青い鳥』は子どもむけの5幕10場のかなり幻想的な戯曲です。
あらすじは、チルチルとミチルというまずしい木こりの息子とその妹が青い鳥を探しにいろんな国に行ったけど、結局見つけられなかった。でも、家に帰ってきたら、実は家にいた鳥が青かった、というものです。
もう少し詳しく話の内容をご紹介しますね。
『青い鳥』のあらすじ
まず「なぜチルチルとミチルは、青い鳥を探す旅に出たのか」ですが、それはあるおばあさんに頼まれたからです。
クリスマスイブに、貧しい二人はベッドの中で目をつぶっています。他の子たちはどんなに楽しいクリスマスを迎えているのか空想しているのです(ここは以前書いたマッチ売りの少女とそっくりです)。すると、突然一人のおばあさんがやってきます。
おばあさんは、自分の娘が重い病気にかかっているが、青い鳥があれば助かるから、見つけてくれと言います。ついでに、あんたたちも幸せになれるからね、と二人を説得。
おばあさんは緑色の帽子と大きなダイヤモンドをくれます。このダイヤモンドを回すと、ふだんはただの物である炎や、パン、砂糖、時計などが生命を持ち、動きだし、おしゃべりを始めます。そばにいた犬や猫もお話しします。
ランプの光は美しい女性に変身。チルチルとミチルはみんなと青い鳥探しの旅へ。
このあと、5つか6つの国(世界)に行くのですが、それを書いていると軽く五千字を超えるので、二つの国についてのみ手短にふれますね。
思い出の国
まず、最初に行った「思い出の国」で、チルチルとミチルは亡くなったおじいさんとおばあさんに会います。おじいさんは、二人にもっと自分たちのことを思い出してほしいと頼みます。というのも、生きている人間の思い出の中でこそ、亡くなった人々が存在でき、楽しくいられるからです。
あとのほうで墓地も出てくるのですが、実は墓地には死んだ人はいないのですね。
ここで、死んでしまった二人の兄弟姉妹もやってきてみんなで晩御飯を食べます。帰るとき、おじいさんがチルチルに青い鳥をくれますが、この国を出たら、その鳥は真っ黒です。
未来の国
もうひとつの国は「未来の国」。ここにはなんとまだ生まれる前の子どもたちが住んでいます。この子たちは、なかなか優秀で、これから行く世界をよりよい場所にするためにいろんな発明品をこしらえています。
希望や夢に満ちあふれている子どもたちがいる反面、すでに人生をあきらめている子どももいます。チルチルとミチルは来年生まれる予定の弟に出会いますが、弟は「来年生まれるけど、すぐに死ぬんだ」と告げます。
チルチルが「じゃあ、生まれる意味ないんじゃ?」と言うと、弟は自分には自分の運命を選ぶことができないからしかたないよ、とあきらめ顔。
周囲では、子どもたちが順番に船に乗っています。この船は、お母さんが自分たちを呼ぶ歌声のほうに向かって進むのです。
このように、死後の世界も、生まれる前の世界も出てきてしまうファンタジーです。しかも、ダイヤモンドのおかげで、まわりの物はすべて人間のようにふるまうのです。
メーテルリンクってすごく想像力があったのだなと思います。
二人は、どの国でも青い鳥を見つけたり、もらったりするのですが、そこを出ると鳥は時には変色し、時には死んでしまいます。
★次のお話はこちらから
⇒第9回『赤い靴』
青い鳥はフランス語で?
青い鳥はフランス語でL’Oiseau bleu
l=le のエリジオン
oiseau 鳥
bleu 青
フランス語では形容詞はふつう名詞のうしろの来ますのでこうなります。発音はロワゾブル
ロワゾブルーで、日本でもブティックやレストランの名前になっていますね。
英語は The Blue Bird です。こちらは車の名前になってます。
日本製アニメをフランスで放送していたときのテーマソングの歌詞の冒頭を紹介します。アニメは1980年の「メーテルリンクの青い鳥 チルチルミチルの冒険旅行」です。
曲の最初のほうはこう。
Pour vous la merveilleuse histoire
Des enfants et de l’oiseau bleu
Ils voyagèrent à travers les mirroirs
Jusqu’à l’animal fabuleuxIls vivaient dans une grande forêt
Avec leur maman bien souffrante
Sans le sou, sans espoir de la soigner
Ils la voyaient déjà mourante
子どもたちと青い鳥のすばらしい物語をあなたたちに
伝説の動物(青い鳥のこと)を求めて
鏡の中を旅します
彼らは大きな森に住んでいました
病気のお母さんと一緒に
お金もなく、治す望みもなく
すでに死にそうなお母さんを見守っていました
・・・こんな感じです。このアニメでは、自分たちのお母さんの病気を治すために冒険の旅に出るようです。
ちなみにチルチルとミチルは原文では、Tyltyl, Mytylです。
ティルティルとミティルという感じですね。
原作はパブリックドメインなので、ネット上を探せば無料で読めます。
まず登場人物の衣装がのっていますね。最初のほうの台詞はそんなに難しくないです。
※参考リンク:
Project Gutenbergからもオリジナルをダウンロードすることができます⇒L'oiseau bleu: Féerie en six actes et douze tableaux by Maurice Maeterlinck – Free Ebook
※堀口大学の翻訳で出ています。
『青い鳥』の作者、メーテルリンクについて
メーテルリンクは1862年、ベルギーの裕福な家の生まれ。象徴主義の作家です。象徴主義とは目には見えないけど、真実だと思われることを、象徴的に描くこと。まあ、よくわかりませんが、一般に神秘的で、幻想的で「青い鳥」の世界そのものです。
フランスでは、ボードレールの「悪の華」がその発端と言われています。
メーテルリンクは法律を学びつつ、詩や短編小説を出していました。1889年に発表した最初の戯曲『マレーヌ姫』で一躍有名になります。この時まだ27歳ですから、早くから成功したわけです。
「青い鳥」は1908年にモスクワ芸術座で初演、翌年刊行。その後、ロンドンやブロードウエイでも上演されます。
下の写真は初演の初演のチルチルとミチル
わりに恵まれた人生ですね。
第二次世界大戦中に、母国ベルギーにいるとき、ナチスドイツの侵攻から逃れるため、ポルトガルへ行き、そこからギリシャの貨物船でアメリカに渡ったそうです。
戦後はニースに戻って、1949年に亡くなりました。
彼は遺言に「ドイツとその同盟国日本には私の作品の版権を渡してはならぬ」と書いていました。よって、上記のアニメの制作をするとき、制作側は遺族との交渉にとても苦労したそうです。
初演から72年たっていますが、まだパブリックドメインになっていなかったのでしょうか?
実は、原作の最後は夢オチです。二人は一年かけて、いろんな国に行ったつもりだったのですが、お母さんは「あんたたち、この部屋でずっと眠っていたよ。」と言います。
「え~うっそ~」と驚くチルチル。しかも自分の鳥が青いことを発見します。
このあたりの筋運びが古くさいせいか、今では原作はあまり話題にならず「青い鳥」だけが幸せの象徴として、一人歩き(一人飛び?)しているのでしょう。
原作が戯曲なので、もっのすごく読みにくいんですよねー。
犬と猫が出てきませんでしたか?お伴で。(桃太郎みたい?)
犬の名前が、翻訳によって、「チロ」だったり「タイロ」だったりして、
イメージ違う・・・と、思った記憶が。
他の話と混同してるかな?
アンさん、こんにちは。
いつも、コメントありがとうございます。
犬と猫、出てきますよ。
猫は二人が青い鳥を見つけるのを邪魔するのですが、犬は味方です。
記事を書く前に、フランス語をちらっと眺めましたが、
台詞の部分はわりにやさしいと思いましたけど。
読みにくいのは、話がとっぴすぎるからじゃないでしょうか?