カーラ・ブルーニの「Quelqu’un m’a dit」という曲をご紹介します。直訳は「誰かが私にそう言った」。邦題は「ケルカン・マ・ディ ~ 風のうわさ」となっております。
カーラ・ブルーニは、有名なのでご存知の方も多いことでしょう。ニコラ・サルコジ元フランス大統領夫人です。とてもきれいな人です。
バックはアコースティックギター1本のシンプルな曲です。
ではまず聞いてください。
Quelqu’un m’a dit ケルカン・マ・ディ
2分29秒
ハスキーな声がすてきですね。
では、和訳に挑戦!
On me dit que nos vies ne valent pas grand-chose
Elles passent en un instant comme fanent les roses
On me dit que le temps qui glisse est un salaud
Que de nos chagrins il s’en fait des manteaux
私達の人生はたいして意味がないと人は言う
人生はバラの花がしおれるようにあっという間に過ぎてしまう
時は知らないあいだに過ぎ去る無情なもの
私達の悲しみはつのるばかり
☆
Pourtant quelqu’un m’a dit que tu m’aimais encore
C’est quelqu’un qui m’a dit que tu m’aimais encore
Serais-ce possible alors ?
それでも誰かが私に、あなたが私をまだ愛していると言ったの
誰かが私に、あなたが私をまだ愛していると言ったの
それってありえること?☆
運命は私たちをひどくもてあそぶと人は言う
運命は私たちに何もくれない。私達に何でも約束してくれるけど
幸せは手の届くところにあるように見えるけど
手を伸ばしたら、また馬鹿を見るの
☆~☆ 繰り返し
でも誰が私に、あなたが私をずっと愛していると言ったのかしら?
思い出せないわ、それは夜遅い時間のことだったけど
まだ声は聞こえるの。でも姿かたちはもう見えない
「彼はあなたを愛していますが、それは秘密なのです。私があなたにそう言ったことを彼には言わないでください」
ねえ、誰かが私に、あなたが私をまだ愛していると言ったのよ
私に、本当にそう言ったのかしら? あなたが私をまだ愛していると
それってありうることかしら?
私達の人生はたいして意味がないと人は言う
それはバラの花がしおれるようにあっという間に過ぎてしまう
時は知らないあいだに過ぎ去る無情なもの
私達の悲しみはつのるばかり
☆~☆ 繰り返し
✡歌詞はこちらを参考にしました⇒Paroles Quelqu'un m'a dit – Carla Bruni – Musique – Ados.fr
単語メモ
grand-chose 大したもの(こと)★無冠詞で否定表現でのみ用いられる
Je n’ai pas grand-chose à dire. たいして言うことはありません。
faner しおれる
glisser 滑る、滑り落ちる、知らない間に進行する
salaud (話)卑劣漢、ゲス野郎、とプチロワにはありましたが、これはsale(汚い、いやな、たちの悪い)の名詞形なので、いやなもの。ひどいもの、ぐらいの意味だと思います。
serais < être の条件法現在
活用は
je serais
tu serais
il serait
nous serions
vous seriez
ils seraient
se moquer de ~を馬鹿にする、からかう、意に介さない
promet < promettre 約束する
à portée de main 手の届く所に
portée は射程距離「星の王子さま」にも出てきます。
tend < tendre ぴんと張る、ひっぱって伸ばす
se retrouver (ある場所、状態に)戻る
時が悲しみからコートを作る
ごく単純な歌詞ですが、一箇所わかりにくところがあります。
On me dit que le temps qui glisse est un salaud
Que de nos chagrins il s’en fait des manteaux
2行目の文はde nos chagrinsが前に出ています。ふつうの語順にすると
que il s’en fait des manteaux de nos chagrins.
直訳すると
時は知らぬ間に過ぎ去るし、それは卑劣なものだと人は言う。
時(il)は私達の悲しみからコートを作ると人は言う
だと思います。
時が悲しみからコートを作る、というのはいささか突飛な表現です。
chagrin には2つの意味があり、1つは、「悲しみ」、もう1つは「シャグリーン、表面のざらざらした革」です。
「革」の意味をとると、
時は、革からコートを作ると人は言う。
となり、「革からコートを作る」部分は意味がとおりますが、なぜ時がそんなものを作るのか、という疑問が残ります。
調べてみたら、このchagrinsはバルザックの”La Peau de chagrin” (あら皮)という小説からきている ”comme une peau de chagrin(革の表面のように)”のchagrinsのことで、「じょじょに磨り減るもの」の比喩として使われるそうです。
つまり、ここで歌われているchagrinsは 1.悲しみ、2.すり減ってしまうもの、3.コートの材料になる皮、の3つをかけているのでしょう。
生きていけばいくほど chagrins (革であり、悲しみ)がつのってゆき、その革でやがてコートができてしまうほどだ、という意味にとりました。
歌詞つきビデオ
一緒に歌い方はご利用ください。
ちょっとアレンジが違います。バックにストリングスが入ってます。
カーラ・ブルーニのプロフィール
1967年イタリア生まれ。お父さんはイタリア人の作曲家(法的な父親で本当のお父さんではないそうです)、お母さんはフランスとイタリアのハーフのピアニストという音楽一家に誕生。お姉さんは女優で映画監督、お兄さんはもう亡くなっていますが写真家。
父方の祖父が、イタリア第2位のタイヤの会社を作った実業家。しかしお父さんは、芸術家肌で、この会社を倒産させてしまったそうです。
そこで、生まれたときは人が思うほどお金はなかったようですが、イタリアで金持ちを狙った誘拐が多発していたので、安全のために1975年に一家でフランスへ移住。
カーラは、スイスの寄宿学校に入学しました。大学在学中にモデルエージェントにスカウトされ、、90年代のスーパーモデルとなりました。
29歳で、モデルをやめ、そのあと、自分で作詞作曲した曲を歌ったアルバムでシンガーとしてデビューし、ヒットしました。サルコジが大統領をしているときは、ファーストレディの努めをはたしていましたが、大統領でなくなったあとは、モデルや、歌の仕事を再開しています。
美貌、知性、音楽的才能と、天からいくつも与えられた人ですが、人知れず努力してるかもしれません。
Quelqu’un m’a ditは歌手として初めて発売した2002年の同名のアルバムのタイトル曲です。
とても雰囲気のあるアルバムジャケットです。美しい人だから、こんなふうに寝そべっても絵になるのですね。
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