辞書

フランス語脳プロジェクト

翻訳をするときの心構え、技術より大切なもの~翻訳講座第12回後半(終)

翻訳講座の受講メモ、第12回後半です。

課題は、引き続き水林章先生の「メロディ」の一節で、一番最後の行と、そのすぐ前の行です。

このすぐ前の行というのがとても長くて、この2つの文の解説で38分ありました。

きょうのメニュー

  • 今回の課題文の直訳調の訳文例
  • 直訳調が変になる原因
  • deの替りに使う状況補語~仏作文用アドバイス


  • 今回の課題文

    Le Chien de Goya, dans sa facture abstraite extrême, fait preuve d’une étrange puissance d’interrogation pour tous ceux qui contemplent, de près ou de loin, le paysage à la fois dévasté et dévastateur de l’après-11 mars de Fukushima où l’agonie des bêtes semble dénoncer en silence le scandale des hommes se vautrant dans la fange du mensonge.
    ・・・Akira Mizubayashi, Mélodie : Chronique d’une passionより

    単語メモ

    facture 表現様式
    faire preuve de qc. (態度などで)示す
    étrange 奇妙な、不思議な
    puissance 力、強さ
    contemplent <contempler 凝視する
    scandale 醜聞、不面目
    se vautrant < se vautrer 転げまわる、寝転がる
    fange 泥

    直訳すぎる、よくない訳例

    …長いので関係代名詞oùの前で切ります…

    ゴヤの犬は、その極端に抽象的な表現において、3月11日以後の福島の荒廃させられたと同時に荒廃させる光景を、近くからあるいは遠くから凝視している人々すべてに、奇妙で強い問いかけを示している

    その福島での動物たちの苦しみは、嘘という泥のなかにまみれる人間の醜聞を沈黙の中で告発しているかのようだ。

    直訳がまずい最大の原因

    それは、名詞を名詞として訳していること。

    上の訳例では、interrogation(問い)を名詞のまま訳してあるのですが、それよりは「問いかける」と動詞にしたほうが、日本語らしくなります。

    前も書きましたが フランス語は名詞を好み、日本語は動詞表現が多いからです。

    そこで、名詞を名詞のまま訳しておかしかったら、副詞か述語にできないか(述語転換)考えます。

    なぜ副詞を考えるかというと、動詞表現を修飾するのは副詞だからです。

    この講座でいろいろな翻訳技術を学びましたが、この「名詞をうまく日本語に訳す」というのが最大のポイントではないでしょうか?

    しかし、それがわかっているからといってうまくは訳せません。簡単な文なら、頭の中ですっとできるのですが、こういう長い文の場合、私は、紙の上で、フレーズごとに少しずつ訳して、最後にあわせています。

    そしてそれを読んで、もう一度変なところを訳し直します。

    そうすると、なんだかもとの意味から離れて超訳になってしまい、それをそのまま課題として提出する、ということが多かったです。

    今後は、超訳になったものを、改めて原文とつきあわせて、訳し落としがないかチェックする作業も加えてみます。

    deの替りに使う状況補語

    これは翻訳ではなく、仏作文のテクニックです。

    課題文の dans sa facture abstraite extrême(極端に抽象的な表現形式の中の)みたいなのが独立した状況補語です。状況補語とは、何かを説明している部分です。

    この場合はゴヤの犬の絵の説明をしているので、「極端に抽象的な表現形式の中の絵」となります。絵の説明ではあるが、前置詞 de ではつながず、dansをつけて、ひとつの句になっています。

    この「~の」は何も考えないとdeを使ってしまうのですが、deを使わず、dansやenを使ってみると、deの連続になりません。

    例:
    長野県の南アルプス・スーパー林道の開設工事現場で、土砂くずれが頻発している。

    これをそのままdeばかり使って訳すと

    Au chantier de construction d’une “super-route forestière” des Alpes du Sud du département de Nagano, des glissements de terrain se produisent fréquemment.

    こんなふうになり、読みにくいです。しかもこの文は、最初の句が長すぎてバランスがよくありません。

    フランス語はどちらかというと、後ろが長いほうが落ち着きます。だから、主語が長いと倒置したりしますね。

    これを、独立した状況補語を用いて、たとえば

    Des glissement de terrain se produisent fréquemment au chantier de construction d’une “super-route forestière” des Alpes du Sud, dans le département de Nagano.

    のようにdeの多用を回避すると、より読みやすい仏文になります。

    課題文の先生の訳例

    極度に抽象的な技巧を凝らしたゴヤの「犬」は3.11以後の福島の荒れ果て、だが同時に荒廃をもたらす景色を、近くからであれ遠くからであれ眺めた全ての人に対して、奇妙な力をもって問いかけている。

    福島の動物たちの苦悶は、嘘偽りにまみれた人間たちのスキャンダルを、沈黙のうちに非難しているようだ。



    翻訳とは忍耐

    最後に先生からアドバイスがありました。

    「翻訳は忍耐です。直訳に逃げないで、忍耐をもって、よりふさわしい訳文を考えだして下さい。」

    つまり、何とか自分の頭でひねり出すということですね。

    どんなに翻訳技術を学んでも、この忍耐をもって訳すというのはとても大事なことだそうです。

    そして、この忍耐は翻訳をたくさんやっていくうちに培われていくものでもあるとのこと。

    人間、何をやるにも精神力というものは、技術より大切ですね。気長に、でもあきらめないで続けていきましょう。

    ★このシリーズの目次はこちらです⇒翻訳者養成講座関連記事の目次

    一番最後の課題は課題文そのものが難しかったので、フランス語を始めたばかりの方には「何のこっちゃ?」と思われる部分も多かったと思います。

    名詞に注意して、無意識に直訳のまま放置しないことが、きょうからすぐできることでしょうか。

    さて、3月から雨だれのようにポツポツ書いてきた、翻訳講座の受講メモ、ようやく終わりました。

    皆さま、おつきあい、どうもありがとうございました。






    ピックアップ記事

    1. ぜんぶ無料:あなたのフランス語学習に役立つサイト16選
    2. 2018年版、フランス語と英語の勉強用カレンダーのご紹介。
    3. 『星の王子さま』~お役立ちリンク集

    関連記事

    1. アリ

      フランス語脳プロジェクト

      日本語はフランス語に比べて否定表現が多い。

      翻訳者養成プロジェクトの第7回の授業を聞きました。今回とりあげ…

    2. フランス語脳プロジェクト

      名詞構文と名詞化のコツ~仏作文力養成講座第5回 後半

      仏作文力養成講座第5回後半の受講メモです。後半は名詞を中心した…

    3. 鉛筆削り
    4. 本屋

      フランス語の教材

      フランス語の達人になるために~その2

      フランス語脳プロジェクトの達人講座開始前のスカイプミーティングより、一…

    5. ノート

      フランス語脳プロジェクト

      日本語にはアスペクトがたくさんある

      翻訳者養成プロジェクトの第4回の授業を聞きました。今回の課題は…

    6. 図書館

      フランス語脳プロジェクト

      抽象名詞~翻訳講座第10回前半

      翻訳講座第10回の受講メモです。この回も復習回で、特に名詞を取り上げて…

    コメント

    1. この記事へのコメントはありません。

    1. この記事へのトラックバックはありません。

    *

    日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)

    お気に入りに登録してね♪

    CTL+D でお気に入りに登録。

    Feedlyで確実に更新をチェックしよう。

    follow us in feedly

    更新情報をメールで配信中

    メールアドレスを記入して購読すれば、更新をメールで受信できます。

    新しく書いた記事です。

    1. フランスの大型スーパー、ルクレール:CMのフランス語
    2. 最近のフランスのたばこ事情。政府は禁煙を奨励。
    3. 雨に関する言葉:かわいいフランス語教えます(126)
    4. 五月革命とは?: 1968年の5月、いかにフランスは変わった…
    5. キャラクテール:ジョイス・ジョナサン(歌と訳詞)
    6. ルノーの電気自動車、ZOE(ゾエ):CMのフランス語
    7. イスラム教徒が断食する月、ラマダン(ラマダーン)とは?
    8. ローマ数字の復習。1から100まで読めるようになろう。
    9. ダリダの Le temps des fleurs (花の時代…
    10. フランス人は働くことが好きなのでしょうか?

    おすすめ記事いろいろ

    1. 第89回アカデミー賞授賞式はいろいろな意味で前代未聞でした。…
    2. フランス語の数字【第25回】31 – 40
    3. まぎらわしい近接未来と単純未来の違いをマスターしよう
    4. フランス語の数字【第27回】51 – 60
    5. L8 フランス語の冠詞
    6. 「まいにちフランス語」25:L47 間接目的語になる代名詞
    7. プリンス、57才で亡くなる。死因は不明
    8. ヤウンデ(カメルーン)の心のレストラン。カメルーンの歴史つき…
    9. 京都を説明するフランス語を知りたい人、要チェック
    10. すごく簡単なりんごケーキの作り方~フランスのお菓子(4)

    おすすめのまとめ記事

    1. ファッション、モード、おしゃれに関する記事の目次(4)
    2. かわいいフランス語、教えます~目次 その4
    3. 『ベルサイユのバラ』新作その2が週刊マーガレット第22号(1…
    4. 歌の訳詞を書いている記事の目次~その1
    5. フランス語のことわざ~目次 その3
    6. 『百合のFranceウォッチング』~目次 その2(L26~L…
    7. masausaさんのカレンダー収録曲の記事の目次
    8. かわいいフランス語、教えます~目次 その3
    9. フランス語のことわざ~目次 その2
    10. ラジオ講座「まいにちフランス語」関連記事の目次~その1(概要…

    フランス語の勉強法とか

    1. 星の王子さまの本
    2. 2018年フランス語日めくりカレンダー
    3. 黒板

    お問い合わせはこちらから

    お問い合わせはこちらからどうぞ

    封筒
    ⇒お問い合わせフォームへ


    お気軽に^^

    ☆和文仏訳、仏文和訳の無償サービスは行っておりませんので、ご了承願います。

    アーカイブ

    1. フランス語脳プロジェクト

      冠詞の理解を深める~仏作文力養成講座第3回 後半
    2. 野原の上の木

      フレンチポップスの訳詞

      歌:グリーン・ウォッシング – Tryo(トリヨ) その1/2
    3. シンデレラ pen

      タイトルのフランス語

      『シンデレラ』はフランス語で何と言う? 第11回
    4. かごに入ったパン

      フランスのことわざ

      フランス語のことわざ22~同時に二つの場所にはいられない
    5. クマ

      フランスのことわざ

      フランス語のことわざ52~クマを殺す前に皮を売る
    PAGE TOP