今日、ご紹介するフランス語のことわざはこちらです。
あつものに懲りてなますを吹く
Chat échaudé craint l’eau froide.
あつものに懲りてなますを吹く
有名なことわざですが、お若い方だとそもそも「あつもの」や「なます」をご存じないかもしれないですね。
きょうはまず日本語のことわざの説明から始めます。
あつもの(羹): 魚、鳥の肉や野菜を入れた熱いお吸い物。熱物。
この漢字は「羊羹(ようかん)」の「かん」です。
ようかんはべつに羊じゃないのに、羊羹なのは、昔、中国で羊の肉に黒砂糖を混ぜて蒸し物にしたものが、今の羊羹の先祖だからです。
なます(膾):魚、貝、野菜などを刻んで調味酢で和えた物。
もしかしたら「懲りる」という漢字も難しいでしょうか?
こりる:失敗してひどい目にあい、もうやるまいと思う、という意味です。
ものすごく熱い汁物やスープで舌をやけどしたあと、怖気づいて、冷たいはずの和え物まで食べるまえにフーフーする、という意味のことわざです。
つまり、何かで失敗したりして痛手を受けたあと、必要以上に臆病になってしまうことのたとえですね。
フランス語ではこの状態を猫でたとえています。
お湯でやけどした猫は冷たい水も怖がるように
フランス語のことわざでは、猫がスープを飲むわけではなく、この場合は熱湯に入ってやけどした猫の話です。
一度五右衛門風呂のような熱々のお湯に手足をつっこんでこりごりした猫は、冷たい水でさえ恐れる、ということです。
このことわざで画像検索すると猫をお風呂に入れている写真や絵が出てくるので、この解釈でいいと思います。
13世紀からあったことわざだそうですが、猫を熱湯に入れて洗う機会などあったのでしょうか?
鳥料理を作るとき、毛をむしりやすくするために一度湯づけにするそうですが、まさかそれじゃないですよね?
興味深いところです。
よくわかる!フランス語の文法解説
★単語の意味
chat 猫
échaudé 熱湯でやけどした
動詞は échauder 熱湯で洗う、熱湯で通す
chaud(熱い)
craint < craindre 恐れる
eau froide = 冷水
お湯は eau chaude
l’は laのエリジオン
★直訳
「熱湯でやけどをした猫は冷水を恐れる」
★補足
日本語では水は冷たく、お湯は熱いのですが、フランス語では水(eau)という単語は温度に関係ありません。区別が必要なときは、形容詞をつけます。
これは英語も同じです。
よく似ている英語のことわざ
英語にも同じ意味のことわざがあります。
A burned child dreads the fire.
やけどした子供は火を恐れる。
Once bitten, twice shy.
1度かまれると2度目には憶病になる。
(たぶん犬にかまれたのだと思います)
また、日本語でももう一つ
蛇に噛まれて朽ち縄(くちなわ)に怖じる(おじる)
というのがあります。
朽ち縄は腐った縄です。また蛇の別名でもあります。
蛇にかまれたことはありませんが、私、蛇が苦手なので、縄をへびと見間違えてぎょっとすることはよくあります。
もっとことわざを読みたい人はこちらへ⇒フランス語のことわざ~目次 その1
猫の記事に興味がある人はこちら⇒猫に関連する記事の目次~猫好きさんに捧ぐ
今日のことわざは、恐れる理由などないのに、必要以上におびえている人に「怖がりすぎてるよ」「大丈夫だよ」と言いたいときに使います。
たとえば、離婚したあと再婚に踏み切れない状況とか。
確かに一度失敗するとトラウマになりますよね。
失敗から学ぶことも必要です。
失敗しないと前に進めないですから、どうして失敗したのか自分なりに考えたあと、また失敗しないように準備してもう一度やってみることが大事かもしれません。
今度はきっとうまく行く・・・と信じて。
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