フランスダイレクトスクールのビデオ教材、『不思議の国のFrance』第14話の受講メモです。
今月は、モガブティックスパンコールさんが、自作の歌をフランス語で歌ってフランスでデビューする試みを追っています。
この試みの概要は第13話の記事でどうぞ
⇒フランス語の発音を矯正~フランスダイレクトスクール『不思議の国のFrance』第12話
第14話では、モガブティックさんの作った、『雫 遊色ブローチ』という歌をケンとティファニーがフランス語に訳している場面。
歌詞は詩なので、語順を倒置したり、韻を踏ませて整えますが、実際に2人が元の歌詞をどんなふうにフランス語に変えたのか見ることができます。
日本語の歌をフランス語にするとき工夫すべき点が3つあるので、お伝えしますね。
なぜか和風のお店で訳詞をする2人。
フランス語として美しい歌詞にするための3つの工夫
1.詩情の感じられる言葉を選ぶ
例:雨上がりに
これをそのまま Quand la pluie s’arrête としたら、あまり詩的ではないそうです。
ティファニーは
C’est pas très poétique, hein. C’est un peu brutal.
それはあんまり詩的ではないわ、乱暴よ。
と言ってました。そこで提案された単語が、 s’affaiblir 弱くなる、弱まる という動詞。
もちろん、日常生活では、la pluie s’est arrêté といって何ら差し支えありません。
2.語順を変える
●副詞と動詞を入れ替える
例:無邪気にたくさんの雫が落ちていって
これを直訳すると、たとえば
d’une manière innocente, plein de gouttes tombent du ciel
d’une manière innocente は人に使うものだからちょっと変だそうです。
さらに、雫が落ちる、ところの語順については
Ensuite, peut-être l’order de la pharase est un peu bizarre. Peut-être le changer un petit peu l’ordre, pour que ce soit un petit peu plus poétique.
Par exemple : «les gouttes qui du ciel tombent.» Par exemple.
それから、語順も少しおかしいかも。語順を少しかえると、詩的になるんじゃないかしら。例えば、«les gouttes qui du ciel tombent.» 例えばだけど。
通常は 関係代名詞 qui + 動詞 + 副詞(句) の形が多いのですが、この場合は、副詞と動詞を入れ替えています。
こうするとより詩的で、綺麗に響くそうです。
●主語と動詞を入れ替える
例:みんな笑っている
この「みんな」は雨上がりの雫のことです。
直訳 Toutes les gouttes d’eau rient
ここも
Donc ce qu’on peut faire, c’est : «rien toutes», par exemple. Mettre le «toutes» à la fin et le verbe avant :«rient toutes.»
そうすると例えば、«rient toutes» とできるわね。toutes を最後に置いて、動詞を前におけるわ。
Maintenant rient toutes と主語と動詞を倒置し、さらに前に maintenant を付け加えました。メロディーに合わせるためです。
作文講座などでも、フランス語では「動詞で終わる形は、あまりきれいに思われない」と習いました。このあたりの感覚は、たくさんフランス語にふれることで養われるものでしょうね。
3.別の言葉に言い替える
これは歌に限りませんが、フランス語の特に書き言葉では、同じ語を繰り返して使うことは避けます。
C’est bizarre de répéter, on ne répète pas beaucoup en français.
繰り返すのは変だわ。 フランス語ではあまり繰り返さないわ。
たとえば、Jean-Jacques Rousseau ジャン=ジャック・ルソー のことを
le Français フランス人
l’écrivain 作家
le penseur 思想家
l’auteur d’Émile 『エミール』の著者
と言い替えて、文章を続けます。これはニュースや子ども新聞の記事でも同じです。日本語で訳す時は、すべてルソーにしたほうが自然だと思います。
ティファニー左利きなんですね。今回初めて気づきました。しかしこの爪、家事はどうやってやってるんでしょうか。
左利きの話⇒左利きの日(8月13日)って知ってる?
できあがったフランス語の歌詞
実際の歌を聞いていただくと、響きの工夫などわかるのですが、まだ一般公開されていませんので、歌詞と訳詞をのせておきます。
雨上がりに
無邪気にたくさんの雫が落ちていってみんな笑っている
みんな泣いている
みんな遊んでいる
みんな奏でている
みんなうたっているLa pluie s’affaiblit
Et candides, innocentes
Toutes ces gouttes qui du ciel tombentMaintenant rient toutes
Maintenant pleurent toutes
Maintenant courent toutes
Maintenant jouent toutes
Maintenant chantent toutes
タイトルの『雫 遊色ブローチ』は、フランス語でどう訳しているんでしょうかね?解説の資料にはのっていませんでしたが、気になるところです。
いかがでしたか?
今回はいつもとちょっと趣向が違いました。
私はよくフランス語の歌を訳していますが、こうしたルールをあらかじめ知っておくと多少はとまどいが減ることでしょう。
しかし、何を「詩的」とするかは人によって違いますから、ケースバイケースです。韻を踏むことは、たいていの歌でやっていますが。
それでは次回の『不思議の国のFrance』をお楽しみに。
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