きょうは日本では母の日。フランスの母の日は、5月の最終日曜日ですが、本日は母の日にちなんで、お母さんに関係のある歌を紹介します。
レバノン生まれのイギリスのソングライター、プロデューサー、その他いろいろマルチに活躍しているMika(ミーカ)がフランス語で歌った、Elle me dit という曲の歌詞を訳します。
2011年夏のヒット曲です。
エル・ム・ディ
ひじょうにキャッチーな歌です。
赤いドレスを着て目立っている人は女優のファニー・アルダンです。
それでは訳詞に挑戦!
Elle me dit 彼女は僕に言う
彼女はこう言うんだ
楽しい曲を書きなさい
気がめいる曲じゃなくて
誰もが好きな曲を
彼女はこう云うんだ
億万長者になるのよ
何か誇れるものを持つの
パパみたいになっちゃだめ
彼女はこう云うんだ
部屋に閉じこもってちゃだめよ
さあ、元気をだして踊りなさい
私に言って、何が問題なの?
彼女はこう云うんだ
どうしたの? 何をじっとしてるの?
薬でぼーっとしてるんじゃない?それともゲイとか?
お兄ちゃんみたいになっちゃうわよ
☆彼女はこう云うんだ
彼女はこう云うんだ、自分の人生でしょ
やりたいことをやんなさいよ、もう
いつか、あんたにもわかるわ
いつか、後悔するわよ
彼女はこう云うんだ、あんたは超役立たず
少しは自分の殻から出なさいよ
もう、好きにしてちょうだい
そういうことが好きなんでしょ
どうして自分の人生を台無しにするの?
どうして自分の人生を台無しにするの?
どうして自分の人生を台無しにするの?
踊って、踊って、踊って
彼女はこう云う、踊れって
どうして自分の人生を台無しにするの?
どうして自分の人生を台無しにするの?
どうして自分の人生を台無しにするの?
踊って、踊って、踊って☆
彼女はこう云うんだ
他の男の子みたいにしなさい
外に出てボールを蹴るの
人気者になるのよ
彼女はこう云うんだ
何、インターネットでやってんの
頭、おかしいんじゃない
時間を無駄にしてることに気づきなさい
彼女はこう云うんだ
なんで、いつも文句ばかり言ってんの?
8歳の子どもじゃあるまいし
そんなことしてても楽しくないでしょ
彼女はこう云うんだ
いつか、母さんはいなくなるのよ
でも、彼女がこう始めるとき、
僕が聞きたいことを云うのさ
☆~☆ 繰り返し
彼女はこう云うんだ
あんたはまだ白髪がないのよ
でもあっという間に30歳になるわよ
いい加減、目を覚ましたら?
彼女はこう云うんだ
あんたはいつまでたっても子どもなんだから
全く成長しない
母さんは、もう年なのよ
彼女はこう云うんだ
ちょっとはあんたの友達を見なさい
みんな、どんな人生にしようとしてる?
人生、間違えるわよ
彼女はこう云うんだ
そうね、あんたはいつか母さんを殺すわね
でも、彼女がこう始めるとき
僕が聞きたいことを云うんだ
★彼女はこう云うんだ、踊れって
彼女はこう云うんだ、踊って、踊って、踊って★
★~★ 繰り返し
☆~☆ 繰り返し
単語メモ
déprimante 意気消沈させる、衰弱させる 動詞 déprimanter の現在分詞より。
milliardaire 億万長者、大富豪
s’enfermer 閉じこもる
se secouer 奮起する、落ち着きを取り戻す
coincé 動きが取れない、立ち往生した、気詰まりになった、気後れした、対応に窮した 動詞、coincer の過去分詞より。
défoncé (麻薬で)幻覚症状になった、陶酔した 動詞は défoncer (樽の底を抜く)
s’en vouloir de qn/inf. ~のことで自分をとがめる、~のために後悔する
voudras vouloir の単純未来
gâcher 浪費する
fous foutre ~をやる、する =faire (話)
faudrait que tu te réveilles 接続法
se foutre en l’air 死ぬ、くたばる
Y a de quoi se foutre en l’air
はよくわからないのですが、くたばってしまうような何かがある⇒人生、間違えるわよ、と訳しました。
友達はみんなちゃんとやっているのに、あんたって子はほんとにもう、という感じです。
超初心者向け文法のポイント
Elle me dit は「彼女は僕に言う」という意味です。
話しているのが elle (彼女)、dit は dire(言う)という動詞の活用した形です(主語が3人称で単数のときはこういうふうに活用することになっています)。
で、meですが、これは「私に」という意味です。
つまり、彼女が話す相手が、direという動詞の前に来るのです。
この単語の並びは、初心者には衝撃的だと思います。
というのも、日本人は、通常、義務教育で何年も英語を学ぶため、動詞の目的語は、動詞の後ろに来る世界にすっかりなじんでおり、そうならないなんてありえない的な思い込みを持っているからです。
She tells me が、Elle me dit になるなんて、そんなことあっていいわけ、という感じです。
しかし、フランス語では、目的語が代名詞になると、動詞の前に来ます。これは英語とフランス語が大きく違う点の一つです。
私も最初はすごく違和感がありましたが、そのうち慣れました。
I love you をフランス語にすると、Je t’aime. となりますが、これも、aime (aimer 愛する の活用した形)の目的語である、te(あなたを)が aimeの前に来ています。
目的語はteなのですが、フランス語は母音の衝突を嫌うため、teのeは発音されず、テーム(t’aime)となります。
フランス語は英語に比べて、名詞の性別や単数、複数にうるさいため、目的語になる代名詞の理解は1つの山となります。
目的語の話についてもっと読みたい方はこちらをどうぞ。
直接目的語⇒「まいにちフランス語」24:L46 直接目的語になる代名詞
間接目的語⇒「まいにちフランス語」25:L47 間接目的語になる代名詞
この歌の内容は?
部屋にこもって、ネットばかりやっているティーンエイジャーの少年に、お母さんがぐちぐち怒っている歌である、というのがpenの解釈です。
「外に出てボールをキックしろ」と言っているので、子どもはまだ学生なんでしょう。
ニートという可能性もあります。
まだ若いけれど、インターネットばかりしていると、あっと言う間に30歳になるよ、とお母さんは脅しています。
少年は、パソコンに向かっているのが好きなのですが、お母さんには、「自分の子どもは貴重な人生の時間を失っている」としか思えません。
まあ、そうでしょうね。インターネットほど人の自分を奪うものはありません。
お母さんは、もっと子どもに人生を楽しんでほしい、と考えているのでしょう。
お父さんやお兄さんみたいになってはいけない、と言ってるところをみると、お母さんは、特にこの子に期待しているのかもしれません。
つまり、愛情ゆえに、「ほら、パソコンばかりやってないで、踊りなさい」と言っているのです。
Elle me ditの英語版、Emily
ミーカはフランス語バージョンを出した後、英語版もレコーディングしています。
Elle me dit というところを、Emilyとして、お母さんが怒っている相手は、エミリーという女の子になっています。
歌詞つきの動画を紹介します。
これも悪くないけど、やはりフランス語版のほうがいいですね。
ミーカについて
ミーカは日本で人気があるので、ご存知の方も多いでしょうが、1983年、レバノンで生まれた、今はイギリス人のシンガー・ソングライターです。
デビューは2007年。Grace Kellyという曲が大ヒットしました。この曲、ちょっとクイーンみたいというか、フレディ・マーキュリーみたいで、なかなかいい曲です。
彼は内乱を避けるために、まだ赤ちゃんだったとき、家族とパリに移住し、しばらく住んでいたので、フランス語に堪能です。
9歳ごろ、ロンドンに移住し、以後はイギリスに住んでいます。
フランスではVoiceというフランス版「スター誕生」のような番組の審査員を勤めていたこともあるので、広いく知られています。
彼はひじょうに幅広い音楽性を持っており、ロックぽい曲から、パワーポップ、テクノふうのものなど各種ありますが、どれも親しいやすいメロディーです。
お母さんに言われたのかどうか知りませんが、人々に愛される曲をたくさん作っています。
歌もとてもうまいですね。
私もGrace kelly, Love Today、Lollipopなどどれも好きです。
Elle me ditは2012年に出た、The Origin of Love というアルバムに収録されています。
それでは楽しい母の日をお過ごしください。
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