赤くて黒い鳥

名言

広く好かれれば好かれるほど、深くは好かれないものだ(スタンダール):名言その18

フランスの小説家、スタンダールの名言をご紹介します。

Plus on plaît généralement, moins on plaît profondément.
– Stendhal (1783-1842)

広く好かれれば好かれるほど、深くは好かれないものだ。
スタンダール



広く好かれれば好かれるほど、深く好かれないものだ。

この名言は文脈によって、いろいろな解釈ができます。一般的な解釈は「八方美人はよくない」、ということになるでしょうか。

つまり、広く浅い交友関係を持っている人は、実は真の友だちを持っていない、ということです。

この名言を見て、私は2つの状況を思い描きました。

ひとつは、歌手のジャニス・ジョプリンの言っていたこと。
詳しくは覚えてないのですが、彼女は、「ステージでは皆に愛されているけど、ステージをおりれば、実は誰一人自分を愛していない」と言っていたのです。

等身大の自分を愛してくれている人はいないということです。

ジャニス・ジョプリンって、あんなに人気があったのに、「自分はブスで誰からも愛されていない」、という思いがずっとあり、常に孤独を感じていたようです。

もう一つは、昨今はやりのSNS。

フェイスブックでたくさん「いいね!」をもらっても、それがなんじゃ?ってことです。

フェイスブックの「友だち」は本当の「友だち」じゃない、もっとリアルの世界を生きろ、というふうにも解釈できます。

また、スタンダールの小説は彼が生きているあいだは、ほとんど相手にされなかったので、売れてる作家へのやっかみ、と取れないこともありません。

よくわかる!フランス語の文法解説

単語の意味

plus … moins …
~が多ければ多いほど、~が少ない。

Plus on gagne, moins on est content.
もうければもうけるほど、人は満たされないものだ。

moins のところをplusにして、
~が多ければ多いほど、~が多い
という形もあります。

Plus on est de fous, plus on rit.
集まりは人が多いほど楽しいものだ。(ことわざ)

on  人々は

plaît ← plaire 気に入る

généralement 一般に広く

profondément 深く、奥底まで

文法メモ

on は 人々、という意味ですが、行為者を明らかにしないときにも使われます。そのような場合は、日本語では受け身で訳すとうまく行きます。

逆に言うと、日本語で受け身になっているものを、フランス語にするとき、onを主語にして表現できます。

On passe ici un vieux film.
ここで古い映画が上映されています。

直訳

人々が一般に広く好めば好むほど、より深くは好まないものだ。

直訳するのは難しいですね。

というのも、moins 「より少なく~だ(=少ない状況がより多い)」という表現が日本語にないからです。

スタンダール(1783-1842)の経歴

スタンダールはペーンネームです。

本名はマリ=アンリ・ベール(Marie Henri Beyle)。

スタンダールって意外に昔の人で、18世紀後半~19世紀前半に生きた人。日本でいえば江戸時代です。

アメリカの独立が1776年。
スタンダールの生年は1783年。
フランス革命が1789年。

スタンダールはグルノーブルの名士の家の生まれ
おじいさんは医者、お父さんは弁護士。でもお父さんとはあわなくて、お母さんが大好きでした。

やさしかったお母さんは、7歳のときに亡くなります。
家の中は楽しくなく、学業に打ち込みます。

子どものころは神童と呼ばれてました。
特に数学が得意。

ナポレオンにあこがれて陸軍士官学校に入ります。
軍隊では得意の数学をいかして、経理関係の仕事をします。

ナポレオン軍に入り、イタリア遠征やロシア遠征もしますが、1814年に帝政が崩壊し、仕事を失います。フリーのジャーナリストになります。

遠征したとき、イタリアが大好きになったので、ナポレオン没落後は、ミラノに住んで、「恋愛論」や「芸術論」を執筆。

1821年パリに戻り、小説「赤と黒(Le Rouge et le Noir)」(1830)」などを発表。

7月革命後の1831年にイタリアのチビタベッキアというところの領事になり、ここで、自伝などを執筆。この頃、自由主義者として知られるようになっていたので、政治家の知り合いが多かったようです。

代表作「パルムの僧院(La Chartreuse de Parme)」(1839)はバカンスのあいだに7週間で書いたそうです。すごいですね。2ヶ月と少しなんて。このとき、スタンダール55歳。この本長いです。翻訳は、新潮文庫で上下に分かれてますから。

「パルムの僧院」を書いた3年後、パリの街中で脳出血を起こし、59歳で死去。

スタンダールは近代リアリズム小説の先駆者と言われています。先駆者だけあって、生きてるときは、彼の小説はほとんど売れませんでした。



代表作 赤と黒

今は知りませんが、私が学生のころは、「赤と黒」の主人公のジュリアン・ソレルの名前は、小説を読んでいなくても、知っている人が多かった気がします。

この小説のあらすじは・・・

ジュリアン・ソレルは貧しい木こりの子どもでしたが、野心家で頭も切れ、しかもすごい美貌。

ナポレオンのような軍人を志したけれど、王政復古のため挫折。
今度は、聖職者を目指します。

ラテン語の才能を買われて、ジュリアンは町長のレナールに子どもたちの家庭教師として雇われます。そして、その奥さんのレナール夫人と激しい恋に落ちます。

2人の関係がばれそうになったので、レナール夫人はジュリアンを神学校に送ります。

神学校でもとても優秀だったので、有力貴族のラ・モール公爵の秘書となります。今度は、公爵の娘のマチルドと恋に落ち・・・。

この後、いろいろあって、最後にジュリアンは処刑されます。

こう書くと、野心家の美貌の男の栄光と挫折、みたいな感じですが、時代背景がしっかり書き込まれ、王政復古でよみがえった支配階級を批判しています。

ジャンル的には教養小説と言われてますね。

私のブログの読者さんで、「赤と黒」をお好きな方がいて、彼によると、

「スタンダールがまるで自らの博学をこれでもかというほど見せ付けているような内容が盛りだくさんでとても興味深い」とのことです。

そのストーリーから、恋愛ものの映画やドラマによくなっています。宝塚でも上演されていましたね。

赤はナポレオンの着ていたような軍服の色、黒は僧侶の色とよく言われます。王政復古時代には、僧侶の階級の人たちが勢力を握っていました。

でもこれは一つの解釈であり、読んだ人が好きに解釈すればいいとスタンダールは思っていたようです。

赤を上昇志向の強いジュリアンの情熱、黒を挫折のあとの絶望感と、とらえることもできますね。

ジェラール・フィリップ主演の1954年の映画が有名ですが、きょうは1997年のテレビ映画の予告編をご紹介します。

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フランス語やフランスの歴史を少し知ってから、彼の小説を読むと、おもしろさがますでしょうね。

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