「そのタイトル、フランス語だと?」、きょうは『マッチ売りの少女』です。
『マッチ売りの少女』は『おやゆび姫』や『人魚姫』と同じ、デンマークのアンデルセンの作品(1848年)。
6月には全くふさわしくない年の瀬の話です。
私はこの童話は絵本を持っていて、けっこう好きでした。マッチをすると、あたりがぼーっと明るくなるところが気に入っていたのだと思います。
アンデルセンは、少女時代はとても貧しかったお母さんをモデルに書いたそうですが、お母さんが自分の話を彼に語っていたのでしょうか?
マッチ売りの少女:penバージョン
雪の降る、寒い大晦日、街角で裸足でマッチを売っている少女がいます。エプロンのポケットにマッチがたっぷり入っています。ちなみにマッチは1本も売れません。
靴をはいて家を出たのですけど、お母さんのお古だったのでサイズが大きすぎて、車をよけて走ったりなんだりしているうちに両方とも脱げて、誰かに持ち去られてしまいました。
おなかもすき、寒かったけれど、家に帰ることはしませんでした。マッチを売らず、手ぶらで帰るとお父さんにぶたれるからです。
半ば街をふらふらとさまよいながら彼女はマッチを売ります。いや売ろうとしていますが、一つも売れません。人々は足早に彼女の前を通りすぎて行きます。
夜になりました。少女は壁の前に立っています。手ががちがちにかじかんでいます。からだも凍りつきそうです。彼女はマッチの火で暖をとることを思いつきます。
1本、壁でしゅっとすったら、きれいな火が出て、そこだけストーブがついたみたいに明るくてすごく幸せな気分になりました。
でも、そのマッチはすぐに燃え尽きてしまいました。
もう1本しゅっと壁にこすったら、こんどは明るい光の中にテーブルクロスにのったいろんなごちそうが見えました。それはクリスマスのごちそうで七面鳥がおいしそうに湯気をたてています。
しかしまたしてもマッチの火はすぐに燃え尽きました。
もう1本すりました。こんどはきらきらしたクリスマスツリーが見えました。クリスマスツリーのてっぺんの飾りのお星さまは光りながら空にのぼっていきます。
また、マッチが消えました。
もう1本すりました。光の中にやさしいおばあさんが立っていました。おばあさんは昔、この少女をかわいがってくれたったひとりの人でした。
もう何年も前に亡くなったおばあさん。久しぶりに会えて少女はとてもうれしかったです。そして、自分もおばあさんのところに行きたいと思いました。
その光が消え、おばあさんも消えそうになったので、急いでマッチをたばにして壁にこすりつけました。光の輪が放たれ、やさしいおばあさんが両手をひろげて微笑んでいました。
少女はおばあさんの腕の中に飛び込み、二人で空の高いところへ登って行きました。そこはもう寒くもなく、おなかがすくこともなく、お父さんにぶたれる心配もない、神様の待っていてくれる素晴らしい世界です。
翌日、道行く人々は壁の前で小さな亡骸になっている少女を見つけました。まわりにはたくさんのマッチの燃えかすがちらばっていました。
・・・あらすじここまで・・・
この童話はハッピーエンドなのか?
なぜ、アンデルセンはこんなに哀しい童話を書いたのでしょうか?
人魚姫もとってもかわいそうな結末ですが、王子さまに心ときめかしたりする幸福な時期がありました。
マッチ売りの少女は最初から最後まで救いようがありません。
でも物語にはマッチの光の中で見る少女の美しい幻影が描かれているのですね。
マッチをすれば彼女の夢、祈り、思い、喜びのようなものがその光とともにきらきらとあたりにあふれるのです。
そのとき彼女は誰よりも幸せでした。
「マッチ売りの少女」はフランス語で
La petite fille aux allumettes
※aux allumettesはリエゾンしてオ・ザルメット
la petite fille はこれまでも出てきていますが、小さな女の子 という意味。
allumette マッチ ←動詞 allumer ~に火をつける
aux = à + les この à は「~を持った」という意味
ほかの例:femme aux bleus 青い目の女性
★いっしょに覚えられる基本の単語
froid 寒い
doigt 指
mur 壁
※英語は The Little match girl です。
マッチ売りの少女~関連動画
フランス語でこのお話を語っています。発音の確認にどうぞ。
La Petite Fille aux Allumettes 5分44秒
アンデルセンは、美しくも哀しいお話を書く天才ですね。
【参考サイト】
フランス語訳の「マッチ売りの少女」のテキストと朗読音声があります⇒Livre audio gratuit Hans Christian Andersen – La petite fille aux allumettes
日本語の「マッチ売りの少女」テキスト
青空文庫⇒マッチ売りの少女
★次のお話はこちら
⇒第7回『カラスとキツネ』
クリスマスに、あたたかい家の中で家族と楽しい時間をすごす子どもたちがいる反面、街で、寒さにふるえるまずしい子どもたちもいます。
エディット・ピアフの Le Noël De La Rueという歌の中に出てくる子どもたちも、はだしで星を追います。
このような極限状態に、人が想像力を駆使して見る夢の世界は、ふつうに暮らしているものには味わえない強烈な幸福感があるのではないでしょうか?
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