今日、ご紹介するフランス語のことわざはこちらです。
雌羊になると、オオカミに食われる⇒弱き者は夫(ぶ)に取らるる
Qui se fait brebis,le loup le mange.
弱き者は夫(ぶ)に取らるる
この日本語のことわざに、あまりなじみがないかもしれませんので、こちらを先に説明しますね。
弱き者は、この場合は気の弱い人、おとなしい人。
夫(ぶ)は公事などのために徴発された人夫や、夫役(ぶやく)に従う人夫です。
弱い者は人夫の仕事に取られてしまう、ということです。
しかもこの人夫の仕事、ただ働きです。気の弱い者が、いつもただ働きさせられて損をしてしまう。大人しくしていると、人に利用されてしまう、ということわざです。
たとえば職場で周囲の人の機嫌を損ねないために、あるいは、積極的に気に入られたいために、なんでも仕事をひきうけていると、たくさんの雑用をこなすはめになります。
あるいは町内会や父兄会の仕事のわりふりでも起きそうなことです。もちろん自分が好きでやるのはいいのですが、やりたくないのなら、はっきり「ノー」と言わなければなりません。
☆ことわざの記事の目次⇒フランス語のことわざ・名言
よくわかる!フランス語の文法解説
★単語の意味
qui ~である人は
se faire 自分を~する
brebis 雌羊 cf.mouton:羊 bélier:雄羊 agneau:子羊
羊に関する単語は羊の説明があった文法講座目第十七回を参照
loup オオカミ
mange < manger 食べる
★直訳
「自分を雌羊にする者は、オオカミに食べられる」
⇒雌羊のように大人しい者はオオカミの餌食になる
★補足
mange の前の le は 雌羊になる人(Qui se fait brebis)をさしている代名詞です。
フランス語では動詞の目的語は動詞の前に来ます。
ノーと言えない日本人
ノーと言わないと、日本語のことわざでは、せいぜいただ働きさせられるだけですが、フランス語ではオオカミの餌食になってしまいます。大変ですね。
ここで思い出すのが 赤ずきんちゃんの話です。
善良であるという美徳も、度が過ぎれば、悪者の餌食となってしまうのです。
日本人はNo(ノー)と言えない国民性というのが通説です。
たぶん、家や村といった社会において「和」が大事な世界に生きているからでしょうね。
私はノーとはっきり言い過ぎる性格で、たまにうらやましがられたりしますが、それで何か得をするわけではありません。
ノーとはっきり言ってしまうので、可愛げがなく、どちらかというと、数々の恩恵を受け損なってきたように思います。
子どものとき、温和な性格の弟は私よりたくさんお年玉をもらってました。よく「性別が逆だったらよかったのに」と周囲の人から言われたものです。
ただ、自分がノーと言いたいときにノーというほうが、精神衛生にはいいです。
弟はストレスが多かったらしく、数年前に大病にかかっています。もちろんこれだけが理由ではないと思いますが。
ノーと言えない人は、そう言うと自分が嫌われてしまうかもしれないと恐れているのかもしれません。
もちろん、人に好かれたほうがいいでしょうが、嫌われたって別にどうってことありません。
政治家や芸能人など人気稼業についている場合は別ですが。
人として誠実にふるまい、基本的な礼儀を心得ていればイエスと言おうが、ノーと言おうがあまり関係ない気がします。
人は自動的に行動してしまうことが多いので、ついついイエスと言ってしまって後悔することが多い人は、「ノーという選択肢もある」と手帖に大きく赤い字で書いておくといいでしょう。
逆に私のようにノーと言い過ぎる人は、たまにはイエスと言うと新しい世界が開けるかもしれませんね。
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