今日、ご紹介するフランス語のことわざはこちらです。
内輪もめに口出しをするな。
Entre l’arbre et l’écorce, il ne faut pas mettre le doigt.
内輪もめに口出しをするな
直訳は「木と樹皮の間に指を突っ込んではいけない」となります。
木と樹皮はひじょうに近い関係にあるものです。
「内輪のもめごと」とは、たとえば夫婦の争いのように、ふだんはとても親しい、ほとんど一体と言えるような間柄のケンカです。
そのような二人のケンカは一過性のものであり、時間がたてば仲直りする可能性が高いので、他人が口出しすべきものではない、ということです。
このことわざは14世紀ぐらいからあるそうです。
出どころは定かではないのですが、こんな逸話が伝えられています。
昔、クロトーネ(ギリシアの植民都市)にミロというたいそう力自慢の闘技者がいました。
ミロは年をとったので、一線から退いていましたが、未だに力はあり、いつかまた競技に出場したいと思っていました。
あるとき、ミロは家のそばの森に行き、ナラの木の樹皮が少しはがれているのを見ました。
ミロは自分の力強いところを人々に見せつけるため、樹皮を全部はがそうと、樹皮と木肌の間に指を入れ、めくりはじめました。うまくめくれるかと思いきや、樹皮はめくりきれず、木肌にすごい勢いで戻り、ミロの手を木と皮の間にはさみこんでしまいました。
ミロは森の中で身動きがとれず、やがて動物たちに食べられてしまいました。
なんとも残酷な話です。
この逸話のポイントは、ミロが「自分の力をみせつけてやれ」、と考えたことにあります。
内輪げんかに口出しをする人たちも、必ずしも「けんかをおさめて、当人たちを幸せにしよう」、と思っているわけではありません。
ケンカをしている二人にいろいろとえらそうなことを言って、何らかの形で自分のえらいところ、すぐれたところ、人間ができているところなど、見せつけたいのかもしれません。
そのような行為はひじょうに愚かである、とこのことわざは言っています。
よくわかる!フランス語の文法解説
単語の意味
entre ~の間に
l’= le 男性名詞につく定冠詞
arbre 木(男性名詞)
et ~と
l’(écorceの前のやつ)= la 女性名詞につく定冠詞
écorce 樹皮
il ne faut pas ~すべきではない
mettre 入れる
doigt 指
直訳
「木と樹皮のあいだに指を入れるべきではない。」
補足
Entre l’arbre et l’écorce の替りに、Entre le marteau et l’enclume 「金槌と鉄床(かなとこ)」と言うこともあります。
日本のことわざでは?
そのものずばりの日本語のことわざを思いつきませんでしたが、意味から考えて、以下の3つが近いでしょうか。
いずれも「他人のケンカに口出しをするな」という意味です。
ことわざの記事の目次を作りました。ご利用ください。
その1⇒フランス語のことわざ~目次 その1
人間とは不思議なもので、ついつい他人のあれこれに口出しをしてしまいますね。もしおせっかいをしそうになったら、このことわざを思い出して、自分のやるべきことに焦点を移しましょう。
それでは、次回のことわざの回をお楽しみに。
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