炎

フランス語入門日記

突然炎のごとく(フランソワ・トリュフォー)~入門日記第23回

入門日記のお時間です。

このコーナーでは私が独学でフランス語の学習を始めたときにブログに書いていた学習記録を紹介しています。

本日は、トリュフォーの映画について書いた日記をご紹介します。

私がフランス語の学習を始めた理由はいくつかありますが、その1つにフランソワ・トリュフォー監督の映画をより楽しむため、というのがあります。

だから、学習を始めた翌月に、彼の作品のタイトルを順番に調べて、単語をチェックしていました。

きょうは「突然炎のごとく」というタイトルの映画の原題について書いた日記です。

原題はとても簡単なので入門者むきです。
後半では、この映画について少しだけ書いています。

フランス語独学日記

2009年8月15日

Truffautの映画のタイトル-6

6作目は:”Jules et Jim”

これは人の名前で「ジュールとジム」。シンプルなタイトルだ。

et は and の意味。et は日本の衣類のブランド名やらなんやらよく見かけていたが、私はこれをみるたびずーっと頭の中で「エト」と読んでいた。でも本当の発音は「エ」である。

似たような例で、古いフランス映画の最後に出る、「fin」(日本語なら完という意味)をみるたび、いつも心の中で「フィン」と読んでいた。実際は「ファン」と読む。長年の誤解がとけてよかったと思う。

さて、タイトルがシンプルなのでさして増やせる語彙もない。イギリスやアメリカでのタイトルも「Jules and Jim」。

なのに邦題は、「突然炎のごとく」というドラマチックなものである。気まぐれな主人公のカトリーヌのことかと思う。

映画の中で、ジャンヌ・モローが歌う「つむじ風」という有名な歌も好きでたまに聴いている。

その歌の原題は”Le Tourbillon ”

tourbillon はwhirlpool, whirlwind, 渦巻きなどの意味。

そういえば、そもそも「風」というベーシックな単語を知らないので、辞書でしらべたら、それは vent (ヴァン)…またしてもぱっと見て、「ヴェン」と読んでしまった。

英語のventilationなどと語源が同じだと思われる。有名な小説、風と友に去りぬ、の仏訳は「Autant en emporte le vent」 であった(プチロワイヤルにのっていた)。

autant : as much
emporter:to take away

ちなみに tourbillon でGoogle画像検索をする腕時計の画像がだーっと出てきた。

時計のメカニズムの一種でもあるらしい。ねじを巻く何かですかね。この言葉はターボエンジンとかタービンなんかと語源が同じかもしれない。

——日記の引用ここまで——

「突然炎のごとく」から、「風と共に去りぬ」の話になってますね。

突然炎のごとく

こんな映画です。

予告編

この映画はフランスでは1962年の1月に公開されています。トリュフォーは1932年2月生まれですから、まだ29歳のときに作ったもの。

内容を一言で書くと3角関係の話です。
男性2人は親友なので、友情の話でもあります。

カトリーヌはひじょうに気まぐれ。しかも、自分が1番じゃないと気がすまない。

予告編でもいきなり走りだしたり、セーヌ川に飛び込んだりしてます。映画だからいいけど、身近にこんな人がいたら疲れますよね。

きれいなドレス着てるのに、突然川に飛び込むなんて、びっくり。このシーンはスタントがやりたがらなかったので、ジャンヌ・モローが自分でやったそうです。
足からどぼーんと入ってますね。

怖いですよ、ふつう。女優魂を感じさせます。

そんなカトリーヌがすごく目立っているのに、タイトルは「ジュールとジム」とシンプルなのは、原作がそうなっているから。

原作はアンリ=ピエール・ロシェ(Henri-Pierre Roché  1879 – 1959)という作家の書いた小説です。

ロシェは生涯に2作しか小説を残していません。というのも彼の生業は、画商や美術評論。ダダイズムの雑誌も作っています。

彼は70歳を過ぎてから、自分の体験をもとに小説を書いたのです。この映画では、ジムがロシェ。

2つのうちのもう1つ、Deux Anglaises et le continent(2人の英国女性と大陸)も、トリュフォーが、本作品をとった10年後に映画化しています。

彼は、ひじょうに女好きというか、恋愛沙汰の多かった方。そして、つきあった女性のことなどを、手帖にびっしり書いていました。

この手帖の記述をベースに、トリュフォーがロシェをモデルにして作ったのが「恋愛日記」(L’Homme qui aimait les femmes)です。

トリュフォーはロシェの小説が大好きだったのです。

3角関係とか、4角関係とか、フランス映画には多いですが、いずれもさらっとしていますね。

日本映画だとどろどろになりそうです。湿度の違いでしょうか?

「突然炎のごとく」という邦題は、ドラマを感じさせて、うまいタイトルです。

実際、映画の中で、カトリーヌがいきなり、ゴミ箱(陶器のツボみたいなやつ)の中の紙くずを床にぶちまけて、マッチで火をつけるシーンがあります。

火はすぐにぼーっと大きくなり、カトリーヌの着ていた白いガウンに燃え移ります。

一緒にいたジムがあわててその火を消し止めます。この時は、大丈夫だったのですが・・・。

火遊びは危険ですね。でも危険だからこそ、楽しいのかもしれません。

映画の中で、ジャンヌ・モローが歌っている「つむじ風」の訳詞を書いています⇒ジャンヌ・モロー『つむじ風』~歌と訳詞

過去の入門日記を読む方はこちらからどうぞ⇒フランス語入門日記~目次を作りました

「突然炎のごとく」は暗い映画だと思う人もいらっしゃるかも?

名シーンが多くて、トリュフォーの代表作の1つとして伝えられています。みずみずしさを感じます。

川に飛び込むのも、火を消し止めるのも、重要な伏線になってます。うまいな~。






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