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フランスの映画監督、ジャック・ドゥミの世界

フランスを代表する映画監督、ジャック・ドゥミのプロフィールと代表作を紹介します。

ドゥミ監督は、特に1960年代にフランスで活躍した映画作家で、ヌーヴェル・ヴァーグの左岸派に分類されます。

ゴダールやトリュフォーなど、カイエ・デュ・シネマという映画批評紙に評論を書いていた人たちは、右岸派です。

カイエ・デュ・シネマのビルがセーヌ右岸にあったからです。

ジャック・ドゥミのプロフィール

ジャック・ドゥミ(1931-1990)はフランスはブルターニュ地方の港町ナント(現在はペイ・ド・ラ・ロワール地域圏)の育ちです(トップの画像はナントの風景です)。

4歳のときにすでに人形劇をやり、9歳で映写機を使ったちょっとした映画をとっていたそうです。神童ですね。

14歳で映画の世界に入りました。

彼はヌーヴェル・ヴァーグの監督の中ではもっとも親しみやすい作品を作った人、と言われています。

ドゥミ監督の映画の特徴を3つあげるとすれば

・港町
・美しい音楽(ミシェル・ルグラン担当)
・美しい女優

ということになるでしょうか。

彼の映画には、60年代のフランス映画の楽しさがぎゅっとつまっています。

ドゥミ監督は、映画の色やデザインにこだわりがあります。だからビジュアルがとても素敵なんですね。

2013年にパリのシネマ・フランセーズという映画館で彼の回顧展(Le monde enchanté de Jacques Demy)が行われました。展覧会の予告篇を紹介します。

この動画には、ドゥミ監督の映画がたくさん出てくるので、彼のビジュアルに対するこだわりを垣間見ることができます。

1分50秒

きょうは彼の3つの代表作(すべてミュージカル)+私が見たことのない2つ+おまけの映画1つを簡単に紹介します。

Lola(ローラ)1960

アヌーク・エーメ主演。

ドゥミ監督の原点のような映画ですが、フィルムが焼けて、長らく見ることができませんでした。

最近、技術を駆使して試写版からデジタル修復完全版が作られ、日本でも2013年のフランス映画祭で上映されました。

舞台は港町のナント。アヌーク・エーメ演じるヒロインは、初恋の人を7年待ち続けるけなげなシンママのダンサーとのこと。

Lola 予告編

La Baie des Anges (天使の入り江)1963

ジャンヌ・モロー主演。

日本未公開のようですが、ルーレットをする彼女がかっこいいので、ちょっと書いておきます。テーマは恋とギャンブルのようです。

ドゥミ監督は運命のいたずらをよくテーマにしています。

天使の入り江、予告編

ドラマチックなピアノ曲はミシェル・ルグラン作曲です。

Les Parapluies de Cherbourg(シェルブールの雨傘)1964

言わずとしれた彼の代表作。カトリーヌ・ドヌーヴ主演。舞台は傘が名物の港町シェルブール。

ストーリーはよく知られていますが、すごく簡単に書いておきます。主人公のドヌーブは恋人が戦争に行ってるあいだに別の人と結婚。このとき、恋人の子どもを妊娠していました。

その後いろいろあって、映画の最後で、元恋人の経営しているガソリンスタンドに、偶然ヒロインが、子どもをつれて給油に立ち寄り、短い言葉をかわして別れます。

恋人は2年の兵役(アルジェリア戦争)を務めるために国を出ていったのですが、ドヌーブは半年もたたないうちに違う人と結婚してしまいます。ローラが7年待っていたのとはずいぶん違います。

この映画はミュージカルですが、ハリウッドのミュージカルとはやはりちょっと違います。

おしゃれな感じがするとでもいいましょうか。ミシェル・ルグランの音楽も大ヒットしました。

カンヌ映画祭でパルム・ドール賞を獲得しています。

実はこのときトリュフォー監督もカンヌ映画祭のコンペに出品していました。彼の出品作はドヌーヴの実の姉のフランソワーズ・ドルレアック主演の「柔らかい肌」という地味で暗い映画。ドゥミ監督に負けました。

シェルブールの雨傘 予告編

経営が傾いている傘屋さんですが、店内も家の中もおしゃれ。ドヌーブの服もかわいいですね。

Les Demoiselles de Rochefort(ロシュフォールの恋人たち)1967

傘の映画で成功したドゥミ監督が勢いにのって作ったすれ違いもののミュージカル映画。といっても明るいお話です。

主演はカトリーヌ・ドヌーヴとフランソワーズ・ドルレアック。

ミュージカルといえど、みんながきっちり揃って踊らないのがフランス流でしょうか。

衣装、小道具、背景の港町、すべてがカラフルでとてもおしゃれな映画です。

ロシュフォールの恋人たち・予告編

この映画の劇中歌、「双子姉妹の歌」の訳詞を以前しているので、関連記事へのリンクを貼っておきます。

『双子姉妹の歌(ロシュフォールの恋人たちより)』~「虎と小鳥のフランス日記」第53話 その1

『双子姉妹の歌(ロシュフォールの恋人たちより)』~「虎と小鳥のフランス日記」第53話 その2

『双子姉妹の歌(ロシュフォールの恋人たちより)』~「虎と小鳥のフランス日記」第53話 その3

『双子姉妹の歌(ロシュフォールの恋人たちより)』~「虎と小鳥のフランス日記」第53話 その4(終)

第52話 レ・アールの図書館

Peau d’Âne(ロバと王女)1970

カトリーヌ・ドヌーヴ主演。

ペローの「ロバの皮」が原作のミュージカル。ここでもドヌーブが圧倒的な美しさをもって主役を演じています。

青の国に宝石を産むロバがいます。ある日、その国のお妃さまが亡くなります。お妃さまはご主人(国王)に私より美しい人と結婚してください、と遺言。

国王は、美しい人を探すのですが、なかなかいなくて、結局お妃さまの娘が美しいということになり、父親が娘に求婚(!)

実はドヌーブ演じるお姫様は父親を好きだったのですが(たぶん親子として)、結婚はできないので、ロバの皮をかぶって赤の国に逃亡します。

美しすぎるって罪ですね。

ロバと王女・予告編

変なストーリーですが、これまたカラフルできれいなメルヘンです。ルグランの音楽も相変わらず魅力的です。

お父さんの国王はジャン・マレー。ドゥミ監督はコクトーに影響を受けているので、コクトーの「美女と野獣」へのオマージュでもあります。

レディ・オスカー(ベルばらの映画)

1978年に日本のマンガ「ベルサイユのバラ」が原作の映画 Lady Oscar(ベルサイユのバラ)も作っています。

レディ・オスカー 予告編。セリフは英語です。

70年代は、いろんな企画がうまく行かなかったらしく、こんな映画(と言うのもなんですが)を作ったのでしょう。

こちらはドゥミ監督の奥さんのアニエス・ヴァルダのお嬢さんが展覧会について語っている動画です。

5分38秒。ちょっと長いのは、あいまに「シェルブールの雨傘」のシーンがはさまっているからです。

「シェルブールの雨傘」はミドルテンポの歌が多いミュージカルなので、フランス語を聞き取りやすいかもしれません。

ドゥミ監督の映画はカトリーヌ・ドヌーヴファンなら見逃せませんね。きれいでおしゃれな時期のドヌーブがいっぱい見られますから。

これは同じく映画監督である奥さんのアニエス・ヴァルダが彼の死後作った、監督のキャリアをたどったドキュメンタリーです。英語版のようです。中古品を買うことができるので、彼について深く知りたい方はチェックしてください。

今回は、ジャック・ドゥミ監督の代表作を駆け足で紹介しました。

シェルブールの雨傘や、ロシュフォールの恋人たちは字幕版が、YouTubeで300円で見られるようです。機会があったらぜひごらんください。






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