黄昏

フレンチポップスの訳詞

オール・オーヴァー・ザ・ワールド:フランソワーズ・アルディ(訳詞)

フランソワーズ・アルディが1964年に発表したアルバム、Mon amie la rose(私の友達、バラの花)に収録されていた、Dans le monde entier(直訳:世界中で)という短い曲を紹介します。

邦題はオール・オーヴァー・ザ・ワールドです。実は、この曲に英語の歌詞をつけて、アルディが英語で歌ったら、翌年、イギリスでヒットしました。

だから、日本では、オール・オーヴァー・ザ・ワールドというタイトルで通っています。

今回はアルディのフランス語版と英語版、それにザ・シーカーズのバージョンを紹介します。

まずはオリジナルのフランス語バージョンです。作詞作曲はアルディです。

オール・オーヴァー・ザ・ワールド(フランス語版)

アルディは1944年生まれですので、20歳ごろの歌声です。

では訳してみます。

Dans le monde entier 世界中で

世界中で、この夜は同じ
ほかのたくさんの夜と、太陽が見えなくなったときは
そのとき、たくさんの幸せとたくさんの苦しみが隣り合わせ
たくさんのものが死んでいく一方で、たくさんのものが生まれる
たくさんのものが死んでいく一方で、たくさんのものが生まれる

でも今夜は、あなたがここにいない
今夜は、あなたはやってこない
ずっと遠くにいる
もう私のこと、忘れちゃったんじゃないかしら

だから、こんなこと知ることが大事かしら?
他の人は、今夜、愛し合うのか、それとも、悲しみにくれるのか
他の人は、ケンカするのか、仲直りするのか
大事なことなんて何もない、あなたが遠くにいるってこと以外は
そして今夜、あなたがどうしているのか、私にはわからないということ以外は

単語メモ

pareil à ~によく似た

tant de +無冠詞名詞 多くの~、それほどたくさんの~

côtoyer ~と接する、~と隣り合う

détresse (孤独感、無力感による)苦悩

importer à qn ~にとって重要である

plus ou moins 多かれ少なかれ

se défier 挑み合う

se rejoindre 再び一緒になる、互いに一致する

sinon que ~以外は

夜はいつも同じだけど、今夜は違う。なぜならあなたがそばにいないから、という歌です。

昼と夜、幸せと苦しみ、死に行くもの生まれ来るものなど、二項対立の歌、あるいはオールオアナッシングの歌、と言えましょう。

この曲に、Julian Moreという人が英語の歌詞をつけました。

オール・オーヴァー・ザ・ワールド(英語版)

フランスワーズ・アルディが英語で歌っています。

オリジナルのPVは削除されたので、別の動画です。

オリジナルではバックにロンドンのピカデリーの夜景が写っていました。1分20秒ぐらいで、The Beatles Help と出てきます。アルディはベッドの上でパジャマを着ているようでした。ふつうに歌ったほうが美しさが映えるのに。

では英語版の歌詞も訳してみます。

世界中で、
人は出会って別れているはず
どこかに私みたいに
心が傷ついている人もいるわ

再び出会う人もいる
同じ輝く星のもとで
もし別の夜に
あなたが遠くから帰ってくるなら
別にいいわよね、今夜
あなたがどこにいるのかわからなくても

今、私のこと考えている?
私がそばにいなくて寂しい?
もしあなたが私のことを忘れてしまったら
私の世界は砕け散ってしまうわ

世界中で
他の人も今夜は悲しい思いをしている
どこかに私みたいに
太陽の光が陰っていくのを見ている人がいる

世界中で
同じあたたかな光が見えている
あの星の下で
あなたに知っていてほしいの
あなたがどこにいようと
私はやっぱりあなたを愛しているって

私の訳詞が下手なのはおいといて、せっかくの二項対立の世界がくずれてしまいました。まあ、これはこれで、恋人のいない寂しい夜を過ごす人とか、故郷を遠く離れている人が聞くと、じーんとくるかもしれません。

フランス語版のほうが好きだな~、と思うのですが、次に紹介するシーカーズの歌を聞くと、俄然よい歌に聞こえます。

オール・オーヴァー・ザ・ワールド(ザ・シーカーズ)

この曲を1966年にザ・シーカーズ (The Seekers)がカバーしました。シングルカットはしてないようですが、代表曲の1曲となっています。この頃、イギリスでレコード契約して活躍していました。

シーカーズは女性ボーカルと男性3人のグループ。1962年にメルボルンで結成されました。フォーク色の強いコーラス・グループです。

イギリスやアメリカで成功した初めてのオーストラリアのグループです。

ジョージーガール(Georgy Girl)という大ヒット曲があり、日本のラジオでもよくかかっていたので、私と同世代の人は知っていると思います。

紅一点のジュディス・ダーハム(Judith Durham)はひじょうに伸びやかで温かい声の持ち主。彼女が歌うと、まったく別の歌になります。

この曲、フランソワーズ・アルディが作ったんですが、アルディのほうが、フランス語でカバーしてると思っている人もいるようです。

シーカーズ・バージョンは1966年に発売された、Come the dayというアルバムに収録されています。

このアルバムにはジョージーガールも入っているし、ビートルズのイエスタデイ、バーズのターン・ターン・ターン、ママス・アンド・パパスの夢のカリフォルニアなんかも入っています。

フランソワーズ・アルディの英語版は、Françoise Hardy Sings in Englishというアルバムに収録されています。こちらも1966年の発売です。

ダーハムは1943年生まれなので、アルディと同じ世代です。2人とも古希を越えました。

アルディの曲はこちらでも紹介しています。

フランソワーズ・アルディ:1日の最初の幸せ(Le premier bonheur du jour)~歌と訳詞

『男の子女の子』~フランソワーズ・アルディ:歌と訳詞

さよならを教えて~フランソワーズ・アルディ(歌と訳詞)

歌と訳詞:霧のコルヴィザール~フランソワーズ・アルディ

今回は、フランソワーズ・アルディの隠れた(?)名曲を紹介しました。

この記事、シーカーズのアルバムを聞きながら書きましたが、やはり60年代はいい曲が多かった、と改めて思うpenでした。






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