フランス映画の予告編のスクリプトを使ってフランス語を学ぶシリーズ。きょうご紹介する映画は Marie Heurtin(マリー・ウルタン) 邦題『奇跡のひと マリーとマルグリット』。2014年、ジャン=ピエール・アメリス監督の映画です。
19世紀末のフランスが舞台。生まれつき目が見えず、耳も聞こえないため、野生児のようだった少女マリーに、シスター、マルグリットが言葉や人間らしい暮し方を教える話。
2015年6月に日本でも公開されていたようです。
ろうあ者の観客の便宜をはかるため、字幕と手話つきの予告編がありますので、こちらを紹介します。
Marie Heurtin 予告編のスクリプト
VFST は Version Française Sous-Titrée
フランス語版字幕付き
LSF は Langue des Signes Française
フランス語の手話
という意味です。
今回は最初の30秒まで
Aujourd’hui j’ai rencontré une âme…une âme toute petite, toute fragile.
Une âme emprisonnée…mais une âme que j’ai vue briller de mille feux aux travers des barreaux de sa prison.
Comment communiquer avec cette petite enfermée dans la nuit et la silence ?
Comment parvenir à lui parler ? à l’écouter ?
Comment est-ce de vivre dans l’obscurité la plus totale et le silence absolu ?
きょう私の魂に出会った。とても小さくて、こわれそうな魂に。
閉じ込められた魂。でも、牢獄の格子を超えて幾千もの炎が燃えているのを私は見た。
どうしたら暗闇と沈黙の中にいるこの少女に気持ちを伝えることができるのだろう?
どうしたら話をしたり、聞いたりできるのだろう?
完全な闇と圧倒的な沈黙の中で生きるのはどんな気持ちなのだろう?
単語メモ
au travers de qc ~を通して、介して
barreau 格子
communiquer avec ~と連絡をとる
parvenir à (努力して)到達する、たどり着く
obscurité 暗さ、闇
『奇跡のひと マリーとマルグリット』きょうのお話
19世紀のフランス。ある修道院にマリーという少女がやってきました。
彼女は生まれつき目が見えず耳が聞こえず話せないという三重苦を負っています。
修道女のマルグリットは閉ざされた世界の中にいるマリーに言葉を教えることを決意します。
フランス版ヘレン・ケラーといった感じですね。
マリー・ウルタン
マリー・ウルタンは実在の人物で、1885年にフランスのヴェルトゥで生まれ1921年に亡くなっています。
貧しい家の生まれで、ろくにしつけも教育も受けず育ちました。目も見えず、耳も聞こえないのですから、両親にはどうしようもなかったのです。
マリーが10歳のとき、父親はラルネイ修道院に連れてきます。精神病院のようなところに収容する話が出たからです。
この修道院は聴覚障害のある少女を受け入れていました。
マルグリットという修道女が10年の月日を費やし献身的に彼女の教育にあたり、最初は野生児のようだったマリーも、点字を覚え、人間らしい女性に成長しました。
1910年、マリーが25歳のとき、マルグリット先生が亡くなりました。もともと病気を患っていたのです。
マリーはその後もこの修道院で学び続け、やがてやはりろうあ者だった妹や、別の少女の教育にあたるようになりました。
36歳の時、肺病で亡くなっています。
マルグリット先生の献身的な教育があったからこそ、マリーは言葉を獲得することができました。
マルグリット先生はマリーに出会ったとき、すでに不治の病にかかっていたようです。「マリーの中に燃えたぎる炎を見た」と予告編に出てきますが、きっと強い生命力を感じたのでしょうね。
確かに、その教育はまるで「戦い」のような激しさです。
マリーもマルグリットも強い人たちだったのでしょうね。
後編はこちら⇒『奇跡のひと マリーとマルグリット』(後編)~予告編のフランス語
こちらの映画も手話が出てきます⇒『エール!』La Famille Belier(1)~予告編のフランス語
それにしても、目も見えないし、耳も聞こえない人にどうやって言葉を教えたのでしょうか?
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