今日、ご紹介するフランス語のことわざはこちらです。
Qui n’entend qu’une cloche n’entend qu’un son.
1つの鐘しか聞かない人には1つの音しか聞こえない
1つの鐘しか聞かない人には1つの音しか聞こえない
・・・それは、まあ、そうですね。
この場合、1つの鐘とは一方の意見です。言い分と言ってもいいです。
たとえば、兄弟がけんかをした場合、兄には兄の言い分が、弟には弟の言い分があるはずです。
親としては、両方の意見を聞いてから、処遇を考えなければいけません。
いつも弟の言うことばかり聞いていては、片手落ちです。ちゃんと兄の見解も聞かないと、お兄さんはぐれてしまいます。
つまり、片方の意見だけを聞いても、ものごとの全体像はわからない、という意味のことわざです。
兄弟げんかのほかにも、離婚の調停、さらには、民事、刑事の裁判など、両者の鐘の音を聞いて判断すべきときは、この社会にたくさんありますね。
よくわかる!フランス語の文法解説
★単語の意味
qui ~する人
entend < entendre 聞く
n’entend qu’ = ne entend que →後述
une cloche 鐘
un son 音
★直訳
「1つの鐘しか聞かない人は、1つの音しか聞かない。」
★補足
ne … que A
Aしかない
Aをのぞいて…ではない=Aだけしかない
いわゆる限定表現です。
n’entend qu’une cloche 1つの鐘しか聞かない
ほかの例)
彼女はまだ20歳だ(20歳でしかない)
Elle n’a que vingt ans.
彼は不平ばかり言っている(←不平しか言わない)
Il ne fait que se plaindre.
(queに動詞が続くときは、「faire que 不定法」という形。
日本のことわざで同様のものが思いつかなかったので、記事のタイトルは「片手落ち」としました。
人のうわさを聞いたときも、当人の言葉を聞くまでは、判断すべきではないのです。
また、ちゃんと両者の意見を聞きつつも、どちらかの鐘に耳が近い場合があります。
兄弟げんかなら、いつもお兄ちゃん(弟でもいいですが)の言うことを信じてしまいがちなママ。
夫婦げんかなら、奥さんの言うことだけを真に受けてしまう女子大時代からの友達。
こういう人たちには、全体像を客観的に把握できません。
ですから、もっと大きな問題が生じたときは、争っている2人とは利害関係のない人に鐘の音を聞いてもらう必要があります。
いわゆる第3者ですね。
しかし、これとて、音の大きな鐘のほうに第3者の耳が行ってしまうかもしれません。
状況を客観的に判断するというのは、想像以上に難しいのです。
心の耳をすまして、鐘の音をよく聞くことが大切です。
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