2001年の1月19日にパリで初演された、フランスのミュージカル、『ロミオとジュリエット(Roméo et Juliette: de la Haine à l’Amour)』から、Le balcon (バルコニー)という歌を紹介します。
シェークスピアの原作では、ジュリエットが、自分の部屋のバルコニーに出て、「ああ、ロミオ、ロミオ、どうしてあなたはロミオなの?」というシーンです。
ジュリエットは、ロミオに「名前を捨てて」と言い、こっそりバルコニーの下に来ていたロミオが、「あなたのいうとおり、名前を捨てましょう。もう僕はロミオじゃありません」と言います(ざっくりとした概略です)。
なぜ名前を捨てるかというと、2人は敵同士の家に生まれたからです。違う人間であれば、堂々と愛し合えるのに、ということですね。
ミュージカルでは、2人はとてもきれいな歌をデュエットします。
Le Balcon
3分8秒。
長髪のロミオ様、かっこいいですね。
それでは和訳に挑戦!
[Juliette:]
A quelle étoile, à quel Dieu
Je dois cet amour dans ses yeux ?
Qui a voulu de là-haut
Que Juliette aime Roméo ?
A quelle étoile, à quel
Dieu Je dois cet amour dans ses yeux ?
Même si je dois payer
Le prix d’un amour interdit
Pourquoi nos pères se haïssent
Et que la fille aime le fils ?
Ça doit bien faire rire là-haut
Que Juliette aime Roméo
[Roméo:]
A quelle étoile, à quel Dieu
Je dois cet amour dans ses yeux ?
Que leur volonté soit faite
Car Roméo aime Juliette
S’il faut prier, je prierais,
S’il faut se battre, je me battrais
Mais pourquoi faut-il payer
Le droit de nous aimer ?
[Roméo et Juliette:]
Et que nos pères se déchirent,
Leurs enfants eux se désirent
On ne peut pas changer l’histoire,
La nôtre commencera ce soir
[Juliette:]
Et tant pis si ça dérange
[Roméo:]
Qu’une pucelle aime un ange
[Roméo et Juliette:]
A quelle étoile, à quel Dieu
Je dois cet amour dans ses yeux ?
Que leur volonté soit faite
Car Roméo aime Juliette
A quelle étoile, à quel Dieu
Je dois cet amour dans ses yeux ?
Ça doit bien faire rire là-haut
Que Juliette aime Roméo.
作詞・作曲:Gérard Presgurvic(ジェラール・プレスギュルヴィック)
ジュリエット: Cécilia Cara(セシリア・カラ)
ロミオ:Damien Sargue(ダミアン・サルグ)
バルコニー・和訳
どの星、どの神さまのせいで、
あの人の瞳を愛してしまったの?
天にいる誰が、
ジュリエットがロミオを愛するように望んだの?
どの星、どの神さまのせいで、
私はあの人の瞳を愛してしまったの?
許されない愛の代償を、
支払わなければならないのに
なぜ私たちの父親は憎み合っているの?
なぜその娘が、その息子を愛してしまったの?
天上では、笑っているわね
ジュリエットがロミオを愛するなんて
どの星、どの神さまのせいで、
あの人の瞳を愛してしまったのか?
天ののぞみが叶い給わんことを、
だってロミオはジュリエットを愛しているから
祈る必要があるなら
祈るよ
戦う必要があるなら
戦うさ
でもなぜ代償を支払う必要があるのか
僕たちが愛し合う権利のために
父親たちがいがみあっているとき
その子どもたちはお互いに求め合っている
歴史を変えることはできない
私たちの物語は今夜はじまる
おあいにくね、もしそれが、ことを乱すなら
乙女が天使を愛することが
どの星、どの神さまのせいで、
あの人の瞳を愛してしまったの?
天ののぞみが叶い給わんことを、
だってロミオはジュリエットを愛しているから
どの星、どの神さまのせいで、
あの人の瞳を愛してしまったの?
天上では、笑っているわね
ジュリエットがロミオを愛するなんて
単語メモ
là-haut 高いところに、あそこに、あの上に ☆ここでは、神さまのいる天のこと。
même si たとえ~でも
se haïssent < se haïr 憎み合う
se déchirer 苦しめあう、中傷しあう
pucelle 処女、生娘
補足説明
以下は私の解釈です。
A quelle étoile, à quel Dieu Je dois cet amour dans ses yeux ?
直訳:あの人の瞳の中のこの恋を、私は、どの星、どの神さまに負っているのか?⇒ どの星、どの神さまのせいで、私はあの人に恋をしたのか?
devoir qc à qn/qc ~に~の恩恵を受けている、~のおかげである、~のせいである
上の訳文では、瞳を愛した、としましたが、cet amour dans ses yeux はロミオ(ジュリエット)を愛した、ということです。
Ça doit bien faire rire là-haut Que Juliette aime Roméo
直訳:ジュリエットがロミオを愛していることは、天で、しっかり笑いを起こしているに違いない(天にいる誰かをきっちり笑わせているはずだ)。
天の誰かが、ジュリエットがロミオを好きになるように望み、しっかりそのとおりになったので、今頃、大笑いしているはずだ、ということ。
Que leur volonté soit faite
Que + 接続法で、命令や願望を表す構文。
直訳:彼の意向が、形になりますように。
彼とは、天にいる誰かです。天の誰かの望み通りになりますように、だって、ロミオはジュリエットが好きだから、ということ。
Et que nos pères se déchirent, Leurs enfants eux se désirent
この que は quand のことだと解釈しました。que は いろいろな接続詞の代わりに使われます。
Et tant pis si ça dérange Qu’une pucelle aime un ange
乙女(ジュリエット)が天使(ロミオ)を愛することが、親たちの現状をかき乱したとしても、仕方がない、私はロミオ(ジュリエット)を愛するからね、という意味。
バルコニー・関連動画
歌詞の動画。いっしょに歌いたい人に。
3分30秒。
こちらは、主演2人による、初演から19年後のデュエットです。
2020年5月のはじめ、フランスがきびしい外出制限をしていたとき、ダミアン・カルグとセシリア・カラがそれぞれの自宅でデュエットしました。
物語では、家柄が隔てていたものが、このときは、物理的に隔てられていた、というわけです。
3分30秒。
19年もたっているのに、2人ともいまだに若いのは、上演していたとき、すごく若かったからです。
ダミアン・サルグは、1981年6月生まれで、当時19歳。セシリア・カラは1984年6月生まれなので、当時、15歳
え、15歳? にしては、色気がありますし、歌、うまいですね。
シェイクスピアの設定では、ロミオは17歳、ジュリエットは13歳なので、原作にそった配役です。
DVD、中古で手に入ります。
CDも輸入盤が中古で入手可能。
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このミュージカルは、ヒットして、フランスのみならず、いろいろな国で上演されましたが、日本での上演はありませんでした。
宝塚が上演したからです。
宝塚は、きっと高いお金を出して、上演する権利を買ったのでしょう。
もちろん、日本人には、日本語のほうがわかりやすいのですが、フランス語で歌っているからいい、という面もありますよね。
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