毎日忙しい日々を送っているあなたに、こんなことわざを紹介します。
Il ne faut pas confondre vitesse et précipitation.
速いことと慌ただしいことを混同してはいけない。
速いことと慌(あわ)ただしいことを混同してはいけない。
「速いこと」とはスピードがあることです。
たとえば
車が猛スピードで走っていく。
頭の回転が速い。
足が速い。
タイピングが速い。
月日がたつのが速い。
宿題をするのが速い。
結果が出るのが速い。
仕事が迅速である。
料理のしたくが手早い。
などなど。
これに対して、「慌ただしいこと」というのは、何かをしようとしているときに、せわしいこと。何かにせきたてられて、ばたばたしていていることです。
仕事に追われて慌ただしかったり、締め切りがせまっているから、大急ぎでことにあたったり。
言い換えれば、「忙しい」わけです。忙しいときは、気分も落ち着かずあせっていることでしょう。そんなときは、何をやるにも手早く、さっさとやっつけてしまおうと思いがち。つまりスピードが出ます。
このような状況で「あわただしいこと」と「速いこと」を間違えてはいけないのです。
つまり、「多忙でばたばたしているときこそ、物事は着実にゆっくりこなしていかないとだめですよ」、という意味。あせってやると失敗して、かえって倍の時間がかかったりしますからね。
よくわかる!フランス語の文法解説
単語の意味
il ne faut pas ~してはいけない、~すべきではない
Il ne faut pas rouler si vite.
そんなにスピードを出してはいけない。
faut < falloir
confondre 混同する、取り違える
Tu confonds les effets et les causes.
きみは、原因と結果を取り違えているよ。
vitesse 速さ、速度、スピード、素早さ、迅速 女性名詞
形容詞は vite
précipitation 大急ぎ、性急、慌ただしさ 女性名詞
Il agit toujours avec précipitation.
彼はいつもせかせかと行動する。
補足~冠詞の省略
vitesse と précipitation の前の冠詞はともに省略されています。
ことわざや、古くからの言い回しはよく冠詞が落ちています。
あるいは、名詞を列挙するとき、調子をととのえたり、強調のために冠詞が省略されているので、そのせいかもしれません。
(例) Patrons et ouvriers sont d’accord.
雇い主と労働者は合意している。
似た意味のことわざ
ほかにこんなことわざがあります。
Hâtez-vous lentement.
あるいは
Hâte-toi lentement.
ゆっくり急げ。
・・・ラテン語の festina lente より。
英語には
More haste, less speed.
急いでいるときこそ、スピードは落とせ。
日本語では、
急がば回れ
ですね。
☆ことわざの記事の目次を作りました。ご利用ください。
その1⇒フランス語のことわざ~目次 その1
私は子どものときから「奥さまは魔女」というドラマが好きなのですが、主人公の魔女、サマンサが、よく魔法で、家事を大急ぎでやっているシーンがありました。
ここはすべてコマを早送りしているのです。
よく、「どうして魔法で、いきなりできあがった状態を出さないんだろ?」と思ったものです。
たまに、汚い台所が、魔法でピカピカの台所に一瞬で様変わりするシーンもあったのですが、早送りで家事をしているほうが多かったです。
今思うと、サマンサはできるだけ魔法を使わず、ふつうの妻であり続けることにこだわっていたから、すべて自分の手でやって、スピードだけ魔法の力を借りていたのかもしれません。
Hâtez-vous lentement は17世紀の詩人 ボワローの言葉、Hâtes-toi lentement は ローマ皇帝アググストウスの言葉。
ほかに、Il faut faire le pas selon la jambe. Plus on se hâte, moins on avance. La grande hâte est cause du retardement. Qui trop se hâte reste en chemin. などがある. 以上すべて 田辺貞之助編 フランス故事ことわざ辞典にありました。
樋沼さん、こんにちは。コメントありがとうございます。
ほ~、そうなんですね。
わざわざ教えていただき、ありがとうございました。