フレンチポップスの歌詞を訳すシリーズ。今回はペトゥラ・クラークの『恋のダウンタウン』Downtown¨のフランス語版をご紹介します。
Downtownは1964年11月の大ヒット曲。フランス語版もペトゥラ・クラーク自身が歌っています。タイトルは Dans le temps です。
Dans le temps かつては
アレンジは全く同じなのですが、歌詞の内容が違います。この曲、楽しい曲ですが、フランス語では、彼がこの街からいなくなって悲しい、という内容になっています。
まず、downtown のこところを dans le temps (かつては)という、同じ響きの音の言葉を持ってきて、そこから歌詞を考えたからでしょうね。
それでは訳詞に挑戦!
Il n’y a plus, dans cette ville, la joie
Qu’il y avait avant
Dans le temps
Je suis perdue dans cette ville sans toi
Toi qui m’aimais pourtant
Dans le temps
もうこの街には楽しみはないわ
昔はあったのに
あなたがいないからこの街で途方にくれる
大好きだったあなた
かつては
1人で通りを歩くわ
昔を思い出しながら
かつてこの街で生まれた
今はもうない会い
いくら探してももうないわ
いくらこの通りを探しても
無駄なのよね
※Dans le temps
Comme on s’aimait, oh oui
Dans le temps
Je m’en souviens, oh oui
Dans le temps
Qui a passé depuis
Dans le temps {x2}
かつては
私たち愛し合っていたわ
かつては
今も思い出すわ
かつては
時は過ぎ去ってしまった
かつては
夜だけ活気づくこの街
かつてはそうだった
ネオンの光や騒音の中の暮し
2人でよく来たわ
かつては
2人で踊りに行ったクラブに
物憂い気持ちで出かけたわ
私がたった1人で戻ってきたのを見た時、
マスターはわかったはず
私のつらさが
何も話すことはなかった。だって
彼にはわかっていた
彼は、私たち2人が口ずさんでいるかのようなふりをした
※~※繰り返し
この街は何も変わっていない
もしあなたが、ある日戻ってきたら
ちょっぴり後悔して
私たちの愛の夢を見ながら
この街で
何も変わっていないけど、でも
あなたが通りを歩いてきたら
前と同じようには行かないわ
★歌詞はこちら⇒Paroles Dans Le Temps par Petula Clark – Paroles.net (lyrics)
単語メモ
dans le temps = au temps jadis かつては
au long de ~に沿って
avoir beau + inf. いくら~しても無駄である。
(★一般にどうして無駄なのかを説明する文が続きます)
Tu auras beau pleurer, il ne reviendra pas.
いくら泣いても無駄だよ。彼はもう戻って来ないよ。
traîner 持ち歩く、連れて行く
fredonner 口ずさむ
Rien n’a changé. 何も変わっていない
★以前ご紹介した60年代のヒット曲のフランス語カバーはこちら⇒ナンシー・シナトラ「にくい貴方」のフランス語版の訳詞
『恋のダウンタウン』 オリジナルの英語版
Downtown ダウンタウン
When you’re alone
And life is making you lonely,
You can always go downtown
When you’ve got worries,
All the noise and the hurry
Seems to help, I know, downtown
一人でさびしいとき、
いつだってダウンタウンに行けばいいわ
心配ごとがあるとき
にぎやかで活気のあるダウンタウンに行けば
気分が晴れると思うの
街の車の奏でる音楽を聞いたり
歩道できれいなネオンサインを眺めたり・・
間違いないわよ
*The lights are much brighter there
You can forget all your troubles, forget all your cares and go
Downtown, things’ll be great when you’re
Downtown, no finer place for sure,
Downtown, everything’s waiting for you
ダウンタンの光はずっと明るい
困ったことや、心配なこともみんな忘れるわ
ダウンタウンじゃ、何もかも素敵なの
ダウンタウンほど素晴らしい場所はないに決まってる
ダウンタンじゃ、何もかもがあなたを待ってるわ*
ぐずぐずしないで
心配ばかりしないの
ダウンタウンじゃ映画をやってるわよ
一晩中楽しめる場所もあると思うわ
やさしいボサノバのリズムを聞いて踊ってみて
夜が終わらないうちにね
また楽しくなれるわ
*~*繰り返し
誰かやさしくて、あなたのことをわかってくれる人がいるかもしれない
あなたとよく似た人が、街を案内してほしいと思ってるかもしれない
ダウンタウンであなたに会うかもしれないわね
困ったことも心配なことも、みんな忘れるわ
ダウンタウンじゃ、何もかも素敵なの
さあ、すぐダウンタウンに行きましょう
ダウンタウンじゃ、何もかもがあなたを待っているわ
歌詞はこちら⇒DOWNTOWN Lyrics – PETULA CLARK
ペトラ・クラーク Petula Clark
ペトラ・クラークは1932年、イギリス生まれ。なんと私の母より1つ年上です。インターナショナルに活躍するシンガー兼女優です。
小さい時から歌や演技がうまく、聖歌隊などで歌っていました。初めて人前で報酬をもらって歌ったのは7歳のとき。Bentalls(デパート)の入り口でオーケストラをバックに歌ったそうです。
以来、ずっと現役です。第二次世界大戦中にBBCラジオに出演したり、軍を慰問していました。
40年代後半からから映画に出始め、ヨーロッパでレコードを出したりと活躍していたのですが、1964年にこの歌が大ヒットしてから、アメリカでも知られる世界的な歌手になりました。
60年代が全盛期ですが、70,80,90年代もコンスタントにアルバムを発表してステージをこなしています。
今世紀に入ってもワンマンショーをやったり、ゲスト出演しています。
2013年には新しいアルバムを発売。このアルバムではDowntownのリメイクというかセルフカバーも入っています。
2015年の6月20日には、ニューヨークのステージに立って、Downtownを歌いました。
こちらは2013年、のステージ。81歳という計算になります。
「恋のダウンタウン」カバーバージョン
この曲はたくさんの人がカバーしています。有名なところでは1983年代にカントリーシンガー、ドリー・パートンがカバーしました。
2006年にエマ・バートンがカバー。アレンジも歌い方もほぼ同じです。ともにそれなりにヒットしています。
元歌の完成度が高いので、カバーバージョンは今いちという印象。
今回は、カナダのジャズ・シンガー、ホリー・コールのジャズバージョンをご紹介します。
ペトラ・クラークってずっと現役なんですよね。すごいの一言。「恋のダウンタウン」は何歳で歌っても違和感のない歌詞だから、80歳で歌っても説得力がありますね。
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